⑹  両親からの贈り物

冬の間 浴室の水はけが悪く雪解けを待っていた。

五月 友達に相談。彼女のおじさんが設備の仕事をしていた。

すぐに見積もりを持ってきた。妥当な金額にお願いをした。

始め来たのは二人だったがいつの間にか四人になった。仕事の無い仲間か。友達のおじさんも何も言わない。

思ったより早く終わりそうだ。

来ていた男は兄弟のようだ。設備が明日で終わると云う時、兄弟の弟の方が「ベランダから風が入って来るな」と言う。「どら」と兄の方が立った。「何これ!」「どうした」弟が見て言った。

その時。友達のおじさんは「次の仕事があるので」と帰って行った。

ベランダを直す事になると大がかりになった。テレビも茶箪笥でリビングが一杯になる。戸を閉めて寝室でレコードを聞いていた。

 二人は始めノックしていたが、直ぐに黙って寝室に入ってくる様になった。初めはこの二人の態度に図々しさを感じていたが、そんな態度にも馴れてしまった。

 ベランダももうすぐ終わると言う時、弟の方が寝室に来た。

 「ベランダの上の屋根が腐れている」見ても素人の私には分からない。  [屋根を直さなければこの家は余り持たないなー]と言う。

 

 両親は三年前に同じ年に相次いで死んだ。両親と言っても私は生れてすぐ貰われて来た。私は二人の愛情を受けて大きくなった

 二人は私の為に財産を残してくれた。土地・家。現金・会社の株。

だから職場を辞め悠々自適の毎日。時々暇つぶしに友達の勤めている洋服店に買い物に行く。友達は私の事情を知っていた。

 

ある日。閉めて行った筈の寝室の戸が開いていた。その時は疑問とも思わず、鍵を掛けなかったと思っていた。

窓も直した。屋根は今度にする旨を伝えた。それから二か月も経った頃 見た事も無い人が玄関に現れた。「この家を買いました」権利書を見せた。

押入れの中の金庫も大事な物一切なくなっていた。

警察に届けたがもう後の終わりだった。友達は「こまったね」と連発していた。親身なっていたのは見せかけで、友達のおじさんもあの二人も詐欺師だった。

知らなかった。両親に(人を信じなさい)と教えられて育てられた。

私は両親からの貰った物は一つも残っていないけれど・・・

今、残っているものは、毎日働ける健康と明るい性格は残っている。

その他に中古の車と愛用のカメラがある。

 明日は少し遠いけれど{さくら}を写しに行こう。