柚木麻子『らんたん』


筆者の出身校である恵泉女学園の創設者である河井道を主人公とした大河小説。


柚木麻子の本で初めてワクワクしなかったかもしれない。

主人公が行く先々で津田梅子やら新渡戸稲造やら有島武郎やらと個人的な縁で接触していく様は歴史小説あるあるなので違和感があるわけではない(それでも、歴史小説を書き慣れてない感じでわざとらし過ぎるところはある)。

1番は、歴史小説が向いてないということ。

筆者の作品の1番面白いところは、「自由社会」で自由を持て余した人々の迷走や無様と時にそれを打開するエネルギーや才能の落差の付け方。

歴史小説なんかオチは最初から(歴史上の事実として)決まってるし、今回の作品であれば「女性を解放する」こと自体に悩むことがない(「どうやって」の部分での葛藤は描かれているけれど)。


ラーメン屋に入ったら、「最近こういうのも始めたんですよ」って家の冷蔵庫にあるようなカルパッチョが出てきてモヤモヤするみたいな気持ち。