「スカボロー・フェア」は、Simon & Garfunkelの名曲のひとつである。
アート・ガーファンクルの透き通るような高音が印象的な、あの曲だ。
ただ正直に言うと、歌詞の意味なんて深く考えたことはなかった。
出だしはこうだ。
Are you going to Scarborough Fair?
Parsley, sage, rosemary and thyme
スカボロー・フェアに行くのかい?
パースリー、セージ、ローズマリー、タイム……
なんとなく雰囲気で聞いていたが、具体的に何のことかは気にしていなかった。
ある年、社外のメンバーとプロジェクトを進めていた。
公的資金を獲得した、当時としてはかなり大きな案件である。
予算も確定している。
メンバーもどこか余裕があり、全体的に「楽しいプロジェクト」だった記憶がある。
プロジェクトを開始、しばらくして軌道に乗ってくる。
懇親会をやろうという話になった。
4社8名、初めての飲み会である。
場は大いに盛り上がり、その流れでカラオケへ突入した。
その中に、海外留学経験のある若い女性がいた。
彼女が選んだ曲が――
「スカボロー・フェア」。
おっ、帰国子女の英語の歌か。
これはちゃんと聴かねばならない。
他の人のときよりも、なぜか姿勢を正して耳を傾ける。
Are you going to Scarborough Fair?
Parsley, sage, rosemary and thyme
その瞬間、違和感に気がついた。
「Parsley」の発音が――
全然違う。
アート・ガーファンクルの「パースリー」とは違う。
彼女の発音は、はっきりこう聞こえた。
「パセリ」
ああ、そうか。
あれは、あのパセリのことだったのか。
そのとき、ようやく腑に落ちた。
ちなみに、
Parsley, sage, rosemary and thyme はすべてハーブで、
パセリ、セージ、ローズマリー、タイムのことだった。
中世ヨーロッパでは、それらは、
愛、誠実、健康、勇気、記憶――
そんな意味を持つ象徴でもあったらしい。
歌としては、かなり深い意味がある。
だが、そんなことはどうでもいい。
僕にとっての「スカボロー・フェア」は、
あのときの一言にすべて集約される。
「パセリ」
後で聞くと、彼女は1年間の短期留学だったそうだ。
……なるほどね。
