先日亡くなった、ハードSFの大御所JPホーガンによるタイムトラベル物です。


プロテウス・オペレーション (ハヤカワ文庫SF)

時は1974年、第2次世界大戦でナチスドイツが勝利を収め、枢軸国がアメリカを除いた世界をほぼ支配しているというパワレルワールド。勝ち目のない戦いを目前としていたアメリカで、プロテウス部隊という一隊がタイムマシンで1935年の過去に送り込まれ、ナチスの勝利という歴史を変えようとする、というお話です。


正直タイムトラベル物も、ナチスがWW2で勝利したIF物も数限りなくありますし、またかという感は否めませんでした。タイムパラドックスに対する回答としてもややありがちではありますが、原作が書かれた年を知ってびっくり。これ、日本でも復刻で、原版は87年に出ていたんですね。

また、若き日のアイザック・アシモフが本人の許諾を得てカメオ出演したり、アインシュタインが作中で書簡集の言葉や作中の架空の技術の基礎となる理論に関する考察を語ったりと、ホーガンのsense of wonderの面目躍如というところです。

ホーガンは古き良きSFの、「科学の発達で貧困や階級、差別問題などは解消され、争いはなくなり、人間は科学技術によって築かれた楽園を享受する」という非常にポジティブな人間観・科学観で知られています。現代のSFではそう言ったオプティミズムはもはや珍しいものになっていますし、読み手としてもつい「そんなうまくいくもんじゃない」とシニカルに見てしまいますが、せめて物語の中ではそういった明るい未来を見せてもらうのも素敵ですね。今回はそれに加え、古き良き時代のアメリカの香りも楽しめました。

ホーガンの冥福をお祈りします。