「俺を求めて。いつでも求め続けて。」



昨日、マスターが私を抱いているときに、そうおっしゃった。


相変わらず私は、こくこくと頷きながら
マスターにしがみついて抱いてもらっていた。



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思えば、私は男性を求めることが好きだ。


後を一生懸命追うことが好きだ。


そして、相手の男性もつかずはなれずの距離で
まるで後ろ頭に目がついているんじゃないかっていう感じで
振り返ることはしないんだけど、
ちゃんと私が後をついてきているか意識して
前を歩いてくれている人が、

どうしても好きだ。


それも、情緒的な事柄のときの関係において。
という制限があったりする。


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つまり、女性に情緒的に追われることを求める男性が好きだ。



・・・と、思い出すはマスターとのせっくすのときと
某氏とのちょっとした思い出だ。



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地下駐車場から地上へ向かう
長い階段。


某氏は、何か片手に革のグローブをはめられて
そしてその手のひらを片手こぶしで叩いた。
「スパーン スパーン」という音が地下階段に
響き渡る。


一定のリズムを刻みながら、某氏は私より数段上を歩き、
一定の距離を保ちながら地上まで私を誘った。


一度も私のほうを振り向くことはなかったけれど
私が少しよろけて足音のリズムが少しでもくるうと
私を気にして某氏の足のあゆみが少しだけ緩やかになったりすることに
私は緊張しながらも某氏の後ろをついていくことに安心を覚えていた。

まるでハーメルンの笛吹きみたいだった。

地上に上がり、夜の公園へと向かった。

やっぱり私と某氏の間には一定の距離があり、
私はひたすらよろよろと某氏のあとをついていった。


ある階段に腰掛けた。
一段私が前にいくようにいわれた。
某氏が私の後ろにいるような感じだ。

某氏があることをおっしゃった。

私は言うことをきけずに、そこで関係が一度終わった。


某氏が、「帰りなさい」とおっしゃるものの
私はイヤダと言って動こうとしなかった。
しばらく私の後ろで某氏もじっとされていたが
やがて某氏が「さようなら。ありがとう」と言って
先に腰をあげた。


私はしばらく一人で前だけ向いて
座っていた。


何分かして、私はやっぱりイヤで、
立ち上がって後を追った。


某氏の姿は見えなくて、
もうとっくに駐車場に戻っていなくなってしまっているかもと思って
思わず走った。


走って走って、某氏の後ろ姿がみえた。


安心した。


相変わらずゆっくり堂々としたペースで
一歩一歩、しっかりと地面を踏みしめるように歩いている某氏。


おそらく、せわしのないヒールのこつこつちょこちょこした音が
うっすらとだけどあたりに響いていたと思う。


それでも、某氏は後ろを振り返ることもせず、
ゆっくり歩く。


私も、なぜか追いつくまで声をかけたらいけない気がして
必死に小走りする。(走る体力がきれてしまったのだ)



駐車場につき、ドアをあけ、階段を下りていくというところに某氏がたどりついたとき
おもわず声をあげた。


「待って」


某氏は、そこで私の姿を見た。ような気がする。

「待ってください」


はあはあぜいぜいしながら
某氏に追いつき
それでもはあはあぜいぜいして言葉が出ない。


某氏は、少し笑っておっしゃった。


「なにも、走らなくてもいいだろう」


そのときの某氏の雰囲気が
私はとても好きだと感じた。


「自分がみっともないと思わないか?
ゲームを自分から放棄しておいて
やっぱり続けたいなんてことを乞うなんて」


「確かにみっともないかもしれません。
それでも後悔するのがイヤだったから。。。」


なんてちょっとセンチメンタルにひたってみたりして。

でも、ほんとに某氏のあのフッとした笑顔には
クラクラっとしてしまった。

たくさん蜂の一刺しを持っている某氏に
しびれてしびれて、もう大変だった。


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私は、臆病でとても一人では何事も為すことができない。

いつも誰かを追うことで、迷いがなくなり
不安がなくなることで、安心する。


「その人がいれば大丈夫」という気持ちが
ものすごく強い。


妄信的だったりするので
極端な話、その人が言うこと以外は
どうでもいいとさえ思えるぶん、
本当に図太い。