うつらうつらソファに座って本を読んでいたら、
夢を見た。


学生時代の遠い夢。

都心の狭いキャンパスの中でも、一番奥にある西校舎は、あまり授業が行われない建物で、普段は学生もあまり立ち寄らず、ひっそりと静まりかえっていて。


水曜日の二限目にある英語の授業がそこの校舎だったから。
授業が始まる前に、少し早めに校舎へ向かって、2階の突き当りの部屋、一番、奥にある階段に座ってお気に入りの詩集を読むのが好きだった。


一人で。

階段に腰かけて。


誰にも邪魔されずに。

時折、窓から差し込む太陽の日差しを背に浴びながら。



ちりばめられた言葉の断片を、そっと胸の中に刻みながら。




あの時、ふいに気配もなく近寄ってきて、「それ、銀色夏生の本でしょ?」と言って笑った君は、今頃どうしているんだろう? 本の背表紙もタイトルも見せていないのに、「なんで分かったの?」とビックリした私。



元気でいるかな?




「一生、一人で生きることに決めたんだ」なんて哀しいこと言わずに、
いい人がいたら、しっかりキャッチするのよ。




何があっても、握ったその手を離しちゃダメなのよ。