(可笑しな話し) 1 白昼の泥棒
縁側に春の陽の光りがゆったりと入っていた。
二人はまだ雪の残る花畑に、春に咲く花では一番早く咲くピンクの花を 見ている。
春一番に咲く強い花。あと少しで雪が全部解けると緑の大きい葉っぱが出てきて大きい花が咲く。北の街の人は(雪の下)言っていた。
二人でお茶を飲み静かな時間。
花畑の入り口にはまだまだ雪が残っている。
突然。その雪を踏んで防寒具を着て手には剣先スコップとビニール袋を持ったおばさんが入ってきた。
そして咲いている花を掘り始めた。
見ていた奥様が「泥棒だ」慌てて外に行った。
「止めて下さい」大きな声で言った。それでも掘る手を止めない。
今度は「それは駄目です。こっちの方にして下さい」頼んでいる。
それでも掘り続けている。
何か可笑しい。必死にお願いしている人と平気で袋に入れている泥棒。
泥棒は何も云われても動じない。花を袋に入れ終ると持ち上げた。
ビニール袋が縦に破れた。ピンクの花は掘った穴に戻った。
白昼 平気で花を盗む度胸はたいしたものだ。
それにしても泥棒に変わりの花を上げようとしている奥さんも面白い。
そして優しい。