ありすぎて困るが、なければないできっと寂しい
さて。
昨年の大晦日以来ひと月以上も更新をサボってなにをしていたかといえば、それはただ毎日、ひたすら敷地内の除雪をしていたに尽きる。
ここ、余市郡赤井川村は、道内でも屈指の豪雪地帯のひとつで、その中でもことさら山間部の当地の積雪量は、例年軽く2mを超える。そのことはあらかじめ承知の上で移住してきたわけで、すでにこの過酷な環境を2シーズンほど経験してきたのだから実のところ驚きも文句もないのだが、さすがに連日のべ半日ほど除雪作業に費やすとなると、これまあ、多大なる収益機会の損失というか、過酷な肉体的負担というか、いずれにせよ決して建設的な状態でなく、blogの更新どころではないという心境に至るのも、まあ致し方ないのではあるまいか。
…というのが、更新をサボり続けた言い訳である。
肉体的負担、といいつつも、当然だが、除雪作業の主力はマシーンたちだ。
主役は大型除雪機。当施設のマシーンは新潟県の和同産業社(通称:ワドー)製で、30馬力ディーゼルエンジンを搭載し、幅1.3m弱のローターを回転させることで雪を20m近くのかなたに吹っ飛ばすことができる。全長約2.5m、全幅約1.3m、装備重量約1tもあって、これはもはや軽自動車をちょっと圧縮したくらいの存在感だ。都市近郊で称賛を浴びている、ヤマハやホンダの除雪機とは一線を画す強烈なオーラが満々と漂う。
このマシン、巨大なだけに操作にはそれなりのコツが要りようだが、慣れればコイツほど頼もしい相棒はいない。…というか、コイツなしではこの過酷な環境を生き抜くことはできない。積雪期においては、コイツはもはや命綱的な存在である。
そして、忘れてはならないもうひとつの相棒が、バックホウ(ユンボ)だ。コイツの活躍のステージは主にドライシーズンなのではあるが、除雪機のローターでは排雪しきれない高い雪壁を崩したいときには、実に頼もしい存在となる。
実際、屋根に積もり続けた雪が暖気などをきっかけに一気に崩落した際は、除雪機だけではどうにも立ち行かなくなり、この場合、バックホウと除雪機の協働によって雪塊を崩しつつ動線を確保してゆくのである。
このように、2024年のスタート以来、日々除雪作業に勤しんでいるわけなのだが、実は、結局、その要になっているのは間違いなく人力だというところが厳しい。
たとえば、延長50mのアプローチを除雪するとして、そのすべてを除雪機でまかなうとすると、そのローター幅からしてアプローチを3往復ほどしなければならない。農機具の雄であるクボタ社製ディーゼルエンジンの燃費は秀逸とはいえ、この燃料高騰時においては燃料代の出費は痛い。ゆえに、必然的にマシンと人力のハイブリッド作業となる。人力でアプローチの両脇に雪を集め、集まった雪をマシーンで吹っ飛ばすのである。これならマシーンの稼働は1往復でことたりる。
また、除雪機のローターの高さを越える雪壁は、あらかじめバックホウで崩しておかなければならない。それにしても、かゆいところに手が届くのは最終的には人力で、マシーン任せにすると、いたるところに雪塊が点在することになる。マシーンは確かに頼もしいが、美しく除雪するには、やはりヒトの肌感覚が重要なのだ。しかも、人力は、いくら消費しようが基本的にはタダだ。
…というわけで、アラカンの老体にムチ打ちしつつ、日中の大半を除雪作業に費やす日々を送っている。
たいていの常識人からすれば「バカじゃないか」と思われるだろうが、実のところ、除雪作業は意外と楽しい。マシーンを使いこなす喜びも去ることながら、しばし汗した後に振り返ったときの、美しく整えられた雪道を眺めるにつけ、なんともいえぬ達成感に身悶えるのである。
雪は少ないに越したことはないのだが、これくらい積もるからこそ、当地の魅力が際立つのかもしれない。