⑺ 幼稚園にて
先生も生徒もうきうきしていた。
特に隣の組の優君と萌絵ちゃんはもう少しで舞台に立つ。
開会の言葉を言うので、毎日家で練習した。お母さんも張り切って「そこ そこ」と力を入れて注意する。二人の子供は手振りからアクセントから言葉の間取り方も、親の言う通りに仕上げられた。
今日を待ったのは、母親ではなく早く解放されたい二人の子供だったかも知れない。
そして開会式。二人の大きな声は運動場一杯に広がった。
そんな時一人の母親が静かに運動場を出て行った。誰も知らなかった。
十分もすると戻って来た。それも見ている者は一人もいない。
それからお遊戯、楽器の演奏。劇とプログラムは進んでいた。園児達は親の作った衣装を着て大喜び。
その時、五人グループの一人が青い顔をして来て、もう一人のお母さんを急いで連れて出た。
二人は荷物を探した。
園児の机の下に落ちていた。「あった!」そして中を見て「ない」
朝、話していた。
「夫のお父さんが退院なので支払いがある早く病院に行く。終わってからの集まりは欠席にして-」
その話しを聞いていたのは、このグループの他にもう一人、昨日入園して来た、赤ちゃんを背負った人がいた。
二十七万円全部なかった。その中の一人が「あの人ではないか」
「教室に最後までいた」五人は(警察に届けよう)。先生に相談する。
二人の警察がきた。そして盗まれた人は、署まで行って書類を書いて帰って来た。
勿論。お金は戻らなかった。
残ったのは転入して来た赤ちゃんを背負った女が犯人だと言う噂だけだった。
それから間もなく、その人は、他の幼稚園に移った。
三年後、クループの一人から聞いた。
五人の中の一人に、十万円から五十万円の詐欺に合っていた。
あの時に初めてお金を盗んだのは、詐欺をした彼女だということ知った。
夫は何年も前に離婚していたことも。
遅かった。もう諦めるしかなかった。
現在は常習犯として名が上がっていた。
四人はあの時の彼女の巧みなこ言葉使いに振り舞わされたのだ。
赤ちゃんを背負った人は、一生思い出したくない街になっただろう。
お金を詐欺された四人は返らないお金よりも、その女の人に辛い想いをさせた事を悔いていた。