辻村深月『盲目的な恋と友情』
あぁ、能う限りロマンチックに書くとすれば私は蘭花に会わなかった留利絵なのだろうけれど、そのような目から読むと、『盲目的な恋と友情』(は同じものだ)となる。
結局全部執着でしょうと。
きっと、そこまで人生上手くいっていない美波のような人、対して優秀でもない稲葉先輩のような人、それぞれの自身の経験を写す鏡のような話で、「盲目的な」の係る言葉だったり、前後に補う言葉だったり、そういうのが人それぞれ全く違うのだろう。
前後編で視点を変えて、最初の視点を相対化させたり後ろの語り手をリアルタイムにピエロにしたりするところは辻村深月の十八番という感じ。
美波の視点がないとのろがまた嫌らしくて、その欠落が蘭花と留利絵の2人の結末を、世界への収まりの悪さをメタに強調している。
茂実と留利絵に同じムーブをさせるのとか、本当に嫌らしくて辻村深月。
感謝させたくなってるところとか、読むのが辛かった。
「オタクが群れるとヤンキーみたいに振る舞いはじめる」みたいなあの感じ。
オケとか合唱とかのあの謎の人間関係の閉鎖性は、ユーフォだったり友人の部活だったりで間接的に見聞きすることが多く、大学の部活であるところが本当に辻村深月だなと。
八正道を、慧を得るべきなのである。
