大人になると、四季の移り変わりに少しずつ鈍感になってくる感じがする。

子どもの頃は、近所の公園で、空き地で、小さな緑地で、頬を通り過ぎる風に、空の雲に、太陽の高さに、新しい季節の訪れを自然に感じていたような気がする。



遠い夏の日、家のそばに荒れた空き地にがあって、そこにポツンとたたずむ古い空き家を探検したこと。

背の高い雑草をかきわけながら、そっと息をしのばせて、もんしろ蝶をつかまえたこと。

深い緑のむせ返るような匂い。

太陽の日差しを浴びて立ち上がってくる草いきれ。


スタンドバイミーさながら、もしかしたらここに死体があるかも、とおっかなビックリ土を掘り返してみたり…。

古い家の鍵を見つけては、この鍵の家にはどんな人たちが住んでいたのだろう、と想像を膨らませたり…。



毎日が冒険で、新しい発見で、この夏休みがずっと永遠に続くんじゃないか、と気が遠くなりそうだったあの頃。




プールの監視員の目を盗んで、思いっきり飛び込んで背中に太陽をさんさんに浴びながら泳いだこと。

夏祭りで、夜空にパッと上がって散ってゆく花火に、なぜか一抹の悲しさを感じたこと。



夏の思い出は、たくさん。

夏の宝ものは、たくさん。



遠い夕暮れの空に家々の明かり。

山の向こうから、ひぐらし。



君にもう一度、会いたいな。