X'mastree 青空  地球

 

最近テレビを点けっぱなしにしていることが多い。

消そうと思っている時 歌舞伎役者や子供の羽織姿。

父親とその弟と関係者が家族全員盛装して街を歩く。

四年前に亡くなった父親{中村勘三郎」の法要らしい。

少し前迄小雨が降っていた。

突然雨が止んだ。

そして明るくなった空に綺麗な色の模様が浮かんだ。

 

 

ピンク・黄色・薄紫・若草色と白色。

そんな空を見た事はありませんでした。

その時思い出したのです。

数十年前のことです。突然 従妹の電話で明後日、行くので母方のお墓に連れて行って欲しいと言う。

母親同士仲が良く。従妹も仲が良かった。

従妹は愛媛県からくる。飛行場に迎えに行く。

事情は子供の身体が悪いので何か占い師の言うのには母親の先祖のお墓に御参りに行くようにと言う事だった。

(遠い街まで良く来るものだ)と思った。

明日に其処に行き次の日に帰ると言う。

そこ迄連れて行って欲しい。

一度も行った事のない。

その日は大嵐。

 

海からの風と雨はもの凄く車を持って行きそうになる。

三時間半 かかって目的の街に着いた。

役場は日曜日で戸が開かない。

この気候では何処の家の戸も閉めていた。

 

 

お墓のそれらしい所が無いかと車を走らせた。

三十分から四十分も走ったろうか。

今でも分からない。細い道を走っていた。

突然行き止まりになった。

 

 

目の前に小高い丘の山があった。その丘全部がお墓だった。

すると突然。今までの風と雨は止み空一杯太陽が出た。

靴は柔らかい土に埋まった。

従妹はお墓に供える荷物を持った。

「右の方だから」

初めての私が何故知っているのか。

何百か、何千かあるお墓。

そして先祖の墓に迷いもしない。

従妹は丁寧に手を合わせていた。

二十分もそこにいて引き返した。

踵が穴を開けた。

空は綺麗な藍の色。

気持ちが良い。お墓の回りの木々も雨を吸って青々としている。

そして車に乗った。

その途端。また大雨と風が吹いた。

何と云う事だ。

何と不思議なことか。

青空は不気味な程黒く。山の木も大揺れに揺れている。

数えきれない山の一つのお墓を何故探せたのか。

何故初めてのお墓を知っていたのか。

大嵐が何故突然止んだのか。

帰りの運転は帰りの方が随分楽だ。

何故なら先頭に白の車。次に旅行中らしいバイク。続いて黒の乗用車。

随分長い距離をその状態では走っていた時、一番前の車が左に寄った。「どうしたのか」

すると二台目も三台目も左側に付けた。

 

 

それに続いて停止。その時、(トントン)こんな大嵐なのに誰だろう。

窓を開けた。

「どちら様ですか」

「道警です」

バックミラーが真っ赤になっていた。

「何時から着いて来たのですか」

「ずっと着いて来ていましたよ。あまりスピードを出さないで、気を付けて走ってください」

その時は雨も風も止んでいた。

「ありがとうございます」

「優しい警察官だったね」

ゆっくり走った。

二時間して家に着いた。

あの時、ペーパードライバーで車に乗り始めて六カ月しか経っていなかった。

良くぞあの嵐の中をあの遠い所まで人を乗せて走ったものだ。

若さ故の無鉄砲がそうさせたのだろうか。

その後、従妹の子供の病気が治ったかは分かりません。