小川一水『ツインスター・サイクロン・ランナウェイ2』

父親の手を流れる話になってよりフェミニズムSFとして王道に進んだ2冊目。

逃げてきた自らのイエに誘拐されてしまったダイオードを助ける話。


ダイオードに強烈な執着する少女が出てくるのはいかにも最近のハヤカワSFっぽい。


現実と結びつけた話をすると、BBCで(新)タリバン政権下で学びを続けようとしてる地下女性コミュニティみたいな特集を何度も聞いていて、タリバン兵が押し込んでくる前に女性をなんとか逃がそうとする女性みたいなのって2023年になっても普通に起きてしまっていて。

そんな家父長主義に宇宙に行っても悩まされるのはとてもリアルで。


作中ではニンジャスレイヤーみたいなアクションをキメて良かった良かったとはするんだけど、ダイオードがそうした抑圧を「常識」と呼んで、テラがそれを受け入れてしまうのを恐れる。

それってとても切れてる。


「『違います、いやだって言われることぐらい、なんでもないです。言われたらそのことをやめるだけです』首を振ったダイオードが、いったん息を詰めて、言う。『私が心配なのは、テラさんが『常識的に考えたら、やっぱりこうですよね』とか言い出すことです』」


本当はちゃんと嫌だなって思ってる人が、でも流されて、仕方なくて「常識」に従ってしまう時の、あの見捨てられた絶望感を、孤独を。


誰もいないけれど孤独ではなく、二人は外宇宙へ行く。