『音のない世界で』映画鑑賞。ろうあ者に焦点を当て、彼らの生きる世界を異文化として捉えたドキュメンタリー。普段ろうあの方々に接する機会のない私にとって、この作品を観た後は自分が音が聞こえる「奇妙な世界」に住んでいるかのように思えてくる。ろうあの方々のインタビューや教育、手話やダンスを使った演劇を映し出していくのを見ると、驚きや不思議感に襲われる。ろうあ者と健聴者の差異を明らかにしつつ、自分達がが当たり前と思っていて、疑ってみたこともないような事柄をあらためて問い直すという点では、この作品は優れた文化人類学者のフィールドワークを読んだ時の衝撃に近いものがある。ろうあの世界を垣間見ることで、自分の生きる世界を考えることになる秀逸なドキュメンタリーである。お薦め。