ほとんど乗りもしないのに所有するバイクを『盆栽』という

 

 

当主はライダーである。

17歳で自動二輪中型限定免許を取得して以来、ブランクはあったものの、ライダー歴40年以上のキャリアを積むベテランだ。

…とはいえベテランだからどうなんだ、ということだし、第一、いまどきこんな難行苦行的乗り物を好き好んで乗っているのは当主とほぼ同世代のロートルばかりだから、現存するライダーはだいたいがベテランだと思ったほうが正解かもしれない。

 

そのベテランたちの多くが、1000ccを超える大型バイクにまたがっている。

かつて、大型バイク(排気量401cc以上)に乗るためには、運転免許試験場のコースにておっかない白バイ隊員の厳しい実技審査をくぐり抜けた勇者だけが手にする『限定解除』なる儀式が必要だった。

合格率は極めて低く、ナナハン(750cc)に乗っているということは、それだけで周囲から羨望の眼差しを注がれる特別な存在だったのである。

 

 

▲ 高校生のクセしてナナハンを乗りまわす少年の物語。当主は読んでなかったけどタイトルはライダーなら誰しも知っている名作。1975年連載開始ということで、主人公は『限定解除』組なのかもしれない

 

 

もっとも、1974年以前の自動二輪免許は排気量無制限だったから、免許取得直後からナナハンだろうがリッターバイク(1000cc以上)だろうが乗り放題だったわけで、羨望の眼差しを送るにしても、そのあたりをしっかり観察しないとかいかぶりになってしまうから注意が必要だ。

 

…かように、難関である『限定解除』を経て大型バイクに乗っている人は鼻高々だったわけだが、1995年、法改正により『大型バイク免許』なるカテゴリーが新設され、なんと民間の教習所で大型バイクの免許取得が可能となってしまった。

 

これ、改正直前に辛酸をなめながら限定解除を手にした人は、どんな思いを味わったのだろうか。きっと地胆団を踏んだに違いない。

 

何を隠そう、当主も多分にもれず、教習所で大型免許を取得したクチである。

2004年、40歳にして大型バイクを手にすることとなった。

 

初めて所有する大型バイクの車種は、だいぶ前から一択で決めていた。

ドゥカティ 900 SL である。

 

 

 

▲ ドゥカティ 900 SL  たぶん、入手直後の画像。Riding House のマフラーと OHLINS のリアダンパーのほかは完全ノーマルだ。ちなみにマフラーは音量がでかすぎて車検に通らず…

 

 

 

 

ドゥカティはイタリア製のバイクで、『バイクのフェラーリ』とも称されている超高級品だ。

バイクに乗り始めた頃、バイク雑誌のページを飾るドゥカティの美しさに心底惚れ込んだものだった。

 

とはいえ、新車で200万以上のバイクが買えるわけがない。また、現行型は中古であっても軽く100万を超えていて、まったくの高嶺の花であった。

手が届く範囲にあったのが、この 900 SL で、12年落ち、走行2万キロ強、修復歴なし、販売価格60万円という物件を、全国チェーンの『レッド◯ロン』さんで購入した。

12年落ちで60万円が高いのか安いのか、これは永遠の謎だ。

 

とにもかくも、ここから、現在に至るドゥカティと当主とのお付き合いが始まったのである。

 

 

 

つづく