「英語」という言語は、その名の通り、元々はイギリスの「イングランド」という地域の言語である。

 

 

が、イギリスが世界中に進出して各地を植民地化した結果、様々な地域で英語が使用されるようになった。イギリスの植民地ということで、それらの地域では英語(=イングリッシュ)が公用語となったが、発音や語彙などは、その土地土地で特色がでてきた。これは、英語の世界での「方言」みたいなものだね。

 

イギリスが世界一の大国であった時には、イギリスの「クイーンズ・イングリッシュ」こそが格式高い「英語」で、アメリカ英語は「訛った英語」とされていた。日本でも、かつてはイギリス式の発音や綴りで英語を教えていた。

 

ところが、その後アメリカが台頭してイギリスを追い抜き世界一の大国となり、現在では「アメリカ英語」が日本の学校教育で教えられている。そして、本家であるイギリス英語が、「イギリス訛り」などと形容されるようにもなってきた。イギリスには本家だという誇りがあるかもしれないが、ハリウッド映画の影響もあり、現実は「イングリッシュ=米語」という認識になっている。

 

また、ハリウッド映画などによって世界中に広まったアメリカ英語は、オーストラリアやニュージーランドの若い世代にも影響を与えてきている【:独立した便所のことを「トイレット」ではなく「バスルーム」と呼んだり、「advertisement(広告)」という単語を「アドヴァ―ティスメント」ではなく、アメリカ式に「アドヴァタイズメント」と発音する、など】。

 

私は、この「イギリス」「アメリカ」「その他の英語地域」の関係は、「京都」「東京」「その他の地域」の関係と似ていると思う。京都はかつて千年以上にわたって日本の首都であり、天皇もずっと京都に住み、公家が話す「京言葉」こそ上品で格式の高い言葉とされていた。織田信長が明智光秀を重用した理由の一つは、「光秀が京言葉に堪能であったから」だとされている。

 

しかし、時は流れ、世界の覇権がイギリスからアメリカに移ったように、日本の首都は京都から東京に移った。そして、東京の山の手方言を元にして共通語が作られ、学校教育と共に日本中へ広まっていった。これによって、京言葉は「京都弁」という方言になってしまったのだ。

 

アメリカ英語がハリウッド映画などを経由して各地の英語に影響を与えていることは、東京方言とそのイントネーション(=訛り)が、東京にある各キー局の電波に乗って日本全国に浸透していって各地の方言に紛れ込んできている、ということに似ている。また、アメリカ人が自分たちの話す言語こそが英語だ思っているように(実は「アメリカ訛りのイングリッシュ=米語」であるけれども)、東京首都圏に住む人たちには「方言を話している」という自覚が無い。

 

【要約】

英語を公用語とする国を日本に当てはめると、

イギリス=京都

アメリカ=東京

英米以外の英語圏=その他の地域

という感じではないかというのが、私の意見だ。