クリスチャンの母は、常々こう言っていた。

「あなたは、祝福されているの
あなたは、恵まれているの

いつも喜んでなさい
たえず祈りなさい
全ての事に感謝しなさい
(メロディー付き)」

でも、心の中ではこう思ってた。

うぜ~!
だっせ~!

なにが祝福だ、
欲しいもの買ってくれなくて
みじめな思いをしてきたのに

なにが恵まれてるだ
したい事も禁止
楽しい事いっぱいしたいから
バイトしたいのに
やらせてくれなかった

もうもうもうたくさんだ。
そんな言葉、聞きたくもない。

なんで、神様なんて信じるん?

マザーテレサ?素晴らしい?


あんたさ、だったらさ
家でだらだらしてないで
インドにいって同じ生き方すればいいじゃん
ただ、うちにいてなんにもしなくて
毎日聖書開いてお祈り

ええ~、クリスチャンとして
ご立派ですことぉ!

友達もクリスチャン
お家で集まって
賛美歌会って
ださくて、うざくて仕方ない

良い事を言われていても、
聞く耳をもてなかった。

母の苦労話
父の義母の世話
何十年も前の苦労話を思い出し

それを反芻する母
もうたくさん
やめて
ききたくない

それなのに、あたしは
なにも言わず
ただ黙って
心を閉ざして
聴くふりをしていた。


母のやることなすこと
気持ち悪い

毎日美味しいパンを焼いて食卓を
彩ってくれるAちゃんみたいなママだったらいいのに

いつも可愛い服をきている、それはママの手作り
そんなママだったらいいのに

インドネシアから転校してきた
Yちゃんのお家はいつも綺麗。
すっきりしていて、家とは大違い。

家の中はとっちらかって
お友達が遊びにくるのに恥ずかしくって
くる時必死にお片付けして

もっとなんであたしにかまってくれないの
すてきなママじゃないの
世の中は危険なことがいっぱい
安全なところは神様の世界

外に出ようとするあたしを家の中に閉じ込めて
学校以外、いっさい遊びにもいけなかった

お嬢様ばっかりの短大で、
ブランドものを身につけ、授業がおわれば彼氏が
車でお迎え。そんな人がたくさんの華やかな女子大。
それにひきかえ、あたしはよれよれのおさがりのトレーナー
バイトもさせてくれなかったあたしはいつも
みずぼらしかった。みじめだった。


貧しいことは美徳のような一家に育った。


まだ恨んでるね。
こんだけ、ここに書けるってことはね。
まあいいか。
ちょっとすっきりした。

今冷静に考えれば
完全に母に理想をもとめてる

母のことを不幸か、幸せか、どう思っていただろうか。

どう考えても不幸と思っていた。

商売をやって、裕福な家に生まれた母
祖父祖母はとても忙しく働いていたので
愛情に飢えていたらしい。

どんなに貧しくても、この手で子育てをする。
働きにいかないで家を守るのが、母の使命。

父と結婚し、父方の祖母は娘息子の兄弟の家を
転々とし暮らしていた。
うちで暮らしていた時、祖母はねたきりの介護生活をしていた。
叔父が自殺をして精神的にショックを受けたことが発端だった。
家の中が暗かった、殺伐としていた。
叔父が自殺だった事は、あたしは知らない事になっている。

だだ「亡くなった」としか聞かされなかった。
なのに、たまたま母が教会の牧師先生にこの事を
打ち明ける書きかけの手紙を母が席を外しているすきに、
あたしが見てしまったのだ。

ああ、やばい。見てはいけないものを見てしまった。
あたしは知らないふりをしていないといけないんだ。

父は働きにいかなければいけないので
日中の面倒は嫁である母が見る事に。

毎日毎日、母は祖母に声をかけて
背中をさすって、トイレまで連れて行き
ご飯も毎食たべさせ、着替えも母の手が必要

そんな生活がどれくらい続いていただろうか。

母の介護のかいがあって、祖母はみるみる回復し
普通に生活ができるまでになったと思う。

そして祖母は叔母の家で暮らす。
そんなに苦労したのに、娘の家では暮らしは順調。
叔母からは感謝もされていない様子。

大変だった介護。
その話を、幾度となく聞かされる。
だけど、あたしはそれを聞くのがとても苦痛だった。

でも嫌って言えない。

親にも嫌われたくないとおもっていたんだ。

親の前でも、あたしは本当の自分をかくして
その話を黙って聞くほかなかった。


母にとって、祖母との関係
親戚との関係

それは決して良いものだったとは
とうてい見えなかった。

その頃のことを時々実家に帰るときかされるから
あたしは実家にいくのが苦痛だった

ああ、始まった。
苦労話のオンパレードのはじまり

もうやめてくれる?その話

そういえないあたしもいる

母に言われる事

あなたは、本当にいい子に育ってくれた。。。





それを言われるとムカムカと腹がたつ

なんにもわかっちゃいない

あたしは、あんたがたに歯向かったら
生きて行けなくなる
あんたがたに歯向かったら
あんたがたを殺す事になる

そう思っていたから

従順な娘を演じていただけ


この間電話がかかってきた

なんて事はなかったが

最後に、あんたは幸せな子よ。

そういって電話を切ろうとしたので

思い切って「おかあさんもね」

と切り返した。

そうしたら

「そうよ~、わたしすごく幸せよ~
じゃあね~」

といって電話を切った。

「あれ?」なんか反応がちがう


「あんたはしあわせな子」

母が苦労して、大変な思いをして

母は自分を犠牲にして

娘を幸せにした

そうおもっているんじゃないかと

あたしは思っていた

だから母は自分の事を不幸だとおもっている

と勝手に思っていた

だから、母の口から

自分は幸せ

という言葉を聞いて

あらあらあら


お母さんは、あれでも幸せだったんだ。


力がぬけてしまった。

母の言葉はうけとれないくせに

他の人から同じ言葉をいわれると

妙に説得力があって納得してしまう

ともあれ

母はしあわせだった

それがわかってめでたしめでたし

そのうで、あたしの心で思っていた事も

言ってみないといけないかな

今度仮に、過去の苦労話を蒸し返してきたら

ごめん、あたしもうその話
聞きたくないって