泣き虫ひろっちゃんの宇宙子供会議②

      

 

 

                          作・絵 すが きょうこ

飛行機は一体、どこにいっちゃったんだろう?
そんな事を思っていたらいつの間にか眠ってしまったようです。
何だか話し声がして目を覚ますと薄暗いベッドの横に影が見えました。
えっ?お母さん?
いや違うな、よく見ると子供みたい。
お姉ちゃんかな?いや違う。しか3人いる。

「誰?誰なの?」あくびをしながら思いました。
「僕はねサイリ―ン、空の子だよ、ボ―ルを返しにきたんだよ」

それを聞いたひろっちゃんは
なんだあ『夢なんだ』と寝返りをうちました。

てっきり夢をみていると思ったひろっちゃんでしたが

「だからね、ボ―ルを返しに来たんだよ」頭の中で確かに響いた

その声で、驚いて飛び起きました。
ベッドの横には、なんと!何人かの子供のような人影が。

「え〜!何?誰‼誰なの?おかあぁさ―ん」
叫んだつもりが、あまりにビックリして、「ヒッ!ヒッ!」としか声が出ません。
逃げるように座ったまま壁に背中を押しあてて、布団を抱きしめました。
ドキドキッと早い心臓の音がします。
そんなひろっちゃんの様子を、首をかしげて見ている三人の影は、まるでキャラクタ―のぬいぐるみのようでした。やがて、ちっとも怖そうでないことにちょっと安心しだしました。


ゆっくり息を吸い込むと勇気を出して聞きました。

「あ、あの、君達はオバケなのか?」
「あはっ、オバケって何だ?」
一番大きな子供が笑いながら聞きました。
「何って。そ、そりゃあ人間じゃあない人だよ」
すると三人は顔を見合わせ「そういうことなら、オバケなのかな、うん!」と、今度は他の子供が言いました。
(それじゃあ僕、今、生きたオバケと話してるのか?これは駄目だ!もう駄目だ。お父さんやお母さんの所に行かなきゃあ)
ベッドの上に立ち上がり、降りる場所を探しましたが3人はきょとんとしたまま動きません。
そして「君のボ―ルを返しに来ただけだよ」
他の子も言いました。「時計もね」
「マサノ、飛行機返す」
それぞれが、手に持っていたのは、ひろっちゃんが無くしたり落としたり、埋めた物でした。

「えっ?あれ?それ、どこで見つけたの?」

無くしてしまったと思っていた、大事な物を見せられたので、怖さも忘れて聞いていました。
「見つけたっていうか、受け止めちゃったんだけど」ボ―ルを持った子が言いました。
「ごめんね、下に投げ返そうと思ったんだけど何故だかちょっと、持っていたくなって」
言いながらひろっちゃんの手に渡しました。
「じゃあ、君あの木の上にいたの?」

ボ―ルを受け取りながら聞くと

「木の上?う―ん、まあその辺りだね」と笑いました。
「あの、さ、よかったら灯りをつけてもいい?」
ひろっちゃんは恐る恐る聞きました。
(そうだ、もしかしたら明るくなったら消えていなくなるかもしれない。オバケなんだから。)
すると「ん?なんでだ?」と一人が聞きました。
「それは、あの、君たちがよく見えないから」
「ふ―ん、そうなんだ、どっちでもいいよ」と今度は他の子が言いました。
慌てて枕元のスイッチをつけると、明るくなっても消えなかった3人の様子がよく見えました。


ボ―ルを返してくれた子の顔は、大きくて四角くて角は丸みがありました。きれいな青空のような色でちょっと透き通っているようにも見えます。
「あの、えっと、君がボ―ルを受け取ってくれたんだね、ありがとう」と小さな声で言いました。
すると「うふっ、サイリ―ンだよ。今は空の子だよ」と、にっこり笑いました。
その隣から、少しサビた懐中時計を差し出したのは白くて大きな麦わら帽子を被った顔の緑っぽい子でした。

「僕は水の子のト―マスだよ。時計を返しにきたの。驚かせて、悲しませちゃって。それに、少しサビちゃって、ごめんね」
「ううん、海に持って行って落としたのは僕なんだから。拾ってくれてありがとう。これ誕生日にお父さんがくれた大切な時計だったんだ」
(だけど、空の子って何だ?水の子って一体何だ?透きとおっているし、こんなに可愛くても、やっぱりオバケなんだ)
そんな、ひろっちゃんの心の声が聞こえたかのように、水の子ト―マスの帽子の周りから、ブクブクと泡が湧き出て弾けたと同時に、「きゃははは」とかん高い声で笑い出しました。


「あは、不思議かい?地球には君達人間だけじゃなくて、たくさんの仲間がいるんだよ」
サイリ—ンはまるで5年生くらいのお兄さんのように言いました。
「ここにいるマグマと土の子 マサノもそうさ」
一番小さくて、赤とオレンジのまるで炎のような頭の子は、とっても大きな目でひろっちゃんを見つめて、羽の折れた飛行機をベッドの上に置いて言いました。

「マサノ ごめんなさい」
顔の半分くらいもある大きな目からは、今にも涙がこぼれそうで、慌てたひろっちゃんは「いいんだよ。ほら、羽が壊れてるでしょ。
もう飛ばないんだ。だから、埋めたんだよ」と
マサノが泣きださないように優しく言いました。
話しているうちに何だか、すっかり怖くなくなったひろっちゃんは、もう一度サイリ―ンの四角くて青い顔をまじまじと見つめました。
実は、サイリ―ンは、虹や夕焼け空、夜の星空など自由に顔の色を変えられるのです 。
でも今日はとびきりの青空の色で来たのが、ちょっと自慢でした。
(きっと、すごく綺麗な青空の色だねって褒めてくれようとしているんだな)と思いました。
「あの、君ってさ、何だかジェル洗剤に似てるね」
サイリ―ンはひろっちゃんのその意外な言葉に「えっ?えええっ?」と聞き返しました。
「ほら、洗濯機に入れるジェル洗剤だよ」
サイリ―ンは自分を真っ直ぐに見て言うひろっちゃんに、さり気なく「そうかい、そうかな?そんなに似てるのかな?」とだけ答えました。
そして(おしゃれしてきたのに洗剤だなんて。他の色で来れば良かったかな?)と思いました。
「うん似てるさ。知らないの?見せてあげようか?」と言うと「マサノ、見たい見たい」と言うのでそっと取りに行き「ね、ほら、形も色までそっくりだろ?」とみんなに見せました。

「きゃははは。ホントだ!サイリ―ンのミニチュアみたいだ!」大笑いのト―マスの帽子の上は、シャボン玉のような泡で一杯になりました。
サイリ―ンは「ねえ、このジェル洗剤って、青色だけなのか?」と聞きました。
「ううん、色んな色があるよ」それを聞くと
「そっか、そうなんだ」と下を向きました。
(じゃあ、何色で来ても駄目だったのか)
「あっ、ごめんよ、サイリ―ン、洗剤に似ているの嫌だった?僕お母さんのお手伝いして洗濯機に何度も入れていたから思い出しちゃったんだ」
「ううん、いいんだよ。大丈夫。形や色の似ている物なんていくらでもあるからね。でもホントに似てるね」そう言って笑ったので、みんなももう一度笑い出しました。
でも、ひろっちゃんは、ちょっと心配でした。
こんなに大声で話したり笑ったりしてお母さん達に聞こえないかな?夜遅く子供達が遊んでるなんてきっと叱られる。
しかも、生きたオバケと。

その時、「どうしたの?眠れないの?」
急にドアが開き、お母さんが入ってきました。
                              つづく