乾いたローマ

原題:Siccità

イタリア映画祭2023 5月5日(金・祝) 16:00~

3年間雨が降らないローマで水不足と謎の熱病に翻弄される人々を描いた群像劇。

 

25年間大人しく服役していたが刑務作業中の荷運び中に荷台に乗せられたまま外に出てしまうというトラブルにより脱獄することになってしまったアントニオ。
SNSで皆で努力して水を節約しこの困難を乗り越えようと綺麗ごとを並べ立て、その賞賛で悦に浸る売れない役者のアルフレド。
夫の代わりにレジ打ちで家計を支えるもSNSばかりする夫や反抗期の息子に悩み、満足に水を与えられない鉢植えを心のよりどころにするアルフレドの妻ミラ。
抑圧された社会に反発するアルフレドとミラの息子セバスティアーノ。
原因不明の熱病患者達の治療に忙しく働く医師だが、出勤の際に夫の車で暴走して青年を撥ねてしまうサラ。
妻や娘との家族関係が冷え切っていて家に居場所のない弁護士ルカ。
移民の青年に恋する楽団員マルティナ。
看護師として働いているが夫が無職の為か周囲の勧めがあるにも関わらずなかなか産休に入れないジュリア。
何をやっても上手くいかず定職についていなかったが妻のフォローの甲斐もあって親戚から仕事を紹介して貰ったが恩知らずにも時計を盗んで帰ってしまう男ヴァレリオ

仕事道具であるタクシーを水不足で洗車出来ないと説明するが、空拭きで埃を落とす事すらしない運転手ロリス。
水不足の中プールや噴水で贅沢に水を使う高級ホテルでメディアや市民に対する矢面に立たされるラファエラ。

テレビで水不足についてコメントするにあたってヘアメイクをされて妻や娘に笑われるような野暮ったさを持つ水の専門家であるヴェッキオ教授。

など様々な人々の生活と民衆の混乱が描かれていく。

 

以下結末含むネタバレ

























謎の熱病の原因について様々な噂が飛び交う中、眠くなって演奏中などに突然倒れることから眠り病と呼ばれるようになる。

反抗期の息子セバスティアーノの素行に不安を抱くも、「若者は自由にすべき」と理解があるように言いながら自分の思想に酔っているだけの夫アルフレドに愛想をつかし、昔の知人であり弁護士として成功者となっているルカに逃避するミラや、夫が裸の写真を送り合っていることを知りつつも患者が増え続ける病院で忙しく働き続けるサラ、偶然の脱獄から娘に会いに行こうと町をさまよい続けるアントニオ、熱病のせいで幻を見ているのか亡くなった両親や大統領の声に惑わされながらも仕事を続ける元大統領の専属運転手だったロリス、海水を浄水しホテルで利用しようと提案するも利益しか考えていない親族たち経営陣に煙たがられ恋人であるヒモ男の浮気にキレたりと何事も上手くいかない上に、ボディガードであるヴァレリオが見せた腕時計が友人にプレゼントした物と気づいてしまい盗品だと叫びたてた結果殺されてしまう不器用な女ラファエラらを中心に話が進んでいくが、アントニオは娘ジュリアに25年間手紙も何もなく今更会いに来たことを拒絶され刑務所に戻り、ルカと会う約束をした日に息子が眠り病で倒れ結局直接会っての浮気はなくなったものの夫は働いていないし息子が病床に付しているミラ、娘や幻覚の後押しで元妻とのわだかまりを解き新しい生活への希望が見えつつも治療法の目途すら立たずに終わった眠り病患者のロリス、産休に入り新しい家族生活に夢を抱いている中知らない所で夫が殺人犯になってしまったジュリアなど登場人物たちの状況は好転しないままローマに雨が降ることで物語は終わる。

個々の問題は山積みとは言え、雨により水不足は解決しローマの多くの民衆は救われることになりそうだが、ヴェッキオ教授の推論によると一度降り始めたら大洪水で高層階を除いて水没するだろうと言われるシーンもあり、その後ローマがどうなるのかはわからない。