とあるビルが壊されたことで、
海と空の景色が一面に広がった。
夏の景色というより、
うす青い海にうす青い空。
海と空の境界が分かりにくいくらいに
色の薄い景色。
 
 
だけど、その風景はとても爽快で、
私は写真を撮ろうとする。
 
と、その景色には電車が走っていることに私は気付く。
赤い電車と灰色の電車。
 
 
電車好きってわけじゃないのに
海と空の景色の中に電車を入れた写真が欲しくて
シャッターチャンスをねらうが
どうもうまく撮れない。
 
 
そのうち、海と空が広がる景色に慣れていくと
もともとそこにあった建物がどんなものであったのか
思い出せなくなっている。
 
「そもそも、ここに建物なんて建っていたんだろうか?」
私は父に向かって話している。
 
父が私に何か助言をした。
 
「あそこにはビルが建っていただろう。
今、あのビルがない景色が自然だということは
あのビルはいい建築ではなかったってことだ」
 
みたいなこと。
何を言わんとしているのかちょっと分からない。
 


 
朝起きて、寝汗による不快感にしばらくもだえていたが
フと外の音に意識をやった。
昨日の朝のようなギラツイたミンミンゼミの鳴き声は聞こえなかった。