2023年8月、

北海道で毎年開催されているロックフェス、

ライジングサンロックフェスへ行きました。

 

一番のお目当ては、

大好きなロックバンド、

UNISON SQUAER GARDEN。

たたでさえ年に一回の北海道、

美味いビールと広大なロケーションの中、

ブチあがったテンションと期待値を

悠々と越えてくるユニゾンのステージ。

 

セットリストも最高で、

こんなん、このまま行ったら、

過去一のユニゾンになってまう!!

どーしよう、やばいやばいと謎に焦っていると、

 

ボーカルの斎藤さんが「ラストっ!」って、

言ったか言わないかは忘れましたが、

最後の曲は、

 

『春が来てぼくら』でした。

 

北海道とは言えクソ熱い真夏、

春って気分じゃねーや!って思いましたし、

前の曲までで火照りまくった心身は、

ユニゾンの曲の中では比較的おだやかな曲調の

『春が来てぼくら』のイントロを聴いた瞬間、

正直、少し落ち着いてしまいました。

 

ただ、ステージの上のユニゾンは、

というか、田淵は、

(田淵はユニゾンのベースとコーラスで、

 大体の曲の作詞作曲を務めてます。)

めっちゃ幸せそうにこの曲を演るんですよね。

 

…で、ステージが終わった後友人に、

「俺たちは、いつ、田淵の

 『春が来てぼくら』

 好きっぷりに追いつけるだろうね笑」

 

なんて話をしたのを覚えています。

 

 

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昨日と今日、

ひとりで東京へ遊びに行ってたんです。

 

2/4(日)に、ユニゾンのライブがあったのと、

それ以外の予定が特になかったので、

東京へ一泊して、下北でカレー食って、

夜は気になってたサウナ北欧なんか行って、

ひとりでのびのび満喫しようかなーと思いまして。

 

自分の住んでいる土地から

東京までは鈍行で2時間くらい。

読みかけの本があったので、

それを読み終えるのに丁度良いな、

って思ったのも理由の一つでした。

 

その本っていうのが

『暇と退屈の倫理学』って本でして、

歳柄、友人も次々と結婚し、

もちろん彼女もおらず、

これまでの自分の趣味にも

なんとなく限界を感じて、

とにかく「暇」で「退屈」だった時、

ちょーどこの本の存在を知り、

ぴったりだなと思って読み始めました。

 

普段ほとんど読書をしない自分ですが、

ロジカルに、時にダイナミックな視点で、

「暇」と「退屈」を考察する内容が面白く、

これまで自分が、

他の様々な好きな作品から得てきた、

感動とひらめきの欠片みたいなものと結びつき、

ぐんぐんと読み進める事ができました。

そして昨日。

東京へ向かう御殿場線の中で読み終えたのでした。

 

一番心に残ったのは、

 

「贅沢を取り戻すとは、

 気晴らしを存分に享受する事であり、

 それはつまり、

 人間であることを楽しむことである。」

 

という一節です。

 

ここだけだと、なんのこっちゃ?か、

もしくはそれこそ、

ありふれた気晴らしの言葉だなぁ、

って、思ってしまうかもしれないんですが、

本を通して読んだ後だと、

スッと入ってくるんですぅ!

おもしろいから是非、

暇で退屈な人は読んでみてください。

 

『暇と退屈の倫理学』を読み終わった後、

冬晴れの温い陽ざしと

まだまだ冷たい風を受けながら

小田急線のホームに立つと、

なんとも清々しい気持ちになりました。

 

ここ数年ずっと悩んでいた、

「何者にもなれないコンプレックス」と、

「なれ!と、急かしてきたのは誰なのか」

「自分の、愛して止まない作品達こそ、

 その犯人なのではないか?」ってモヤモヤに、

まだぼんやりですけど、なんとなく、

ひとつ答えが出た気がしてスッキリしました。

 

気晴らしは気晴らし、

楽しいをちゃんと無邪気に吸い込んで、

胸を張ったぼくと列車が走ってきゃ良いじゃん。

(Ⓒ真夜中特急ノスタル号)と。

 

 

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下北沢に着き、

学生の頃からの付き合いの友人と合流しました。

 

友人は東京付近に住んでいるので、

自分が東京へ赴くときには声をかけ、

色々な用事に付き合ってもらっています。

 

前日に声をかけても時間を作ってくれたり、

そこまで深い興味が無いものでも付き合ってくれたり、

フットワークの軽さもありがたいのですが、

何より、好きなものを自分でちゃんと選んで、

自分はこれが好きなんだ!と、

力強く、楽しそうに言ってくれる、

数少ない、魅力的で大切な友人のひとりです。

 

以下、カレー屋を並んでいる最中に、

友人がしてくれた話なのですが。

 

こないだ職場に、

知り合いが子どもを連れてきた。

 

子どもはウルトラマンが好きだと言うので、

わたしの好きなレッドキングのソフビ人形

(二体持ってるからね!と

 誇らしげだった、知らんがな)

で、あやそうと思ったら、

子どもはあくまで現行シリーズが好きで、

そんな昔の怪獣は知らないらしく、ぽかん。

 

それならばと、

「ベムスターだぞ!」「ドドンゴだぞ!」

と、怪獣の真似をしてみたもの、

案の定知られていなくて、ぽかん。

 

すると年季の入った特撮好きの同僚が、

「ちょっと友人さん!

 二人で動かす怪獣ばかり真似して!」

(着ぐるみの中に二人の人間が入って

 動かしていたらしい、知らんがな)

とツッコミ、職場は大ウケ。

ケラケラ笑う大人たちを見て、

子どもは来た時よりも縮こまっていた。

 

…以上なんですが。

 

下北沢という土地で、スパイスカレーという、

「サブカル」な食事の為に作られた行列で、

「サブカル」なこの話を聞いて、

なんとも自分は、不思議と良い気分になりました。

 

いや、ダメな「サブカル」だなぁ、と思ったし、

しっかりと指摘したんですけど、

(子どもめっちゃかわいそうだし…)

反面、じわじわと良い気分でした。

 

自分の中に沢山作った引き出しを上手に開けて、

その中に大切にしまったおもちゃをサッと並べて、

じゃじゃーん!と、自分の脳内宇宙を再現できる、

そしてそれを、いいねとか、おもしろいねとか、

認めてくれる環境って本当に素敵だなと思ったし、

(子どもはぱかんとしてたけど。)

 

それこそ、御殿場線の中でやっと整理がついた

「何者かになること」って、こうだよな。と。

(子どもは縮こまってたけど。)

 

下北沢、スパイスカレー、

サブカルチャー、特撮、古着。。。

映画も音楽も本も全部そうですけど、

記号として着飾って

ステータスにするんじゃなくて、

…いや、始めはもしかしたら

そうでも良いのかもしれないですけど、

それがもっと、身に染みるというか、

身から染み出すくらい身に着くと、

それが「何者かになる」って事なんかな、

なんて思ってしまいました。

 

気晴らしを存分に享受してきた、

ダメなサブカル大人たちが愛おしく感じたんです。

(愛を込めて、ダメと言わせてください。)

 

 

そのあと、友人に連れられて、

『B&B』っていう本屋さんに行きました。

 

本屋さんなのにジャンプ新刊コーナーが無い!

呪術廻戦が平積みされてない!

と、身構えたんですが、

 

それこそ誰かの体内に入り込んだような店で、

特に案内は無くとも、ここは旅行記ゾーン、

ここは食ゾーン、ここは哲学ゾーン、

…みたいな感じで、

色んな本たちが群れを成していて楽しかったです。

 

その中でぼくは、吉本ばななさんの、

『下北沢について』という本を買いました。

 

下北沢の下北沢っぽい本屋で

下北沢の本を買う。っていう、

あくまで「ネタ」のつもりだったんですが。

 

 

日が明けて翌日、

ライブまでの時間合わせにと入った喫茶で、

特に期待せず読みだしたんですけど、

めちゃくちゃ良い本でした。

 

吉本ばななさんが下北沢に引っ越し、

そこで子育てをしながら見た風景や、

様々な形で接した人々の事を、

エッセイ的に書き留めた内容なんですが、

 

「あの日確かにそこにいた人たちの面影を

 ほんの少しだけでも残すことができるのは

 私にとってこの仕事をしている大きな喜びのひとつなのだ。」

 

っていう一文がありまして。

 

世間的に言う「取るに足りない」何かに、

誰かがすごく心を動かされたり、

それが何故か思い出に残ったり、

それを大事に切り取って残していくような文章に、

めちゃくちゃ、郷愁と同時に、

自分の人生への希望を感じさせてくれました。

 

良い話と、良い時間と、

良い本との出会いをありがとうね。

また東京行ったら付き合ってね、友人。

 

 

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UNISON SQUARE GARDENのライブ、

「東京ガーデンシアター」とかいう、

モノレールに乗らねば行けない

「有明テニスの森」が最寄り駅の会場でした。

 

全体的に「…どこ??」って感じなんですが、

まぁぼちぼち向かおうかと、

喫茶を出てゆりかもめに乗り込み、

ユニゾン聴こ〜と、イヤホンを耳にはめました。

 

30分くらいの車中だったので、

フルアルバムを聴ききれる時間でもないなと。

 

吉本ばななさんの本の影響もあり、

「町」に思いを馳せていたので、

『弥生町ロンリープラネット』を再生しました。

 

「今日の晩御飯とか 明日の予定とか

 話題はそんなないから 大事にしなくちゃ」

 

って歌詞が大好きで、

読み終えた『暇と退屈の倫理学』や、

友人のダメなサブカル連中の話や、

(愛が込められているからダメを許して…)

さっき読んでた『下北沢について』のせいか、

これまでよりすごく「日常」みたいなものが、

輝いて、というと大げさなんだけど、

大事に思えていたので、ちょっともう、

この時点でジーンときていたんですが、

 

この曲の最後の一節、

 

「そしてぼくらの春が来る」

 

から1秒も経たずに流れてくる

 

『春が来てぼくら』の、

イントロを聴いた瞬間に、

少しだけ、追いついた気がしたんです。

 

幸せそうに、大切そうに、愛しそうに、

『春が来てぼくら』を演奏する田淵智也に。

 

「それぞれの理由を胸にぼくらは

 何度目かの木漏れ日の中で

 間違ってないはずの未来へ向かう

 

 その片道切符が揺れたのは

 追い風のせいなんだけどさ

 ちゃんとこの足が選んだ答えだから

 見守ってて」

 

聴き終わった時には、

モノレールの中なのに、

震えるくらい泣いてしまって、

マスクもぐしゃしゃになってしまって、

 

大好きなロックバンドの、

大好きな田淵智也の大好きが、

ちょっとでもわかったような気がして、

それが本当に嬉しかったし、

 

本当に何気ない選択だったけど、

読み慣れてない本を手に取った事とか、

週末東京へ出かけてみようと思った事とか、

友人に声をかけてみようと思った事とか、

 

自分の選んだ少しずつの、

ちょっとした一歩がここに繋がってたと思うと、

「取るに足りない」自分の人生が、

すごく、すごく大切なものに思えて、

 

そう思える時のために田淵がこの曲を、

作って、置いておいてくれたことや、

それに気付けた自分が誇らしくなって。

 

別に立派な何かを成し遂げたわけでもなく、

すごく継続的な努力をしたこともないですし、

そうするに越したことは無いと思うんですけど、

そうじゃなくてもこんなに素晴らしいんだ人生。

 

去年の夏の俺。

わりと早く追いついたっぽいぞ。

でも驕らず、ちゃんと楽しく、

人間であることを、引き続き楽しめよ。

 

 

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って、この二日間の出来事が連なって、

すごく良い、経験?なんて言うんだろう、

気付き…?なんか違うな。

まぁ、良い二日間だったんで、書いておこう!

と、思い立って、書きました。

 

 

ちなみに、以下、

今日のユニゾンのライブのネタバレなんですが、

 

 

 

 

 

 

 

1曲目(厳密には2曲目か)

『春が来てぼくら』のピアノアレンジだったじゃん!!

 

やっぱ好きなんだな田淵ぃ〜!!

うぇ〜〜〜い!俺も大好き!!!

 

 

おわり。