第15章
どんな酷い言葉を投げつけられるより
無関心を装った冷たい拒絶に、透明な涙は流れるのです
ランチタイムが終わり、客足が途絶えて、暇になったママさんはカウンターに座りいつものように新聞を開いた。
「そういえば、午前中、竹下君、来てたわよ」
その後のママさんの何気ない言葉に、サコはドキリとした。
「何だかモゴモゴして冴えない顔してたから、サコちゃんが映画面白く無かったって言ってたわよ、もっと頑張りなさい、ってハッパかけておいたわ」
「えっ!?」
「ほら、言ってたじゃ無いの、全然面白く無かったって」
「あ、あれは……」
違うんです、と、続けることも出来なかった。冷水を浴びせられたというのは、このことを言うのか。
「あの子、好みじゃなかったんでしょ。違ったの? そしたらね、竹下君、これから忙しくなるからあまり来れないなんて言ってたわ」
平気な顔で言うママさんが憎らしかった。
映画は確かに面白いとは言えなかったが、どうして第三者のママさんが勝手に伝えてしまったのか。
会ったら直接言おうと思っていた『楽しかった』というコトバが宙に浮く。
ほんの少しのタイムラグで、すれ違ってしまった。
サコは茫然自失した。
気がつくと、少し冷静さを取り戻したサコは、ママさんが無関心を装いながら、新聞越しにジッとサコの様子を探っていたような気がしてならなくなった。
(ワザと? もしかして、ワザとそう言ったんじゃ?)
不意に疑惑が頭をもたげた。
ママさんはもしかして、これまでもずっと無関心な態度の影で、真摯にサコを観察していたのでは無いか?
(でも、どうして、それが竹下君に嘘を吹き込むことに行き着くの?)
ママさんは、鈍感なおせっかいで、竹下君をサコから遠ざけたのではなく、目的があってそうしたのかもと思えてきた。
ピポーピポー。
突然だった。
消防車とは違う、パトカーの音が急に大きくなって停まった。
パトカーはそのまま店の隣の駐車場に入り、その後から、救急車のサイレンも、近づいて来ていた。
「何かしら?」
ママさんが立ち上がっると同時に、店のドアが開いて、上の階のマンションに住む藤森さんの奥さんが飛び込んできた。
「大変、大変!」
「大変なのはわかっているわよ、何があったの?」
「私の上の階で、殺傷沙汰があったんですって、男の人が刺されたって」
藤森さんの奥さんは大きい目をぎょろぎょろさせて、興奮気味に答えた。
「上の階って言うと・・・」
ママさんは眼鏡越しに、少し目を細めた。
「警官が階段やエレベータの前に立ってて行けないんだけど、もしかすると、朝子さんかもよ」
わくわくした上擦った声に、黄昏の闇のように滲んだ声が覆いかぶさって来た。
「期待に応えられなくて、残念だけど、私じゃないわ」
朝子さんは、いつの間にか入ってきて、すぐそばに立っていた。
「あ、ごめんなさい、そんなつもりじゃ・・・」
藤森さんの奥さんは、アタフタしながら、言葉を濁した。
「フフっ、御覧なさいよ、主役はあの人よ」
すっと腕を上げて、朝子さんが青いガラスの向こうを指した。
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未必15回目です。
いろいろ回転回転していきます。
終わらせたいような、終わらせたくないような、そういうお話ですw
また台風が近づいて来てますね。
被害大きくならないといいなぁ~。
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