新型コロナウイルスに感染した細胞を検知して攻撃する免疫細胞「キラーT細胞」をヒトの胚性幹細胞(ES細胞)から世界で初めて作製したと、京都大や藤田医科大(愛知県豊明市)などの研究チームが30日、発表した。京大などは共同で特許を出願。抗がん剤治療で免疫不全状態となった重症の新型コロナ患者を対象として3年後に藤田医科大で臨床試験(治験)を進め、5年後の実用化を目指すという。
研究グループは、ゲノム編集技術により拒絶反応が出にくくしたES細胞を元にキラーT細胞を作製した上で、新型コロナウイルスが生み出すたんぱく質を検知する遺伝子を導入。新型コロナ由来のたんぱく質を発現させたヒトの肺細胞と一緒に培養したところ、12時間でほとんどを死滅させた。
今回開発したキラーT細胞は、「HLA(ヒト白血球抗原)」という白血球の型により、日本人の6割に使用可能。対応するタンパク質検知遺伝子のHLA型を増やすことで、9割以上をカバーできるという。
ただ、研究用でそのままでは患者に投与できないため、3年ほどかけて治験用の細胞を作製し、安全性と有効性を確認する方針。
新型コロナウイルス感染症治療用の細胞製剤をヒトES細胞(胚性幹細胞)から作ることに成功し、今月に特許出願した、と京都大医生物学研究所などの研究グループが発表した。重症化した患者への使用を想定し、早ければ5年後の実用化を見込んでいるとしている。
既存のコロナ治療薬には、ウイルスが体内のタンパク質に結合するのを阻害する抗体薬や、ウイルス増殖を防ぐ抗ウイルス薬がある。これに対し、今回の細胞製剤はウイルスに感染した細胞を殺傷する仕組みで、静脈に点滴投与する。特に免疫力の低下でコロナが重症化したがん患者らに効果が見込め、ウイルス株の変異にも強いという。
同研究所などは、ヒトES細胞からコロナ治療用の免疫細胞「キラーT細胞」を作製することに成功した。藤田医科大で血液がんの患者らを対象に3年後に臨床試験を行い、2029年度の実用化を目指す。
今回の作製法は鳥インフルエンザや重症急性呼吸器症候群(SARS)など他の急性ウイルス感染症にも応用可能という。同研究所の河本宏所長は「未知のウイルスの世界的大流行(パンデミック)に備え、まずコロナでウイルスに対するキラーT細胞の有効性を示したい」としている。
新型コロナウイルスに感染した細胞を標的に攻撃する免疫細胞を、さまざまな細胞に分化する能力を持つ人のES細胞(胚性幹細胞)から作ることに成功したと、京都大の河本宏教授(免疫学)らのチームが発表した。がん治療などで免疫力が著しく低下した新型コロナの患者に投与すれば、治療に役立つ可能性があるという。2027年度をめどに臨床試験を始め、29年度の実用化を目指す。
免疫細胞は「キラーT細胞」。ウイルスに感染した細胞やがん細胞を殺す働きがある。チームはまず、ES細胞にゲノム編集を施し、投与の際の拒絶反応を起こしにくくした。その上でキラーT細胞の遺伝子を組み込み、コロナウイルス表面の突起物「スパイクたんぱく質」を見つけて攻撃できるようにした。
こうして作ったキラーT細胞と、新型コロナのスパイクたんぱく質を発現させて感染を模した細胞を混ぜると、数時間後にはキラーT細胞が感染を模した細胞を殺していた。一方、別の健康な細胞は攻撃されなかった。今後、実際に新型コロナに感染させた細胞でも同様の効果があるかを調べる。
この技術を用いればウイルスの種類に応じたキラーT細胞を作製できるため、新型コロナだけでなく、他の致死的なウイルスにも使える可能性を秘める。河本教授は「人類をウイルス感染による死から救うブレークスルーになればと願っている」と話す。
T細胞を用いた治療では、患者の血液から採取したT細胞の遺伝子を改変して攻撃力を高め、患者に戻す「CAR―T療法」が既に一部のがんに対して実用化されている。ただ、この方法では患者本人にしか使えず、作製に時間もかかる。これに対し研究チームは、あらかじめES細胞からキラーT細胞を作って備蓄しておけば、多くの患者にすぐに投与できる強みがあるとしている。
ウイルスを殺傷する能力がある「キラーT細胞」を使った新型コロナウイルス感染症の治療用製剤を試験管レベルで作成することに世界で初めて成功したと、京都大学が発表しました。今後、ヒトに使える製剤にするための臨床試験を行いますが、新型コロナに限らず、新しく発生する、あらゆる“未知の感染症”に対応できる製剤を目指した開発を進めるということです。
京都大学医生物学研究所の河本宏所長らは、新型コロナウイルスへの攻撃力を高めたキラーT細胞を使った治療用製剤の開発を試験管レベルですが、世界で初めて成功したと発表しました。
研究では、今回作製したキラーT細胞によって、12時間ほどすると、ウイルスに感染した細胞が次々に死滅したということです。
このキラーT細胞の作製方法はまず、新型コロナワクチンを接種して、免疫ができた人の血液からキラーT細胞を分離し、遺伝子配列を解読。その遺伝子情報を、あらゆる細胞に分化することが可能なES細胞に組み入れて、新型コロナウイルスへの攻撃に特化したキラーT細胞を作ります。
他人の遺伝子を用いたキラーT細胞が、患者の体でいわゆる“拒絶反応”を起こさないためには、“ES細胞から高品質なキラーT細胞を作ること”が求められますが、河本所長は「質の良いキラーT細胞を作る技術を持っているのは、今のところ世界で我々だけだ」と独自の技術によって、今回の製剤化が実現したと強調しました。
さらに、この製剤にはいくつものメリットがあります。
▼ES細胞を使うことで、大量生産が可能なため、コストを低く抑えることができます。また、▼必要な時に、必要な細胞数を、患者に提供できるだけでなく、▼凍結保存できるので、いざというときのための備蓄も可能です。
河本所長らは、まずは難治性の新型コロナの患者向けに、藤田医科大学で3年後を目指して、臨床試験を開始したいとしていますが、同時に、SARSやMERSなどに加え、全く新しい感染症にも対応する製剤の開発も進めることにしています。
今回の製剤化の成功について河本所長は「新しい未知の感染症が出現したとしても、アミノ酸配列など、ウイルスの正体はすぐにわかる。それさえわかれば、ウイルスを攻撃するT細胞がすぐに作れて、新興再興感染症で患者が死ぬこともなくすことができる。そういうことに繋げられる技術だと思う」と話していました。
◆第106回全国高校野球選手権徳島大会 ▽決勝 鳴門渦潮6X―5阿南光=延長10回タイブレーク=(29日・むつみスタジアム)
今春センバツ8強の阿南光(徳島)が、決勝で17年夏の徳島代表・鳴門渦潮に敗れ、春夏連続での聖地とはならなかった。
この日は、プロ注目の最速146キロ右腕・吉岡暖(はる、3年)が、今大会4戦連続となる先発マウンドへ。5回までを無失点に抑えた。
0―0の5回、打線は相手失策の間に先取点を挙げると、なおも1死三塁から1番・矢藤颯太遊撃手(3年)が左前に適時打。好投を続けるエースに、2点をプレゼントした。
だが、その裏に1死二塁からボークでの進塁を許すと、犠飛で1点を失った。
2―1と1点リードの7回は、1死三塁からスクイズで同点とされると、なおも2死一塁から1番・藤原大輔捕手(3年)に痛恨の勝ち越し二塁打を浴びる。試合終盤に、手痛い逆転劇を許した。
しかし、1点ビハインドの8回2死、3番・福田修盛中堅手(3年)が中越えに同点ソロ。主軸の一打で、試合を振り出しに戻した。
その後、試合は延長タイブレークに突入した。10回、1死二、三塁から2番・福嶋稟之介左翼手(3年)の中前打で勝ち越し。だが、その裏1死二、三塁から2番・古住宗一郎右翼手(3年)の2点二塁打で同点とされる。なおも1死二塁で、3番・森高祐吏遊撃手(3年)に左前にサヨナラ打を献上。ここまで全試合を1人で投げ抜いた吉岡が、最後は力尽きた。
この日は、6球団8人のNPBスカウトがネット裏から熱視線を送った。阪神・山本スカウトのスピードガンでは、最速142キロを計測。同スカウトは「完投能力がある。真っすぐも変化球も同じ腕の振りで投げられる投手」と評価した。
◆パリ五輪 第4日 ▽スケートボード男子ストリート決勝(29日、コンコルド広場)
【パリ(29日)=ペン・手島莉子、カメラ・小林泰斗】2021年東京五輪覇者の堀米雄斗(三井住友DSアセットマネジメント)が金メダルに輝き、大会2連覇を達成した。白井空良(ムラサキスポーツ)は4位、14歳の小野寺吟雲(ぎんう)は予選14位だった。
堀米は「ここまで来るのに、諦めかけたこともあった。イヤホンつけてたんすけど音楽かけないで自分と集中できるようにして、やっていたこと、練習してきたこと。自分だけでじゃない、家族、友達、みんなに乗れたことがカギになった。逆転できて本当にうれしいです」と喜びを語った。
五輪初代王者は苦しみ抜いて連覇への挑戦権を手にしていた。22年6月から始まった五輪予選では思うような結果が出せず最終戦前の全7戦で表彰台は3位が1回のみ。代表入りは2位以内に入った上で、ライバルの結果に左右される状況。3枠の代表争いの最終戦は日本勢5番手で迎えた。しかも準決勝で膝を負傷、決勝直前の練習で力が入らないほどだった。「この2年間は地獄というか、何をやってもうまくいかなかった。この大会で勝ち、少し光が見えた」。電気治療や痛み止めの薬で乗り切って大逆転、瀬戸際でよみがえった。
東京五輪を制し、一気に世間の注目を集めた堀米。苦戦していたが、日本勢5番手の代表圏外で迎えた最終戦で優勝し「最後まで諦めずに、自分を信じてスケボーをした」。ヒーローのようにやってのける強さを持つ堀米が、勢いそのまま2連覇を達成した。
◆堀米 雄斗(ほりごめ・ゆうと)1999年1月7日、東京・江東区生まれ。25歳。父の影響で6歳からスケートボードを始める。2016年にアマチュアの登竜門、タンパ・アマで4位になる。17年から最高峰のSLSに参戦し、18年には3戦3勝の快挙。世界選手権では19年銀メダル、21年に初優勝。同年の東京五輪で初代王者に輝いた。170センチ。
■パリオリンピック™ 柔道男子73キロ級 3位決定戦(29日、シャンドマルス・アリーナ)
柔道男子73キロ級の橋本壮市(32、パーク24)は3位決定戦でA.ジャコバ(29、コソボ)を破り、銅メダルを獲得した。
橋本は準々決勝で地元フランスのJ.ギャバ(23)に指導3回で反則負けを喫した。敗者復活戦ではE.バトザヤ(24、モンゴル)と対戦。お互い決定的なポイントが奪えないまま迎えた残り57秒で、バトザヤが投げ技を打ったが、自らの頭を支点にして技をかける危険な行為と判断されて反則。橋本は3位決定戦に進出した。
メダルのかかる戦いはA.ジャコバ(29、コソボ)と対戦。気合の入った表情で畳に上がった橋本、開始9秒で一本背負いを決めて技ありを奪った。ジャコバが前に出てくる勢いを使い、一本背負いで攻めるがポイントは奪えなかった。
残り1分2秒、ジャコバが出血し、治療の時間に橋本はつぶやきながら冷静に試合展開をイメージして待っていた。攻めるジャコバに橋本も落ち着いて技をかわしていった。最後まで攻める姿勢を崩さず優勢勝ち、32歳の柔道界最年長代表が銅メダルを獲得した。
試合後に「手ぶらで帰るわけにはいかなかったので」と笑顔で答え、「柔道人生に悔いを残したくなかったのでそれだけです」とやりきった表情を見せた。
【柔道男子73キロ級 五輪成績】※1996年までは71キロ級
1980年 モスクワ 日本不参加
1984年 ロサンゼルス 中西英敏 5位
1988年 ソウル 古賀稔彦 3回戦敗退
1992年 バルセロナ 古賀稔彦 金メダル
1996年 アトランタ 中村兼三 金メダル
2000年 シドニー 中村兼三 9位
2004年 アテネ 高松正裕 1回戦敗退
2008年 北京 金丸雄介 7位
2012年 ロンドン 中矢力 銀メダル
2016年 リオ 大野将平 金メダル
2021年 東京 大野将平 金メダル
2024年 パリ 橋本壮市 銅メダル
■パリオリンピック™ 柔道女子57キロ級 3位決定戦(29日、シャンドマルス・アリーナ)
柔道女子57キロ級の舟久保遥香(25、三井住友海上)は3位決定戦でR.シルバ(32、ブラジル)を破り銅メダルを獲得した。
柔道女子57キロ級の舟久保は準々決勝でS.シジク(26)に開始9秒で小外刈で一本を奪われて敗退。敗者復活戦ではM.ペリシッチ(24、セルビア)と対戦。試合時間残り1分で舟久保が得意の抑え込み、横四方固で1本勝ち、3位決定戦への進出を決めた。
銅メダルをかけた戦いは世界ランク7位のR.シルバ(32、ブラジル)、組手争いでは手足の長いシルバに優勢、舟久保は序盤から攻撃の糸口が見つからなかった。お互いポイントが奪えずにゴールデンスコアへ。
そして、本戦と合わせて9分6秒が経過したところで、シルバが技をかけたが自らの頭を支点にして技をかける危険な行為とされて反則となった。舟久保が銅メダルを獲得、日本柔道通算100個目のメダルとなった。
【柔道女子57キロ級 五輪成績】※1996年までは56キロ級
1988年 ソウル 不参加 (公開競技)
1992年 バルセロナ 立野千代里 銅メダル
1996年 アトランタ 溝口紀子 9位
2000年 シドニー 日下部基栄 銅メダル
2004年 アテネ 日下部基栄 9位
2008年 北京 佐藤愛子 7位
2012年 ロンドン 松本薫 金メダル
2016年 リオ 松本薫 銅メダル
2021年 東京 芳田司 銅メダル
2024年 パリ 舟久保遥香 銅メダル
日本陸上競技連盟は29日、パリ五輪女子20キロ競歩に出場予定だった、日本代表の岡田久美子(富士通)、柳井綾音(立命館大学)の2人が同競技への出場を辞退することを発表した。男女混合競歩リレーに専念するためとされた。
なお、今回の出場辞退による選手の入れ替えや追加はないという。
柳井は自身のXを更新し、「今回、男女混合リレーに専念させて頂くことになりました。オリンピックを辞退するということはすごく贅沢だと思いますが、1本に集中してメダルを目指したいと思います」と、説明した。
◆パリ五輪 第4日 ▽体操(29日、ベルシー・アリーナ)
体操の男子団体決勝で、2016年リオ五輪以来の金メダルを目指す日本は、谷川航(28)=セントラルスポーツ=、萱和磨(27)=セントラルスポーツ=、杉野正尭(25)=徳洲会=、橋本大輝(22)=セントラルスポーツ=、岡慎之助(20)=徳洲会=の5人で臨んだ。
最大のライバルの中国と同じローテーションで演技を行う日本は1種目目の床運動で中国を0・734点リードしたが、2種目目のあん馬で、エースの橋本が落下するミスなどがあり、中国に0・5点のリードを許した。
3種目目のつり輪は中国の得意種目。驚異の15・500と14点後半の高得点を重ねた中国に対し、日本も萱が14・000、五輪初出場の岡が14・133、谷川が14・500と踏ん張ったが、中国との差は3・133差に広がった。
前半の3種目を終え、中国が131・364で首位。2位に米国、3位に英国、4位にウクライナと続き、日本は5位。
団体決勝は1チーム5人のうち、各6種目を3人が演技し、その3人の合計がそのままチームの得点となる。
■パリオリンピック™ 馬術 総合馬術団体(日本時間29日、ベルサイユ宮殿)
総合馬術団体で、大岩義明(48、nittoh)、戸本一真(41、日本中央競馬会)、北島隆三(38、乗馬クラブクレイン)、田中利幸(39、乗馬クラブクレイン)の日本が銅メダルを獲得した。日本が馬術でメダルを獲得するのは、“バロン西”こと西竹一氏が1932年のロサンゼルス大会で金メダルを獲得して以来、92年ぶり。団体では史上初の快挙となった。
馬場馬術、クロスカントリーの2種目を終え3位で最終種目の障害馬術を迎えた日本だったが、北島の馬が馬体検査をクリアできず20点減点、5位に後退した。それでも北島に代わって出場した田中、戸本、大岩が少ない減点にとどめ、3位に返り咲いた。
総合馬術は、馬場馬術、クロスカントリー、障害馬術で争い、減点が少ない方が上位となる。団体は各チーム3人馬の合計点で競う。
パリ五輪第4日の29日、スケートボード男子ストリートで堀米雄斗(25)=三井住友DSアセットマネジメント=が金メダルを獲得し、初採用された東京五輪との2連覇を達成した。ストリートは男女とも2大会連続で日本勢が制した。
東京都出身。2018年に世界最高峰のストリートリーグを日本勢で初制覇した先駆者は、五輪予選で苦戦したが、出場権を獲得。予選4位で臨んだ決勝は最後のベストトリック(一発技)で劇的な逆転優勝を決めた。
東京五輪を圧倒的な強さで制した“女王”が、メダルにすら届かずまさかの敗退。日本中に大きな衝撃が走った。
パリ五輪・柔道女子52キロ級で連覇を目指した阿部詩(24)は、2回戦でウズベキスタンのケリディヨロワと対戦。優勢に試合を進めるも残り1分を切ったところで、ケリディヨロワが仕掛けた「谷落とし」で畳に倒れてしまった。
主審がコールした「1本」に、何が起きたのか理解できない表情で呆然と座り込む阿部。なかなか立ち上がることのできない彼女を、喜ぶ様を見せることなく静かに待ち続ける勝者。ようやく「礼」を済ませると、握手を交わして健闘を称えるのだった。
フラフラした足取りで畳を後にするも、頭を下げたまま崩れるように座り込んで号泣する阿部。平野幸秀コーチに抱えられてなんとか歩を進める“女王”に対し、場内からは「UTA!UTA!」と敬意を込めたコールが起きる、感動的なシーンが国際映像で放送された。
そんな熱戦の模様を伝えた、7月29日の『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日系)に出演し、「競技続けるだけじゃなくて生活もすべて強くなること、勝つことに全部ささげてきている」と慮ったコメンテーターの玉川徹氏。
『めざまし8』(フジテレビ系)でも、橋下徹氏が「このレベルになるとやっぱり勝利至上主義でも当然だと思うし、負けた時にああいうふうになるのは当然だと思う」と、号泣した彼女を理解する姿勢を見せるのだった。
負けるたびにギャーギャー泣くな
常人には計り知れないプレッシャーがかかるであろう、選手たちによる大舞台での試合。SNSでも阿部の姿に感銘を受けた視聴者が多かったようで、試合後の彼女のインスグラムには日本語、さまざまな言語による励ましや労いのコメントが殺到。その一方でーー、
《東京五輪からの3年間何してたんですか?2回戦敗退なら後はパリ観光ですか??》
《負けるたびにギャーギャー泣かないで下さい。》
《タレント気取りで色々やったから、足元掬われるんだよ!チャラチャラしてるんじゃない!》
必死に闘った試合を、積み上げてきたキャリアを嘲笑うかのような心無い声も。またウズベキスタン出身と思われるSNSユーザーからの“煽る”ようなコメントも連投され、それを注意するコメントも相待って荒れ気味の様相ーー。
「特にオリンピックのような、世界中が注目する国際試合に出場する選手にとって、SNSは諸刃の刃と言えます」とは、国内外のアスリート事情に詳しいスポーツジャーナリストの話。
阿部と同様に、オリンピアンやトップアスリートも開設することも珍しくない、インスタグラムやX(旧ツイッター)といったSNS。試合の活動報告やプライベートでの息抜き、はたまた所属企業やスポンサー企業の“広告塔”として活用される側面もあるようだ。
体操・宮田笙子はインスタ投稿を削除
「世界発信されるSNSは国内外に多くのファンを獲得できる、またビジネスチャンスを広げるツールです。ところが、世界に名が知れ渡るほどに“アンチ”が増えるのも常理でして、特に大きな試合で負けたり、はたまた事件や不祥事を起こすと“待ってました”とばかりに口撃を仕掛けるのです」(ジャーナリスト、以下同)
パリ五輪の開幕直前には、20歳未満にも関わらず喫煙と飲酒をしていたことが発覚し、代表辞退に追い込まれた体操女子・宮田笙子選手。やはり彼女のインスタグラムには誹謗中傷に近いコメントも書き込まれ、全ての投稿を削除する事態に追い込まれた。
「柔道男子60キロ級の準々決勝で、永山竜樹選手に勝利したフラン・ガルリゴス(スペイン)のインスタグラムにも、判定に不満を持った一部の日本人ユーザーが批判的なコメントを投稿して炎上しています。
普段は柔道に全く興味のない人でも、これまで全く知らなかった選手に対して気軽に書き込ませるリスクがSNSにあります。オリンピックという国同士の威信をかけた特別な舞台がなさせる所業なのか、それともアスリートに限らず、日頃からターゲットを物色しているユーザーなのか」
団体戦への出場はまだ未透明だという阿部。金メダル獲得のためにまた、自身の足で立ち上がってほしい。
“追記”
◆パリオリンピック・体操男子団体総合決勝(29日、ベルシー・アリーナ)
橋本大輝(22)、萱和磨(27)、谷川航(28)=以上セントラルスポーツ、岡慎之助(20)、杉野正尭(25)=ともに徳洲会=の5人で挑んだ日本が、2大会ぶりの金メダルを獲得した。
日本は予選トップの中国と同じ組で、床運動からスタートし、あん馬、つり輪、跳馬、平行棒、鉄棒の順で演技した。
4種目を終え、1位中国、2位ウクライナ、3位アメリカで日本は4位。ただ中国と日本との差は1.799点と小差で5種目を迎えた。
日本は5種目目の平行棒を萱、岡、谷川の3人が大きなミスなく終えて2位に浮上したが、中国との差は3.267点と開いて最終種目の鉄棒を迎えた。
日本は杉野、岡と演技をまとめたのに対し、中国は2番手の選手がまさかの2度の落下。日本は最終演技者の橋本が着地までピタリと決め、中国の最終演技者にプレッシャーをかけた。
中国の最終演技者は着地が一歩ずれたものの目立ったミスはなかったが、得点は伸びず。259.594点とした日本が259.062点の中国を上回り、大逆転で2大会ぶりの金メダルを獲得した。
パリ・オリンピック(五輪)第4日の29日、体操の男子団体で日本が2大会ぶりとなる金メダルを獲得した。259・594点で、2位の中国を0・532点上回った。この種目では6大会連続15回目の表彰台。
日本は、2021年の東京五輪にも出場した橋本大輝(22)、萱(かや)和磨(27)、谷川航(28)=いずれもセントラルスポーツ=の3人に、初代表の岡慎之助(20)、杉野正尭(たかあき)(25)=ともに徳洲会=を加えた5人で決勝を戦った。
体操の男子団体は、16年のリオデジャネイロ五輪で3大会ぶりの金メダルに輝いたが、連覇を狙った東京五輪ではロシアに0・103点差及ばず銀メダルだった。
今大会での金メダル奪還をめざし、選手たちは「メイク・ニュー・ヒストリー」というスローガンを掲げていた。
体操は29日、男子団体総合決勝が行われ、日本が2016年リオデジャネイロ大会以来2大会ぶりの金メダルを獲得した。橋本大輝、萱和磨、谷川航(いずれもセントラルスポーツ)、岡慎之助、杉野正尭(ともに徳洲会)で臨んだ。
「パリ五輪・体操男子団体・決勝」(29日、ベルシー・アリーナ)
2大会ぶり金メダルを目指した日本は橋本大輝、岡慎之助、萱和磨、杉野正尭、谷川航の5人で挑み、合計259.594点で最終種目の鉄棒での大逆転で16年リオデジャネイロ五輪以来2大会ぶりの金メダルを獲得した。12大会連続のメダルとなった。0.532点差の2位は中国、3位は米国だった。日本は首位中国と3.267点差で迎えた最終種目の鉄棒で、中国に2度の落下などがあったこともあったが、萱、岡、橋本が3人が完璧な演技でつなぎ、大逆転した。
2種目目のあん馬でエースの橋本大輝が痛恨の落下。ここまで調整がうまくいかず、予選から苦しんできたエースは天を仰ぎ、表情は色をなくした。それでも響く声があった。主将の萱が「あきらめるな!絶対にいける」と声を張り上げて鼓舞。橋本は表情は硬かったが、うなずいていた。
その後、絶望的な点差まで引き離されたが、最後まで演技をつないだ結果が頂点につながった。4種目に出場し、すべて1番手を務め14点台をマークし続けた萱。“失敗しない男”と呼ばれる雄たけびが武器の主将の声がチームをよみがえらせた。
◇パリオリンピック2024 体操男子団体決勝(大会4日目=日本時間30日、ベルシー・アリーナ)
体操男子団体がリオ五輪以来8年ぶりの金メダルを獲得しました。
予選を2位で通過し、ゆかからの競技となった日本。決勝は5人エントリー、3人演技、3人の得点が採用される、失敗が許されない『5-3-3』制での戦いとなります。
第1種目ゆか、2番手の橋本大輝選手は、予選で着地が荒れるなど、13点台にとどまっていましたが、この日の演技では冒頭の『リ・ジョンソン』をまとめるなど安定感のある演技を披露し、予選から0.9高い14.633をマーク。
日本選手は3人全員が最後の着地を止め、14点台をマーク。ライバル中国に0.734の差をつけて2位につけました。
第2種目あん馬は、予選のチーム得点が全体1位だった種目。あん馬を最も得意とする2番手の杉野正尭選手はF難度の『ドリックス』、『Fコンバイン』など高難度の技を次々と決め、14.866をマークしました。
しかし3番手の橋本大輝選手は、持ち手の部分で旋回を続けるEフロップの握り替えでミスがあり落下。13.100と得点を伸ばせず、2種目合計85.598の日本は、中国に0.5ビハインドの3位となりました。
第3種目のつり輪は日本があまり得意としていない種目ですが、3番手の谷川航選手が『後転中水平』、『後方け上がり中水平』など安定感のある力技を見せ、最後の抱え込みルドルフ下りもピタリ。予選を超える14.500をマークしました。
しかしこの種目の東京五輪金メダリストを擁する中国に3.133と点差を離され、前半種目を終えて日本は5位となりました。
第4種目の跳馬では橋本選手がロペスに挑み、着地を小さく1歩にまとめる好実施。演技後には胸に手を当て、ほっとした様子も見られ、14.900の高得点をマークしました。
練習で左足を痛めた谷川航選手は最高難度『リ・セグァン2』に挑みましたが、抱え込みと判断されDスコア5.6の『ドラグレスク』の判定。着地でも手が地面についたように見られ、13.833と得点を伸ばしきることができませんでした。それでも中国にも着地で手をつくミスが見られ、差を1.799に縮め、4位としました。
第5種目の平行棒では萱選手、岡選手、谷川選手がそれぞれ14点代後半の得点をマークし、アメリカとウクライナをかわして2位に浮上。
中国は“平行棒の神”と呼ばれる鄒敬園選手がこの日唯一の16点台をたたき出しました。
首位中国と3.267差で迎えた最終種目・鉄棒。1番手の杉野選手はF難度の『ペガン』や『コバチ~コールマン』などの離れ技を決め、14.566をマークしました。2番手は予選からここまで大きなミスが出ていない岡選手。冒頭のひねり技を落ち着いて決めると、『コールマン』『伸身トカチェフ』などの離れ技も危なげなく決め、14.433をマークしました。
すると、中国は2番手の蘇イ徳選手が伸身トカチェフでまさかの落下。さらに再開後のコールマンでも落下し、11.600と大ブレーキ。
日本の最終演技者・橋本大輝選手は『アドラーひねり~リューキン』を決めると、予選から難度は落としましたが最後の着地も1歩に収め14.566をマーク。
中国は15.265を出せば金メダルの状況。最終演技者の張博恒選手は完璧な演技を披露しましたが、得点は14.733と及ばず。
日本は6種目合計259.594。最終種目での大逆転劇を演じ、8年ぶりの団体金メダルを手にしました。
「パリ五輪・体操男子団体・決勝」(29日、ベルシー・アリーナ)
2大会ぶり金メダルを目指した日本は橋本大輝、岡慎之助、萱和磨、杉野正尭、谷川航の5人で挑み、合計259.594点で最終種目の鉄棒での大逆転で16年リオデジャネイロ五輪以来2大会ぶりの金メダルを獲得した。12大会連続のメダルとなった。0.532点差の2位は中国、3位は米国だった。
日本は首位中国と3.267点差で迎えた最終種目の鉄棒で、中国に2度の落下などがあったこともあったが、3人が完璧な演技でつなぎ、大逆転した。ドラマでも描けないような大逆転劇に日本列島は沸騰。SNSでは「最後プレッシャーのかかる中でしっかり繋いで金メダル素晴らしい!!」、「これだから体操は最後までわからんのよ」、「気迫がすごかった」、「あの大差の中でよくあきらめなかった!!」と、沸き立った。
27日に行われた団体総合の予選は6種目合計260.594点で、中国に続く2位で決勝に進んでいた。しかし東京五輪個人総合金メダルのエース・橋本大輝は東京五輪で金メダルだった鉄棒で30位に終わり、種目別決勝への進出を逃すなど不調。5月に痛めた右手中指の影響か精彩を欠いた。
2連覇がかかっていた21年東京五輪の男子団体で、日本はわずか0.103点差で銀メダルだった。橋本を筆頭に、体操ニッポンの威信に懸けて金奪還を目指してきた。
東京五輪を制したロシアが出場できず、当初から金メダル争いは前回「銀」の日本と「銅」だった中国の一騎打ちとみられていた。
日本は得意種目が偏らない代表選考で各種目にポイントゲッターがそろい、主将の萱は「世界一厳しい選考を勝ち抜いた最強の5人」と自信を示してきた。
軸は個人総合で五輪王者の橋本大輝(セントラルスポーツ)だ。G難度の跳躍技「リ・ジョンソン」を組み込む床運動と、F難度の「リューキン」などの多彩な離れ技を繰り出す鉄棒はチームトップのDスコア(演技価値点)。「必ずチームにいい流れを呼び込む」とエースの自覚がにじませていた。
しかし、全日本選手権後に右手中指のじん帯を損傷し、パリ入り後も左肩に痛みを抱えた橋本の調整が思うように進まず、調子の上がらないまま、本番へ。跳馬での得点を期待された谷川も直前で左足首を痛め、予選、決勝ともミスが続いた。それでも0.103点差に泣いた東京大会から3年。水鳥寿思監督は「Dスコアでは、おそらく中国を上回っている。完成度を求めて勝負していきたい」と歓喜の瞬間を思い描いたが、描かれたのは奇跡だった。
パリ五輪第4日の29日、体操男子団体総合決勝で日本が優勝し、2016年リオデジャネイロ五輪以来2大会ぶりに金メダルを奪回した。1960~70年代の5連覇、04年アテネ五輪を合わせ8度目制覇。
予選2位通過の日本は、橋本大輝(22)、萱和磨(27)、谷川航(28)=以上セントラルスポーツ、岡慎之助(20)、杉野正尭(25)=以上徳洲会=の布陣で臨み、最後の鉄棒でライバル中国を逆転した。昨秋の世界選手権に続く世界一で、銀メダルだった東京五輪の雪辱を果たした。
■パリオリンピック™ 体操男子団体決勝(日本時間30日、ベルシー・アリーナ)
体操男子団体決勝が行われ、日本がライバル・中国との激闘を制し、金メダルを獲得した。最終種目の鉄棒で2位にいた日本が1位の中国を逆転するという劇的な展開で、2016年リオ五輪以来8年ぶりの王座奪還を成し遂げた。
団体決勝に臨む“体操ニッポン”は5人。東京五輪の個人総合&種目別「鉄棒」金メダル、エースの橋本大輝(22)。東京五輪あん馬銅で主将の萱和磨(27)。2大会連続出場の谷川航(28)。初出場の杉野正尭(25)。2019年世界ジュニア個人総合金メダル、最年少の岡慎之助(20)。
日本は最初の床で一番手の萱が14.000をマークする。2番手の橋本は、高い跳躍力を見せて渾身のガッツポーズ、14.633の高得点でチームを勢いづける。3人目の岡も、最後の着地をピタリと止め笑顔、橋本と同じ14.633をマークし2位と上々のスタートを切った。
2種目目のあん馬。萱が安定感抜群の演技を披露、着地した後に「ヨッシャー」と雄叫びをあげ、14.366を記録。続くあん馬のスペシャリスト、杉野も美しい旋回を存分に見せ、14.866の高得点をマーク。しかし、最後の橋本が演技途中でまさかの落下。大幅に減点され、13.100と13点台の記録となり、日本は3位に後退。1位はアメリカ、2位中国とは0.5の差がついた。
3種目目のつり輪。萱、岡、谷川の3人ともノーミスで終えるが、つり輪を得意としている中国に日本を上回る演技をされる。日本は5位で前半を終える。1位の中国との差は3.133に広がった。
4種目目の跳馬では杉野と橋本が高得点をマーク。中国の3人目が12点台を記録したため、1位、中国との差は1.799まで縮まる。2位にウクライナ、3位にアメリカで日本は4位。アメリカとの差は0.864で、メダル争いが熾烈になってきた。
5種目目の平行棒でも日本は得点を伸ばすことができなかったものの、1位中国と3.267差の2位に浮上し、最終種目の鉄棒を迎えた。一番手の杉野が着地をピタリと決め、岡に繋ぐ。
岡も最年少とは思えない落ち着いた演技を披露しガッツポーズ。その直後、中国の2人目が2度の落下し、大幅な減点を余儀なくされる。そして日本は最終演技者の橋本が鉄棒の演技に入った。橋本は離れ業のリューキン、カッシーナ、コールマンを次々と成功させ着地も見事に成功。渾身のガッツポーズから右手を突き上げ、見事中国を逆転した。
体操男子団体総合で日本が金メダル。
フェンシング男子フルーレ個人の飯村一輝(慶大)は準決勝で東京五輪王者の張家朗(香港)に敗れ、3位決定戦に回った。
「パリ五輪・体操男子団体・決勝」(29日、ベルシー・アリーナ)
2大会ぶり金メダルを目指した日本は橋本大輝、岡慎之助、萱和磨、杉野正尭、谷川航の5人で挑み、合計259.594点で最終種目の鉄棒での大逆転で16年リオデジャネイロ五輪以来2大会ぶりの金メダルを獲得した。12大会連続のメダルとなった。0.532点差の2位は中国、3位は米国だった。
1種目目の床では最初の演技者だった萱が演技をまとめきり、14.000点をマーク。2番手は予選で精彩を欠いた橋本が、予選よりも大きく改善した演技で珍しくガッツポーズを連発。14.633点で、予選の13.733点から大きく得点を上積みしてきた。最後の岡も14.633点で3人の合計43.266点。中国は3人の合計が42.532点で、日本が0.734点リードした。
しかし、2種目目のあん馬で橋本が痛恨の落下。再開後もやや危ない場面があったが、なんとか最後まで演技を終えた。1点減点もあり、得点は13.100点。演技後は天を仰ぎ、表示された得点を見つめ、悔しそうに顔を手で覆った。萱が14.366点、杉野が14.866点と好演技が続いていただけに、痛いミスとなった。しかし、終わった後にチームメートから「絶対にいける」と鼓舞され、うなずいていた。日本は前半2種目でリードを奪う展開を思い描いていたが、2種目目を終えて、中国が86.098点、日本が85.598点で、0.5点中国がリードを奪った。
3種目目は中国の得意種目のつり輪。中国の3人は14.933点、14.833点、15.500点とハイスコアを並べた。
日本は萱が14.000点、岡が14.133点、谷川が14.500点で食い下がったが、中国が131.364点、日本が128.231点で3.133点差まで広げられた。
4種目目の跳馬では日本が杉野が14.700点、橋本が14.900点、谷川が必殺のリ・セグァン2が認定されず、ドラグレスクと判定されて得点を伸ばせず、13.833点だったが、中国の3人目が大きくミスし、12.766点となり、1.799点差まで詰めた。
5種目目の平行棒では中国の“平行棒の神”と呼ばれる鄒敬園が異次元の16点をマーク。日本の萱、岡、谷川も健闘したが、再び突き放され、3.267点差で最終種目の鉄棒に向かった。
最終種目の鉄棒では杉野、岡が好演技を並べると、中国の2番手の選手がまさかの2度の落下。11.600点で、この時点で日本が逆転。日本は橋本が会心の演技で着地もピタリ。14.566点をマークした。中国の最終演技者はまとめたが、日本には届かなかった。
27日に行われた団体総合の予選は6種目合計260.594点で、中国に続く2位で決勝に進んでいた。しかし東京五輪個人総合金メダルのエース・橋本大輝は東京五輪で金メダルだった鉄棒で30位に終わり、種目別決勝への進出を逃すなど不調。5月に痛めた右手中指の影響か精彩を欠いた。
2連覇がかかっていた21年東京五輪の男子団体で、日本はわずか0.103点差で銀メダルだった。橋本を筆頭に、体操ニッポンの威信に懸けて金奪還を目指してきた。
東京五輪を制したロシアが出場できず、当初から金メダル争いは前回「銀」の日本と「銅」だった中国の一騎打ちとみられていた。
日本は得意種目が偏らない代表選考で各種目にポイントゲッターがそろい、主将の萱は「世界一厳しい選考を勝ち抜いた最強の5人」と自信を示してきた。
軸は個人総合で五輪王者の橋本大輝(セントラルスポーツ)だ。G難度の跳躍技「リ・ジョンソン」を組み込む床運動と、F難度の「リューキン」などの多彩な離れ技を繰り出す鉄棒はチームトップのDスコア(演技価値点)。「必ずチームにいい流れを呼び込む」とエースの自覚がにじませていた。
しかし、全日本選手権後に右手中指のじん帯を損傷し、パリ入り後も左肩に痛みを抱えた橋本の調整が思うように進まず、調子の上がらないまま、本番へ。跳馬での得点を期待された谷川も直前で左足首を痛め、予選、決勝ともミスが続いた。それでも0.103点差に泣いた東京大会から3年。水鳥寿思監督は「Dスコアでは、おそらく中国を上回っている。完成度を求めて勝負していきたい」と歓喜の瞬間を思い描いたが、描かれたのは奇跡だった。
◆パリ五輪 第4日 ▽体操男子 団体決勝(29日、ベルシー・アリーナ)
男子の団体決勝で、予選2位通過した日本は、259・594点で金メダルを獲得。2016年リオ五輪以来、2大会ぶりに団体で五輪王者に返り咲いた。予選首位通過した最大のライバル・中国との一騎打ちを制し、王座奪還を果たした。
最大のライバルの中国と同じローテーションで演技を行う日本は1種目目の床運動で中国を0・734点リードしたが、2種目目のあん馬で、エースの橋本が落下。前半の3種目を終え、中国が131・364で首位。2位に米国、3位に英国、4位にウクライナと続き、日本は5位で折り返した。
4種目目の跳馬では橋本が14・900の高得点をマークするなど4位に浮上。首位の中国との差も1・799点に詰めた。5種目目の平行棒では、4種目で最初の演技者を務めた萱が14・733、岡が14・866、谷川が14・766と立て続けに14点後半をマークして2位に浮上。中国とは3・267点差に広がって迎えた最後の鉄棒で、中国がまさかの2度の落下。最後に橋本が14.566点をたたき出して逆転。劇的な展開で2大会ぶりの優勝を果たした。
前回21年東京五輪は、ROC(ロシア・オリンピック委員会)に0・103点差で敗れて銀メダル。悔しさを知る主将の萱和磨(セントラルスポーツ)は「1秒たりとも0・103っていうのは忘れてはいない3年間だった」と言う。同じく前回出場した谷川航(セントラルスポーツ)も「『今日あんまり動けないな』という日も、それで(悔しさを思い出して)気合いを入れた。失敗しないだけじゃダメ。自分の一番いい演技を目指さないといけない」と3年前の思いを胸に刻み、パリ五輪まで鍛錬した。
“前哨戦”の2023年世界選手権では日本が団体金メダルを獲得。だが、中国は同時期に開催されていた杭州アジア大会にメインメンバーを派遣していた。本当の意味での「直接対決」はパリ五輪で実現。一方の中国も2016年リオ大会、21年東京大会と連続銅メダルで、パリまでに世代交代を遂げながら進化。「体操王国」のプライドに懸け王座奪還に力を注いできた。
中国は「一つ一つのポテンシャルはおそろしいくらい高い」と水鳥寿思・強化本部長。特に日本の弱点・つり輪に精鋭がそろい、平行棒では異次元の16点台を出すスペシャリストもいる。だが、エース・橋本大輝(セントラルスポーツ)は「僕はデータが大嫌い。選手の可能性を閉じてしまっている。多分、この5人だったら『そんな目標数値全部超えてやるよ』って気持ちで僕はやってる」。
日本は層の厚さとチームワークを最大の武器に中国に対抗。世界トップレベルの選手がそろう「過酷な選考会」を勝ち抜いた5人は、「すごく信頼している」と萱は胸を張る。水鳥氏も「ベストなメンバーが選考された。十分金メダル取れると思う」と自信を持った日本代表が完成した。
個人総合世界王者の橋本、安定感抜群で“失敗しない男”として頼れる主将の萱、跳馬で世界トップクラスの実力を持つ谷川、「日本の宝」として無限大の可能性を秘める岡慎之助、あん馬と鉄棒が武器な大型選手で、遅咲きながら努力で五輪切符を得た杉野正尭(ともに徳洲会)。それぞれの持つ強烈な個性が一つとなり、悲願の団体金にたどり着いた。
パリ五輪を迎えるにあたって掲げたスローガンは「メークニューヒストリー」。水鳥氏は「体操はすごい歴史があるが、僕たちは僕たち。『僕たちにしかできない体操ニッポンっていうのを見せたい』っていうような話があった」と明かす。ここはまだスタートライン。再び、体操ニッポンの黄金時代を築き上げる。
※一部勝手にコピペ&割愛いたしました🙇💦
※また、敬称を省略させていただきました🙇💦💦