英語の国であるオーストラリアで小学校教員として働いて15年以上経った。

 

そして、低学年から高学年までの全ての教室に出入りしたり、児童の課題を採点したりしてきて、気付いた点がある。それは、「英語民にとっての単語綴りの練習は日本人にとっての漢字の読み書き練習のようなものだ」、ということ。

 

では、その根拠を挙げてみよう。

 

【日本人にとっての日本語】

日本人は平仮名を学べば、遅くとも小学校一年生で自分が話す言葉や聞いた言葉を全て書くことができる。そこから、毎年毎年いくつもの漢字の読み書きの勉強をしていく。各学年の教室には漢字表が貼ってある。一般的に、年令(大人では学歴)と漢字の知識は比例する。

 

【英語民にとっての英語】

英語のアルファベットは母音と子音がそれぞれ独立した表音文字。大文字と小文字を別に数えても52しかないから、小学校一年生で全て覚える。しかし、同じ音に数通りの綴り方があり、同じ母音綴りに二つ以上の音がある。だから、毎年毎年その幾通りも存在する発音と綴りの関係を勉強していく。各学年の教室にはそのための表が貼ってある。一般的に、年令(大人では学歴)と単語の綴りの正確さは比例する。

 

日本人の6才児は「きょうしつ」という単語を平仮名でしか書けないが、学年が上がって漢字の読み書きを学んでいくと「教室」と書けるようになる。

英語民の6才児は「(読むの過去形の)レッド」という単語を、聞いた音から「red(赤)」と同じに綴るが、学年が上がって英単語の綴りの規則を学んでいくと、ちゃんと「read」と綴れるようになる。