登場人物
恵子(けい)…まさるの妻 30代。
優(まさる)…俳優志望。けいの夫。40代。本業の無い時は浅草にある甘味処「みたらしや 甘露-かんろ-」でバイトしてる。
〜次の日の深夜、まさるの家。まさる頭にタオルを巻いて、コーヒー、チョコレート、ナッツなどを置いてとにかく何かを書こうとしているが、眠気が勝っている。コックリコックリしている。ビクッとおきて時計を見る〜
まさる「な…2:00か。」
ー桜が泣く、けいが隣りの部屋から桜を抱っこして出てくるー
けい「頑張ってるね。まだやるの?」
まさる「ごめん。起こした?」
けい「うん。隙間から明かりが漏れてて桜、起きちゃった。」
ーまさる、リビングの電気を消す。常夜灯になるー
けい「……暗すぎじゃない?」
まさる「いや、なんか…書けないから明るくても…暗くしていい。」
けい「ちゃんと寝てる?」
まさる「大丈夫だよ。なんか、納得するまで頑張ってちゃんと寝るよ。」
けい「ふーん。好きな事やってると、眠らなくても平気なのかな…」
まさる「…やっぱ寝ようかな…全然頭が働かない…」
けい「そうでしょ?朝早く起きてやったら?」
まさる「…なんか、書きたいネタはたくさんあるんだけど、どう纏めて行くかが決まらない。」
けい「うちのリビングと一緒?」
まさる「え?なんで?」
けい「とっ散らかってる。」
まさる「おっ!…うまい事よく寝起きに思いつくなぁ…って、けいちゃんちょっと違うかなぁ。ただ整理すれば良いとかじゃなくて、物事って起こるべくして起こるでしょ?凄く自然に。それを物語で再現していくのが難しいんだよ。」
けい「ふーん。(よくわかっていない)」
まさる「…うん…そうそう…あぁ、これが、産みの苦しみってやつなのかな…」
けい「うん!産みの苦しみならわかる。そう!辛いけど幸せな感覚。辛いし、苦しいけど、お腹の中にもう一つの命がぴこぴこ動いていて、ママ頑張って!って応援してもらってる感覚。」
まさる「そ、そう…」
けい「誰かに頼りたいけど、私が一番しっかりしなくちゃって言う責任感ていうの?うん…それは今になって思う事だけどとにかくその時は、私は母ちゃんになるんだって。なんか、気持ちとか、体調に逆らわず身を任せようって。」
まさる「そ、そうだったんだ…」
けい「あのさ、何が楽しくて今作品作ってるの?」
まさる「えっ?何が?何が楽しくてって?それはうん…今は、桜が大きくなって俺の芝居みたいって言ってくれる時のことを考えてる。」
けい「素敵
」
まさる「俺もそろそろ父ちゃんにならなきゃな。」
けい「まーくんはもう、父ちゃんだぞっ!」
ーけい。まさるの背中をバシッ!と張る。桜、音に驚いて「ふにゃっ」と言うー
まさる「痛っっ…ちょ、いきなり何…あ!そうだ。俺の父ちゃんの事書いてみようかな…」
ーまさる、桜の様子を見に行くー
けい「まさるの?お父さん…もう亡くなって何年になるの?」
まさる「あぁ、20年…かな…なんか、そんなに経つのか…」
けい「どんなお父さんだったの?」
まさる「知らない事だらけの父さんだった…死んでから色んな人にお前の父さんはこんな人だったって教えてもらって、え?そんな人だったの?って事だらけで…」
けい「一緒に暮らしてたんでしょ?」
まさる「中学生までね。その後は高校下宿して通ったから。でそのまま大学、東京出てきたし。」
けい「で亡くなったのがまーくんが何歳の時?」
まさる「25,6歳?53で。」
けい「若いね…」
まさる「うん。今の俺で考えるとあと10年くらいで死んじゃったんだな。」
けい「見てみたい…どんなお父さんだったか…」
まさる「うん。ちょっと書いてみるね」
けい「まーくんのお父さん会えるの楽しみにしてる…」
まさる「おーよ!よし、そうと決まれば…」
けい「書くの?」
まさる「…寝る!」