
前回の「命の危険」に反応された読者には迷惑をかけてしまってごめんなさい。私は大丈夫です。ただ、事実ではありますので詳細を知りたい方はメールをいただければお答えします。
今回は先日まで金欠だったので、所蔵品を整理した話。
恥ずかしながら蔵書とて稀覯本などあるわけなく、小生の目利きは鉄道模型だけ。お金持ちの方ならものの数日でこの程度のコレクションは可能だろうが、小生は幼少期のアルバイトからはじめて約三十年かかっている。
昨今は中古価格の変動が激しいうえ、売りたくない情はいかんともしがたいが、背に腹は代えられぬ。
一台一台眺めているうちに思い出もよみがえる。
多くの輸出向けブラスモデルで名作をものしてきた祖父江欣平氏の訃報に接したのはそんな時だ。あわててMaxGray-KTMのブラスロコを売却予定リストから外した。量産品であるため祖父江氏自らの手になるものかは確かめようがないが、氏の設計思想が反映されているのは間違いない。所有しているのは、SPのSP-1とD&RGWのチャレンジゃー。どちらも昨今のスーパーディテール機にはおよばないが、彫りの深いパーツや高精度の台枠で重量感を遺憾なく発揮している(何より現役で動く!)。後のトビーやフジヤマのPFMクラウンモデルも、GEMのルビーも、Balboaのマスターも1950~60年代の祖父江氏の手になるモデルが嚆矢なのだと言えよう。私見だが、模型に「品格」というものを初めて感じとったのはこれら車齢40年を越えようかという模型機関車群だった。一方で最近発売されたインターマウンテンのAC-12はディテールといい、各所のギミックといい、近年では最先端技術を集めたHO模型蒸気機関車なのだろうが、私は天賞堂の1974年製の方が好きだ。
模型製造技術も日進月歩で、昨今の中国製HOモデルは一時期のブラスやドイツ製品を凌駕している。「眼前5センチに近づけて眺めるマニアを想定している」とは某模型メーカーの方の弁。しかし、ディテールを追い求めても、ハッチの開閉やナンバーボードを光らせたり、実物のドラフト音を出させ、DCC制御が可能でも、私はサウンドもDCCもないG&D鉄道で運転したい。
あのメルクリンでも、1980年代のスーパーディテールよりも、かつてダイキャストでつくられていた、細部をみるとリアリティに乏しかったDB01やSBBのクロコダイルの方が私は好きだ。大雑把で、細部がある程度省略されていても、実物を彷彿とさせるようなものをという作り手の基本的な想いが伝わってくるからだ。
て言うか、ぶっちゃけたはなしが、さわって遊びたいじゃないの!
玩具と模型の違い、そしてディテールの追求とは違った角度から、モデルの品格というものをもう一度考えようと思う。
SP SP-1 model;MaxGray-KTM in 1963