戦国時代も終わり、大阪冬の陣まで。

 片桐(かたぎり)且元(かつもと)は、そんな時代の豊臣の重臣。


 時代が時代だけに、合戦はありません。

 豊臣と徳川の交渉と、その裏で行われる忍びとの戦いが描かれます。


 加藤清正福島正則が有名な、賤ヶ岳七本槍の一人。でも、一番目立たない人です。

 この本の中では、天下は完全に徳川のものになったと感じ、豊臣の力を弱めて一大名として生き残りを計ろうとする現実路線の武将として描かれています。


 それと対立する淀君と、豊臣の重臣大野治長は、浮世離れな所にいます。

 二人は当時でも豊臣が徳川の上にいると思い込んでいる理想論者。

 また、当時の大阪が持っている空気の中にいると、天下のことがよく分からない状況にもなります。


 話し合いで解決しようとする穏健派は、味方側からも裏切り者と言われるような苦しい立場になりますが、正に片桐且元はそんな状況に追いやられます。


 この話の魅力として、織田信雄の存在があります。

 負ければ、歴史から消えてしまう戦国において、何度も負けながらなお生き抜いている。

 彼は、現実路線と理想路線で対立する大阪で、世を捨てた立場から物事を見ています。そして遂には、万を率いたことのある過去を買われ、大阪方の総大将に祭り上げられる。この顛末は秀逸です。


 方や、且元は己の槍では戦功を上げられたものの、武将としてはそれほど大した実績がない。

 万人を率いるのは政治。

 そんな言葉で、且元が根っからの武士だということを描いています。


 また、美濃城を数十名で落としたものの、主君を諫めるだけで城を返した竹中半兵衛を、且元の言葉で人が集まったら城に居座ったと言わせている。これもまた、ユニークな見方です。

 あくまでも自分の生き方に従い、最後まで豊臣のためを思って行動した且元。良い作品でした。



片桐且元 (小学館文庫) 片桐且元 (小学館文庫)
(2004/10)
鈴木 輝一郎

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