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Gerrit Van Honthorst (1590-1656)

ヨセフの歌

 聖マリア女学院保護者会主催の講演会の準備のためにヨセフについて調べていました。新約聖書にはイエスの幼年期まででその記述は途絶えてしまうヨセフですが、聖母マリアに優るとも劣らぬ信仰の人だと思いました。
 ルカ福音書では、聖母マリアに天使ガブリエルが直接出現して、受胎告知をします。また、その意味を理解することのできないマリアの問いかけに丁寧に答えています。その一方、マタイ福音書では、許嫁のマリアの妊娠を知ったヨセフがひそかに別れようと欠いたとき主の天使が夢でヨセフに現れて神の子の養父となるように告げるのです。
 私たちがクリスマスのたびに飾る馬小屋の中では目立つイエスとマリア、或いは羊飼い、三博士に対して、ヨセフはどことなく所在なげな表情をしていますが、ヨセフなしにはイエスは生まれることも、育つこともできなかったのです。
ヨセフの人生
 ヨセフの人生も、人間の尺度で言えば理不尽なものだった。ある日突然祭司から呼び出されて選ばれ、マリアと結婚されられ、そのマリアは知らぬ間に聖霊の子を宿し、ヨセフはつつましい暮らしの中でその聖母子をひたすら養って生きた。子を守るために亡命の生活さえ余儀なくさせられた。聖母子の周りには不思議なことや不可解なことが次々と起こったが、彼はそれをすべてそのまま受け入れた。
 そんなヨセフのイメージは、黙々と、実直に、時として不器用に、温かく、それでいて、「神の子」の父となるという大きな役割を果たした人というものだ。人生の意味や有用性やアイデンティティの希求や自己実現などという考え方と対極にある生き方をして、それでも一つの役割を受け入れ、たとえその意味を頭で納得しなくとも、務めをを果たした。人が「何者かになる」とか「何者かであろうとする」ことには、なにかしら「権力性」がついてまわる。ヨセフの無名性は、あらゆる権力性から解放されている。
中略
「聖ヨセフ」に思いをかける人の心は、深い。それは、また、「父であること」や「父となること」への省察でもあり、等しく幼子としてこの世に生まれて来るすべての人間にとっての「世界との出会い」方をめぐる、永遠のテーマでもあるのだ。
                        竹下節子「『弱い父』ヨセフ」 講談社選書メチエ2007年8月

聖母マリアに関する歌は大変多いですが、ヨセフの歌、ヨセフへの歌はほとんどありません。色々インターネットで調べた結果、マイケル・カードという人がヨセフの歌を作っていることが分かりました。これは映画の中で用いられたようです。
ユーチューブでお聴き頂けますのでご紹介します。英語の歌詞ですが、日本語訳を付けて見ました。
JOSEPH'S SONG

How could it be
This baby in my arms
Sleeping now so peacefully
The Son of God the angel said
How could it be? 

Lord, I know he's not my own
Not of my flesh, not of my bones
Still Father let this baby be
The son of my love

Father show me where I fit into
This plan of yours
How can a man be father to the Son of God? 
Lord, for all my life I've been a simple carpenter
How can I raise a king? 
How can I raise a king? 

He looks so small
His face and hands so fair
And when he cries the sun just seems to
disappear
But when he laughs
It shines again
How could it be? 
ヨセフの歌

どうしてそんなことがありえるのか
私の腕の中のこの赤ちゃん
今は安らかに眠っているが
神の子だと天使はいう
どうしてそんなことがありえるのか

主よ、彼は私の子ではないと分かっています
私の肉でなく、私の骨でもありません
でも、父よこの赤ちゃんを
私の愛の息子としてください

父よ、どうか私にお見せ下さい
あなたのこのご計画の中にいるわたしを
どうして人が神の子の父となることができるのか 
主よ、わたしは一生、ただの大工です
どうして王を育てることができるのか
どうして王を育てることができるのか

この子はとても小さく見える
その顔と手はとても美しい
この子が泣けば太陽が
消えるようだ
でも、この子が笑えば
また輝き出す
どうしてそんなことがありえるのか