ロミオはジュリエット
原題: Romeo è Giulietta
イタリア映画祭2025 5月2日(金) 10:15~
晩節を汚したと評される公演で失敗した演出家が最後に挽回するために選んだ「ロミオとジュリエット」。気難しく独善的な性格の持ち主でありながらも、前作の評価と「ロミオとジュリエット」という使い古された題材に足を引っ張られて思うように俳優選びも出来ないフェデリコと、盗作で演劇界から居場所を失い再起をかけてオーディションに臨むヴィットリアを中心に公演に向かって進んでいくコメディ映画。
以下結末含むネタバレ
基本的にはフェデリコがゲイであることをネタにした笑いや、男装したヴィットリアを巡る色恋沙汰をネタにした笑いが中心となる。
応募してきた俳優をこき下ろし続けるフェデリコが唯一惹かれたヴィットリアは過去に問題を起こしており、既に批評の的となっているフェデリコにとって逆風になることから周囲の反発を受けて採用できなかった。それを逆恨みしたヴィットリアが男装して偽名でオーディションを受けることで滅茶苦茶にしてやろうと画策する。しかし元々ジュリエット役としての演技に惹かれていたフェデリコはロミオ役としてのヴィットリアにも惹かれてしまう。
過去に問題を起こしたヴィットリアとは違う人間であるヴィットリア、オットを否定する者はおらず、フェデリコは思うままに演技を賛辞する。それを受けて演劇界から排斥されたヴィットリアは自分を認められたことが嬉しかったのか、予定していたネタばらしを躊躇してしまいそのままロミオ役を受けてしまう。
その後決まらないジュリエット役に選ばれた話題つくりの為に演劇経験もろくにないSNSインフルエンサーや、ロミオ役に落ちたヴィットリアの彼氏ロッコが加わりバレずにロミオ役を続けようとするヴィットリアの苦悩がコミカルに描かれていく。
演技を馬鹿にされて泣きだしたジュリエット役のジェンマは庇ってくれたオットに異性として行為を持たれるし、会ったことが無いかと距離を詰めてくるロッコや、ゲイとしてオットに好意を持つフェデリコなどヴィットリアの苦悩の日々と、チケットの売れ行きも芳しくない上に劇の構想がまとまら無いことに苦しむフェデリコの日々だが基本的には笑いのシーンとしている。
強引に二人きりの食事に誘うというセクハラ行為を行ったフェデリコが、ダンスの後にオットを帰らせるシーンではオットを襲ってしまう事を踏みとどまるようなシーンなのだが、実はオットをヴィットリアと気付いていながらもしがらみの無いオットならば舞台に立たせても炎上しないと気付かないふりをして起用していたが、男装のヴィットリアに惹かれてしった事を恐れるシーンという可能性もあるのではないかと妄想もしていた。それは最後のシーンで否定された。
結果的にヴィットリアの彼氏オットはロッコを合コンに誘ったり、ジェンマとくっつけようとしたり、実はバイだからお前もいけるんだぞと口説こうとしてきたりしたが、全て最初から気づいていたロッコからの悪戯だったし(これは秘密にしていたヴィットリアに対する仕返しでもある)、劇のクライマックスである毒を飲むシーンで変装を解き女性であることを明かしたヴィットリアを見たフェデリコが卒倒したことから本当に知らずにビックリしたことも明かされたし、本来の脚本からそれたロミオとジュリエットが女と女の壁で苦しむロミオという形の劇になってしまった事で逆にフェデリコのロミオとジュリエットが評価されるという大団円となるなど期せずしてハッピーエンドとなる。
話の筋としてはあまり重要ではないのだが、ロッコのバイセクシャルは嘘だったがフェデリコが娘からのビデオレターを見ているシーンがあり、実はバイセクシャルである事が描かれていた。つまりフェデリコはオットがヴィットリアであることを知らずに誘ったが、そのままオットが帰らなかった場合にオットに襲い掛かったフェデリコが女性であるヴィットリアと知ってしまったとしても、それで済んだかどうかはわからないという小ネタも仕込まれていた。