若手社員と中堅社員の二人が、アメリカへ1週間の短期出張に行くことになった。
中堅社員は若手の上司である。
上司といっても、それほど年齢は離れていない。
二人だけの出張でも、それほど気を遣うような間柄ではなかった。
ただし、一つ問題があった。
二人とも海外出張は初めてだった。
しかも、英語はそれほど得意ではない。
関西空港を出発し、長いフライトも終わりに近づいた。
いよいよアメリカ到着である。
そのころ、機内に英語のアナウンスが流れた。
何を言っているのか、細かいところまでは分からない。
でも、なんとなく雰囲気で分かる。
ちょうどそのタイミングで、CAさんが書類を手にして通路を歩いてくる。
「この書類に記入してください。お持ちでない方にはお渡しします」
ということらしい。
英語が分からなくても、こういうものは周りを見ていれば、だいたい分かる。
二人も申告書を受け取り、記入を始めた。
名前。
国籍。
生年月日。
住所。
分かるところから順番に書いていく。
ところが、ある項目で若手社員の手が止まった。
そこには、
SEX
と書いてある。
もちろん、これは性別のことである。
MALEかFEMALE。
ただ、それだけの話だ。
ところが――
初めての海外出張。
もうすぐアメリカに着く。
少しテンションも上がっている。
そして、英語にはあまり自信がない。
若手社員は「SEX」の文字をじっと見つめた。
しばらく考えた。
そして、おもむろに書いた。
Once a Week
週一回。
どうやら、とんでもない勘違いをしている。
ちなみに、この若手社員は結婚している。
その隣では、先輩である係長も同じところで手が止まっていた。
係長も、
SEX
の文字を見つめている。
どうやらこちらも、同じような勘違いをしているらしい。
さすが同じ部署である。
考えることまで似ている。
係長は、若手社員の申告書をちらっとのぞいた。
そこには、
Once a Week
と書いてある。
それを見た係長。
「なるほど、そういう質問か」
と思ったのだろう。
自分の申告書に堂々と書いた。
Twice a Week
週二回。
今度は若手社員が、それをのぞき込んだ。
そして思わず言った。
「係長、それは過剰申告でしょ」
二人とも、
「SEXは週に何回ですか?」
と聞かれていると思っていたのである。
いくらなんでも、こんなサラリーマンが本当にアメリカ出張へ行ったとは思えない。
しかし、これはI君から聞いた話である。
世の中、何があるか分からない。
仕事ができることと、英語ができることは別である。
それにしても――
ONCEなら正直者で、TWICEなら過剰申告。
入国する前から、いったい何を申告しているのやら。
