国内の約8400の病院のうち、新型コロナ患者受入可能医療機関は1700機関、
1700機関っても、コロナ専用に割り当てられた病棟は10床とかに絞られとても少ない。
ICU等を有する医療機関は1007機関ありますが、実際に新型コロナ患者で人工呼吸器、ECMO又はその両方を使用した患者を受け入れている医療機関は307機関に過ぎません。
この307の医療機関のうち、特に大都市圏の医療機関の新規重症患者の受入キャパシティがほぼ底をついてきたというのが今日の状況です。
前述のICT等を有する700の医療機関のうちコロナ重症者受け入れ可能な医療機関が、新たに重症病床を設置し重症患者を受け入れるか、または、既存の307の重症患者受入医療機関が重症病床を増床するしか方法はありません。
政府は、昨年5月には、令和2年度の第二次補正予算で、新型コロナウィルス感染症緊急包括支援交付金(医療分)として、約1.6兆円を計上し、また、昨年12月には、第三次補正予算で、地域の医療提供体制を維持・確保するための医療機関等支援金として、 1.9兆円を計上するなど、予算面ではかなり大規模な対策を講じた結果、コロナ重症患者を受け入れる医療機関の経営が大きく改善しました。
しかしながら、この対策も、新規にコロナ重症患者を受入れる医療機関を拡大し、重症者用病床数を拡大するという重要課題の解決にはつながりませんでした
昨年4月以降、コロナ院内感染等により、深刻な経営難に陥り、賃金や賞与カット、人員の削減、経営破綻寸前になった病院が多数あったこと、そしてそれらの病院に対して、国は経営支援のための資金投入をしなかったことについて、当然のことながら、病院経営者は知悉しているのです。
この病院経営者の不安を払拭し、健全な病院経営を維持するための最善の策が、万が一、赤字が出た場合の公的資金による損失補償なのです。
. 第2次補正予算の内容
昨年5月18日に、私は、日本医師会横倉会長等と総理官邸を訪問させていただき、安倍晋三内閣総理大臣に、編成中の第2次補正予算で医療機関等に財政的な支援を行うことを求める要望書を手交させていただきました。また、その会談に先立ち、第2次補正予算案の策定に関わる方々と予算の内容についての議論をさせて頂く機会も頂きました。

日本医師会の横倉会長(当時、左から3人目)とともに、安倍首相(当時)と会談した際の筆者(右端)
境田 正樹 弁護士、東京大学理事(病院担当)
「パンデミックは、国家と感染症との戦争であり、コロナとの戦争で、戦地で国民のために命をかけて敵と戦うのは医療従事者です。
彼らは私たちの英雄です。
国民のために命を捧げる英雄が、生活に困り、職を失うようでは、我々が戦争に勝てる訳がありません。
医療従事者に対しては、できる限りの身分保障や生活保障を、また、コロナ患者を受け入れる医療機関に対しても、損失が生じた場合の財政支援を行って頂きたいと思います。
ここは総理のご決断がないと国は動きません。どうぞご理解をよろしくお願いいたします。」
その際に、私から予算編成に関わる方々に対し、コロナ患者を受け入れる病院への損失補償を検討すべきとの意見を申し上げたのですが、そこで分かったことは、予算編成の担当者としては、医療機関が経営危機に陥らないようにすることが極めて重要であることは十分に理解しているものの、医療機関がコロナ対応により被るであろう「損失補償」のための予算措置は行うことはできない、それは、政府の一貫した方針なので、ということでした。
その主な理由は、政府は、コロナ禍により損失を被っているすべての業界に対して、損失補償を行わないことを大原則としているため、医療界だけを特別扱いできないということ、つまり、飲食業、旅行業、運送業など政治的に強い影響力のある様々な業界団体から、政府に対し、損失補償の強い要望があるなかで、医療界だけを特別扱いし、損失補償をしてしまうと、政府は、政治的に持たないからということであろうと思われます。
やっと、12月25日、厚生労働省は、新型コロナウイルス感染症患者等入院受入医療機関に対し、 緊急支援事業として、重症者病床 1床あたり15百万円を交付する等のことについて公表しました。
(表1)
もちろん、実際に、コロナ重症患者の受入れ病床数を拡大するためには、看護師、技士など専門人材の登用なども必要となってきますが、そのための予算が確保されているのであれば、人材の登用はそれほど大きな問題にはならないと思います。
足りない「選択と集中」
要は、医師会、民間病院だけが悪いんじゃなくて、
政府、厚労省にも問題があるのです。