デルタ
原題:Delta
イタリア映画祭2023 5月3日(水・祝) 18:40~

とにかく重厚だった
イタリアのポー川にあるデルタ地帯(三角州)を舞台に地元の環境保護団体と電気ショックによる密漁で生計を立てている移民一家の対立を描いた話
川を荒らされて怒りが抑えられない地元の漁師などがメンバーの団体と、それを理由に漁を止められ仕事と収入が途絶えた一家の緊張関係をそれぞれの立場で描いている。

団体のリーダーであるオッソは温厚な慎重派で密漁は許せないものの刺激することでの暴力沙汰を恐れていて、通報するまでが自分たちの役目で直接取り締まるのは警察に任せたいと考えているが、怒りに任せて密漁者たちを捕まえようとするメンバーやそれに感化される向こう見ずな妹に頭を悩ませている。

一家は外国で漁をしていたが法改正により漁が続けられなくなりデルタの空き家に移り住んできた。一家とは言うものの全員血の繋がりがあるわけではなく、元々地元住人だったエリアを含む訳あり集団による共同体と思われる(細かい説明はない)。

生活のために密漁をしているが生きるために魚を獲っているだけで手段は悪であるものの悪人というよりは貧しいながらも普通の人たちとして描かれている。

しかし漁には電気ショックを使用しており必要以上に魚を殺してしまうため、環境保護団体の怒りを買うことになる。

 

以下結末含むネタバレ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オッソが思いを寄せていたバールの店員アンナはエリアに惹かれ、過激化する団体のメンバーたちを抑えることもできず、守るために危険な事をしないように諫めていた妹ニナには行動せずに逃げている臆病者だと罵られ、平凡な今までの生活が奪われていくオッソ。

家を捨てて移り住んできた地でもまた密漁をすることになり、おそらく環境保護団体のメンバーでありながら密漁一家が獲った魚を市場に流す仲介をしていたバールの店長からは密漁を休むように言われ獲った分の魚の売上金も出し渋られ、仕事も収入も無くなり罪人として標的とされ追い詰められていくエリア。

二人の苦境と二つのグループの対立の緊張感が高まっていった結果、団体メンバーの不意打ちによるエリアの父への暴力が向けられる。

エリアは一家を連れてここから逃げようとするが、その際に未払いの金を店長に請求しようとした際にカッとなりビール瓶で殴ってしまう。殴られてキレた店長は銃を持ち出しエリアを撃ち殺そうとする。身を守ろうとした際に奪った銃で店長を撃ち殺してしまったことにより、密漁対策では動きの鈍かった警察が全力でエリアを捜索することになる。

一家の住んでいた空き家に火をつけるなど過激化するメンバーから妹を引き離すため、オッソは警察に協力して検問の手伝いをしていたがトラックに隠れていたエリアを妹が見つけてしまい撃たれてしまう。
こうして殺人犯として逃走するエリア、唯一の家族である妹を殺されたオッソの対決に入っていく。
捜索を続ける警察の目をかいくぐって一人銃を持って捜索を続けていたオッソは、捕まえたエリアに対して殺してやると言いながらも実際に手を下すこともできず自分の感情の整理が出来なかった模様。それに対して殺したくなんてなかったと言いながらも生きるために躊躇なく引き金を引くエリア。二人の感情の動きに引き込まれる映画だった。
最終的にエリアは死ぬが、妹を失い、好きな人も失い、バールも多分無くなり、暴徒化した姿を見た仲間たちに人殺しの自分。変らないのは川だけという中でその後どうなったのかを考えると辛い。