今日からの三日間はキリスト教にとって一番大切な時期です。イエスが最後の晩餐を弟子たちととった後、逮捕され、十字架につけられ、死んで、三日目に復活したことを記念する時期だからです。
 各教区の司教座聖堂では、聖木曜日の午前中に司教を中心として聖香油ミサが行われます。教区内の全司祭はこのミサを共に行い、司祭としての約束を更新すると共に、司教は典礼で使う油を祝福します。
 聖香油ミサの儀式書には次の様に書かれています。
 
聖香油ミサの儀式書の緒言 
1  司教は民を牧する大祭司であって、信者のうちにあるキリストのいのちは、ある意味で司教に由来し依存する(典礼憲章42参照)。
 司教が司教区内の各地域から集まった司祭とともに共同司式して、香油の聖別とその他の油の祝福を行う聖香油のミサは、司教の祭司職の充満をよく現すものの一つであり、司教と司祭の深い結びを示すしるしである。新しい受洗者は司教が聖別した香油を塗られ、また堅信のしるしを受ける。洗礼志願者は洗礼志願者の油によって準備を整えられる。病苦にある病人は病者の油によって力づけられるのである。
 
2  キリスト教の典礼は王・祭司・預言者に聖別の油を注いだ旧約の慣習を取り入れたが、それはかれらが、神から油を注がれた者を意味するキリストのかたどりであったからである。
 同様に聖香油は、洗礼によってキリストの過越の神秘に結ばれてキリストとともに死に、ともに葬られ、ともに復活したキリスト信者が(典礼憲章6)、キリストの王的・預言者的祭司職にあずかっていること、また堅信の秘跡によって与えられる聖霊の霊的塗油を受けることを示す。
 洗礼志願者の油によって、悪霊の力が押えられ、受洗者は生命の泉で新たに生まれる前に、悪霊と罪を放棄することができるように強められる。
 病者の油の使用については聖ヤコブが証言しているが(ヤコブ5・14)、病者の油は病人が力強く病苦に耐えてこれと戦うことができるよう、また罪のゆるしを受けることができるよう、心とからだの病いに抵抗する力を与える。
 
祝福式
14  聖香油のミサは、司教を囲む司祭の一致を表すべきものであるから、いつも共同司式で行われる。すべての司祭はできるだけこれに参加して司教とともにミサを共同司式し、その証人であり、また聖香油の役務の協力者でもある司祭の中に、司教区の諸地域からの司祭が参加することが望ましい。説教の中で、司教は、司祭がその務めに誠実であるようにさとし、司祭として約束したことを公に更新するようにすすめる。
 
典礼で使う油とその歴史的由来については新カトリック大事典に次の様な記述があります。
 
【典礼における塗油の歴史とその意味】
 聖書における伝統を受け継いで、教会の典礼は古代から、入信の際、神の子とする霊である聖霊を受けたことを表す「しるし」として、また水と霊による洗礼として水のシンボルを補って、オリーブ油による塗油を行っていた([ラ]chrismatio)。さらに心と体からなる人間全体に救いをもたらし、いのちを豊かにするシンボルとして、これを阻む罪をゆるし、病を癒やし、霊の働きを強め照らして、識別力と決断力を与えるなどの聖霊の働きを表す「しるし」として、塗油が行われるようになった。同時に、神の支配と聖霊の働きを受け入れることを阻む悪の力に抵抗するため、聖霊の力と救いを祈る塗油も行われるようになった。3世紀、ローマの『ヒッポリュトスの使徒伝承』は、司教の叙階に続く奉献文の結びの栄唱の後に、油の奉納と聖別の祈りをあげている。この祈りの内容からみると、この油は人を聖化してキリストの王職、祭司職、預言職にあずからせる油であり、味わうこともでき、病者にも用いられる油であった。洗礼にあたっては、「感謝の油」と「悪霊追放の油」を区別してあげている。これが後に、入信に用いる「聖香油」(sanctum chrisma、SCと略す)と「救いの油」(oleum salutis, OS)になった。後者は通常「洗礼志願者の油」(oleum catechumenorum)と呼ばれている。さらに病者の塗油に用いる油が前者から分かれて「病者の油」(oleum infirmorum、0I)となった。これらの油を聖別ないしは祝福する典礼は、最初は復活徹夜祭に行われたが、5世紀には聖木曜日に行われるようになった。聖香油の聖別には、香料バルサムを混ぜ、4世紀から司教が司式するようになったが、他の油は司祭が祝福した。東方諸典礼では、聖香油は今日でも総主教が聖別している。ローマ典礼では10世紀以来、洗礼志願者の油と病者の油の祝福も、聖香油とともに司教の聖香油のミサで行われるようになった。(新カトリック大事典より)
よい三日間をお過ごしください。