『偽りの人生』映画鑑賞。舞台はアルゼンチン。主人公は首都ブエノスアイレスで医師をしている。結婚し美しい妻がおり裕福で仕事も順調だが、どこか虚しい毎日である。主人公には双子でそっくりの兄がいる。養蜂家である兄とはずっと音信不通だったが、ある日その兄が主人公のもとを訪ねてくる。「自分はもう末期ガンで生きていても苦しいだけだから死なせて欲しい」と。逡巡する主人公だが、バスルームで血を吐きながら苦しむ兄を見て、衝動的に殺害してしまう。そして兄になりすまして兄のいる田舎で暮らし、別な人生を歩もうと決意する。幸いにも兄とは見分けがつかないほど主人公は似ており、また双子であることは兄のいた田舎では誰も知らない。兄になりすまして誰にも知られること無く、養蜂家として新たな人生を生きるつもりだったが、実は兄は誘拐ビジネスに関わっており、主人公は予期せぬトラブルに巻き込まれることになってしまう。今の人生に満足し、これまで選択してきた全てに後悔することなく満足しているかと訊かれたら、迷う人が多いに違いない。あの時こうしていたら、あるいはあれさえしなければ。我々の毎日は後悔やあきらめ、そしてそんな人生を受け入れるか否かの連続である。重厚かつサスペンス感に溢れた傑作の登場である。お薦め。
この映画のプロデューサー陣は数年前にアカデミー外国語映画賞を受賞した『瞳の奥の秘密』というこれまた素晴らしい作品の製作陣である。この映画もとてもいいので、併せてお薦め！