そろそろ三ヶ月だが、マスクもいなくなり、やることなすこと全てうまく行かないトランプ政権は順調に崩壊のプロセスを辿っているようである。後はどうやって引きずり下ろすかだが、少なくともアメリカの法制度では大統領は弾劾以外に引き下ろす手段はない。が、4年もこの大統領に政権を担わせてもいられないことは見れば分かるだろう。

 私としては適度に裏切り者が出、八方塞がりの大統領が意気消沈し、一期目みたいにある程度まともな人間の言い分を聞くようになればと思う。それでも一期目の終わりは米国民に取っても「悪夢のトランプ政権」だったが、少なくとも国際秩序を破壊したり、国際法を無視したり、金融制度を崩壊させるような愚挙は許すべきではないだろう。

 何で私がこんなことを書くかというと、アメリカの話は日本では対岸の火事だが、これまで見てきたこととして、アメリカで行われたことは必ず日本では劣化コピーが現れ、ミニトランプがさらに悪いことをして経済を沈滞させるからである。

 DOGE団やマスクの行状を悪行という向きは少しばかり記憶を遡り、小渕・小泉政権時代の竹中平蔵の行状を見てみたらどうだろう。マスクたちと同じか、実害においてはそれを上回る実情があるはずだ。大蔵省が真っ二つにされたり、郵便局や日本道路公団がバラバラにされたのもこの頃だ。マスクとどこが違うのだろう?

 安倍政権については、書くのは止めておこう。言えることはこういった「改革」にはほとんどのケースでアメリカに先行するモデルがあり、日本のはそのタチの悪い模倣と言うことである。MAGA運動もトランプも実は対岸の火事ではない。参政党のようにヘリテイジ財団から密かに資金援助を得ていたグループもある。

 最近の模造品の群れを見てみよう、兵庫県知事の斉藤に石丸に参政党の某に、共通していることは倫理や常識を鼻で笑っていることであり、共感力に乏しいか軽蔑さえしていることであり、法を軽視しており、デマゴーグで既存の政党政治では吸収しきれない層を取り込んでいることである。高学歴だが卑俗で軽薄な彼らはMAGAのモルモットとしては実に都合が良い連中だ。その完成形であるJ・Dバンスを見るがいい、トランプ政治は日本でテストされていたのである。

 ここまで言うのは言いすぎかもしれない。が、一芸は万芸に通ず、ウクライナ問題を調べていると極右将軍ケロッグの補佐官が以前は対日ロビーで参政党を担当していて、ロビイストとして参政党の神谷をスティーブ・バノンらトランプ政権の要人に面会させていたという話がある。ケロッグが軍ではほとんど唯一のトランプの顧問で、最古参の支持者の一人であったことを見ると、日本政治に興味のない私も知らないわけにはいかないのである。

 一言で言えば、日本でネトウヨを流行らせた連中は今はウクライナ問題を担当している、そういうことだ。彼らの提案を見て、ゼレンスキーやウクライナ国民が怒るのも無理もないことである。石丸や斎藤をこういう交渉にブチ込んだら何が起こるか考えれば分かるだろう。

 私はネトウヨや参政党のような輩は平和ボケの国だからこそ成り立つと思っている。相手が適度に常識的で良識的であることが前提であり、ウクライナに関して言えば、ロシアの所業に呼応してロシア都市を無差別攻撃したり、ロシアの代理人としか思えないウィトコフやケロッグをワシントンの路上で爆殺したりはしないことが前提である。彼らにそれができることは、ロシアよりも優れたドローンを持ち、あの警戒厳重なモスクワの路上でロシア将軍が殺されることは日常茶飯事なのだから分かるだろう。今月も参謀次長に電子戦責任者に、後方だからといって安全とは限らない。

 様子を見れば、トランプたちのやっていることは確かに愚かだが、我が国までもが付和雷同してDOGE愚連隊の仲間になることはないように見える。ドル安はアメリカには不幸だが日本には別に不利でもない。目玉の飛び出るような高関税は掛け合っているのはアメリカと中国で、日本は掛けていないのだから、アメリカで売れなくなった品は安く買えばいい。兵器については、国防省がああいう様子なので次期戦闘機はEUと開発すればいい。算盤勘定をきちんと行い、うまく立ち回ってくれればそれで良いのである。

 ムダを省くために、官庁でも企業でも少なくないアメリカ留学組は、特にHBS(ハーバード・ビジネス・スクール)出身者は徐々に要職から遠ざけるべきだろう。途上国においてこの学閥ネットワークが侮れない影響力を持つことは良く知られていることだ。日本でも機密取り扱い資格や認定ロビイスト制度を検討すべき時期かもしれない。学閥の影響力を避けるには、これらが必要だ。

 アメリカにしか軸足のない自動車メーカー、ホンダやスバル、日産などは潰してしまっても良いだろう。税金を使ってまで助けるこたあない。この連中の経営判断の拙劣さを国が救済する理由はないはずだ。大昔に財政破綻して厚生年金に無理矢理捻じ込んだ公務員共済のようなものは悪い先例だ。採用計画というものは基本的な経営判断で、いくら国の機関とはいえ、失敗したら責任を取らせるのは当たり前のことだからだ。

 消費税については、今や国家歳入の半分以上である。この税金の問題点は逆進性もあるが、これだけ国家が依存していながら、担税者である国民に政治的意思を表明する機会がないことである。これといった方法を野党が考えてもくれないことから、食料品など一部については廃止または引き下げもやむを得ないと思う。これは政策の変更であって、退歩ではない。欠陥を治癒する方法があるのなら、引き下げなくても良いと思う。この税金は金持ちに有利な部分もあるが、公平でもあるからだ。

 とりとめもない話ばかりだが、これ以上長くなってもロクなことがないので、今回はここまでにしたい。


(補記)
 トランプ氏は日本の貿易黒字にご不満のようだが、中国と比べると我が国は市場が小さい上に参入障壁がそれなりにあるので、これは個人的なことだが、自分でうどんを打つ私は少し困ったことになっている。

 実は小麦粉というのは大部分がアメリカないしカナダ産で、10年ほど前までは日本向けは専用の小麦が生産されていた。それがコスパが悪いという理由で栽培されなくなり(リッツクラッカーが消えたのもこの頃だ)、エンドユーザーの私は仕上がりが違うので塩分や加水率を変更しなければいけなくなった。

 本当をいうと、どうもまた変えたみたいなのである。また微修正しなければならんなと個人的には思っているが、輸入元については変わっていないはずなので、おそらく二次ないし三次下請けに変更があったのだろうと考えている。加水率は現在は40%だが、今度は何%にしようか。10年前は38%だった。これは案外繊細で、数%の違いでも食感に誰でも分かるほどの違いを生む。あと、水温も影響がある。中国人が良くやっているように両手で麺帯をビヨヨーンと伸ばしてだと、水温は高めにしなければいけない。

※ 自動車部品にも同じことが言える。トランスミッションがアメリカ製でもネジや歯車までがアメリカ製とは限らない。

 80カ国と貿易交渉しなければいけないトランプ氏にこういったことに構う余裕はなさそうだし、実際無いと思うが、ラーメン屋にとっては重要な問題なのである。特に最近は自家製麺がブームだ。私はアマチュアでブームの前から自家製麺だが、それで製品の違いが直に分かることもある。

 米にしても、今の日本の品種は大半がコシヒカリとその亜種だが、アメリカ米のカルローズは中粒種でコシヒカリとは品種自体が異なる。栽培方法も陸稲で、水稲の日本米とは違う。近いのはむしろ台湾米などだ。トランプ氏にとっては問題ではないだろうが、寿司屋にとっては問題である。日本人にとってこれは(他に選択肢がないので)我慢して食べる米である。

 こういうことを交渉する貿易交渉なら私は歓迎である。アメリカは技術も高いし農地も広い、消費者ニーズにきちんと対応するなら米もクルマも売れるだろう。何でも良いというわけではない。資本主義というのは社会主義の計画経済ではない。商売の基本は尊重すべきだ。