魔法の言葉 | いつも一緒

いつも一緒

スポーツカー好き。
休日は峠を走ってます。
愛車86とCC110、スーパーカブ90は夫の形見。
2024年9月にGR86納車。
86 2台持ちになりました。

 健康診断で必ず行う採血。

血液検査で何でも分かっちゃうから、採血は重要だけど、注射は大嫌い!


夫も注射嫌いだったけど、血液疾患だから、23日おきに採血なんだよね。

入院してからは、ピックからだと思うけど。

私なんか、年一回の注射でも嫌なのに、よく頑張ったよね。

採血は上手な人と、そうでない人がいるよねって話してたけれど、昨日の人は当たりだったよ。

ぜんぜん痛くなかった。

それでも怖いから、針が刺さる前から体に力が入ってしまって、背中を丸めて縮こまっちゃうの。

そんな私に看護師さんが

「大きく息を吸って、ゆっくり吐いて。肩の力を抜いて、背筋を伸ばすと楽ですよ」と言ってくれた。


この台詞、何処かで聞いたな。


そう、病院の介護の若い男の人。


酸素の数値が下がってきて、起き上がると更に下がって息苦しいのに、それでも起き上がろうとしてたよね。

苦しくて、一人じゃ立ってられないから、前屈みになって猫背になって。

そんな時、夜勤の介護の人が

「背筋を大きく伸ばして。ゆっくり息を吸って。ゆっくり吐いて」と、身体を支えながら優しく話してくれたね。

言われた通りにしたら、呼吸が楽になったんだよね。


その日は、妄想と現実の区別がつかないことを口にした。

○○ちゃん(私)も先生に言ったの?」

ボソボソっと私の耳元で囁いた。

意味不明の内容だったので

?、うん」

と曖昧に答えたら、突然「(俺の体を)触るなよ!」と、私を突き放した。 

皆んなが自分を殺そうとしてる、そんな妄想に取り憑かれている感じだった。

薬の影響だと思うけど。

介護の男の人のことは「彼は本物だよ」と言っていた。


その夜、添い寝してる私が起きなくて、その人に介助してもらい、魔法の言葉を教えてもらったんだって、翌朝言ってたね。


次の日は、妄想はおさまったみたいで、看護師さんに「俺昨日、一人で戦ってきたんだよ」と、映画のセリフのように話していた。

看護師さんは、一瞬間を置いてから「そうだよね。○○さんは何時も一人で闘ってるもんね」と、夫の話に合わせて答えてくれた。

そう、いつも一人で病気と闘っているんだよね。

ごめんね。

援護射撃できなくて。



魔法の言葉を唱えると、酸素の数値が上がるんだって。

「魔法の言葉。

 同じことを3回言うんだ。

 あれ、なんだったっけな〜」

子供のように、嬉しそうに話してたね。



背筋を伸ばして、ゆっくり息を大きく吸って、ゆっくり吐いて。

多分、そういうことだと思うんだけど。



あの夜、若い介護の男の人があなたに教えてくれた「魔法の言葉」

あれ、何だったんだろうね。


私も知りたいな。