好きが嵩じて

 

 

2023年が終わらんとしている。

本年がどういう年だったかといえば、ススキノで11年間経営したワインバーを閉業し、ここ『赤井川村』の山中にて新規事業をスタートさせようという、還暦を目前とした当主にとって、そこそこにインパクトの大きいイベントイヤーであった。

 

振り返れば、勉強や教師がキライすぎて17歳で高校を中退、趣味のバイクであぶく銭を得ながら放蕩し、20歳で更生して学んだグラフィックデザインで口を糊し、25歳で大手情報出版会社に拾われ甘いサラリーを吸いつつも「好きな仕事だけ」しかせず、その経験で培ったリソースを活用して40歳で「仕事を選ぶ広告制作会社」を起業し、仕事のかたわらで愛してやまなかったブルゴーニュワインを生業にすべく50歳を目前にしてワインバーを開業するという、思春期以降というもの、ここまで「好きが嵩じる」がままに新しい道を選択してきた半生であった…なんてことを年の瀬らしく振り返ってみたりするわけだ。

 

大晦日の昼からワインは、ジェラール・ラフェ(Gerard RAPHET) のモレ=サン=ドニ (Morey-st-Denis)  2009年。朝っぱらから除雪作業に勤しみ、シャワーで汗を流した後の自分へのご褒美である。

2009年(収穫年)は、ブルゴーニュ・ワインのアタリ年だ。2011年のワインバー開業時、蓄財を全放出して2009年のブルゴーニュワインを買い漁った。当時は未曾有の円高で、かつ新興国マネーによる需給バランスの崩壊前夜ということで、現在では信じられないほどの破格で仕入れることができたのはラッキーだった。

ラフェのモレ=サン=ドニ 2009は、というと、14年余りの熟成期間を経て元来の繊細さに磨きがかかり、複雑なうまみが醸成されていて、少量舌の上でころがしただけで、舌のツブツブひとつひとつに長い余韻が絡みつくようであった(これでもソムリエのコメントです)

 

さて。

きたる2024年の課題は、当施設をどうやってマネタイズしていくか、ということに尽きる。

そもそも好きが嵩じた結果なので、草刈りや間伐や除雪などの重労働はまったくつらく感じない。…とはいえ、食っていくためには生業として成立させなくてはならない。このあたりが、いまのところ実に悩ましいところで、毎夜、ふとんをかぶっては悶々としている次第だ。

 

もっとも、たいていはふとんをかぶった瞬間に寝落ちしてしまうので、なかなか妙案が浮かばないのが実態なのだが…。