アクセルを踏み込むと
ぐわーん とフロントを上げて走るテスタロッサは昔のナンバーワンホステスが、今だに私より美しい女はこの街にいないわ と言っているようだった。
若い子のようにピシッと止まらないブレーキ。
若い子のようにキビキビとハンドルも切れずキックバックがやや強い。
レザーも若い女性達とはちょっと違う昔ながらのキツ目の懐かしい香りがした。
彼女の
望むまま
夜の繁華街にテスタロッサをずるりと乗り入れた。
くたびれたキャバレーの街灯がテスタロッサを照らす。
僕はこれほど美しい女性をあれから18年間この街で見た事はない。
やはり テスタロッサはナンバーワンだ。
キャバレーリードでデビューしたテスタロッサには夜の街が似合う。
近頃は、このテスタロッサに相応しいような飛び抜けて美しい女性がこの街に居ないのが残念だ。
そして思った。
これほど美しい女性は、やはり そのままの姿が良い。
ホイールやらスポイラーを付け替えて遊ぶのは、モデナ辺りでしてほしい。
もっとも最近の女があれやこれやと着飾ろうが、このテスタロッサの華に勝てるはずはないから、夜の街ではテスタロッサに道を譲る事だ。
テスタロッサに乗るとこのまま夜が明けないでほしいと思う。
テスタロッサには夜が似合う。