と、プーチンさんは言っているが、二大国の指導者がどちらも都合の良い情報しか聞かされていないというのはまれな現象だろう。トランプはドッジ団のせいでCIA職員を全員解雇してしまったのが災いしている。


ウクライナ軍参謀本部公表の図(3/14)

 クルスクのウクライナ軍については、ウクライナ参謀本部が「包囲の事実はない」としており、国境からスジャ西半分までを管制下に置いているとしているが、交戦国の情報なので鵜呑みにするわけも行かず、あまり信用していないが、マクスターは遮断されていないISWが追加の報告を出したことで、「クルスク包囲説」はどうもトランプの捏造で、眉唾らしいことが分かる。


ISW公表の図(3/15)

 で、これらやその他の情報を元に当方が作図したものが以下だが、本当のことを言うと「良く分からない」というのが本当である。前線についてはISWは参謀本部の報告より国境よりに後退しているとしているが、いつものように当てずっぽうと思われる。



 「当てずっぽう」と言いうるのは、下は先の図に航空写真を重ねた図だが、見ても分からないかもしれないが、スジャからウクライナ国境に掛けて粘土のような平たい地形が広範に拡がっていることが分かることがある。



 実は粘土ではなく、これは塗りつぶした跡なのである。拡大するとこうだ。



 畑のように見えなくもないが、周囲の地形とのマッチングが不自然で、明らかに偽装である。衛星会社も商売なので、ウクライナやロシア政府の要望で要塞のある地形は隠すことがある。政府機関が金を払えば解除してもらえるかというと、たぶんしないんじゃないかと思われる。偽装をオプションにする意味がないからだ。

 ここから塗りつぶされた場所は要塞化されていることが強く推認でき、クルスクの戦いではコレネヴォ回廊で戦闘になることが多かったので、主戦場のゼレニ・シュラフのあたりなどは特に念入りに塗りつぶされていた。

 で、スジャから逃げ去ったウクライナ軍が逃れた場所はというと、これがほとんど塗りつぶされている。赤い領域は3月5日以降にDPRKが入り込んだ場所だが、この時にはたぶん、塹壕に兵は配されていなかった。彼らは一度引き返し、再編してマクノブカやクリロブカを攻撃したが、遠足の際に見つけたウクライナ軍の塹壕にはほとんど手を付けなかったと思われる。占拠したところで何もないからだ。



 考えてみれば掘る時間は山ほどあった。そもそもの作戦目的が誘引してロシア軍の圧力を軽減なので、自軍に数倍する大兵力の来襲は予期していたはずだし、後退しつつの戦闘も考慮していただろう。またウクライナ軍は国際的評判を気にしながら戦っている軍隊なので、市民を巻き込んでの市街戦は避ける方針だったように思われる。それにスジャの街はそんなに大きくない。

 こういった計画は、別に3月にロシア軍が来襲しなくても立てられたと思われる。ロシア軍としては、昔のアメリカ軍みたいに「これだけ落とせば人類はいなくなるだろう」的に絨毯爆撃するとか考えられるが、そういう爆撃機はロシアにもないし、いちいち滑空爆弾を落としていたら何発必要か知れない。

 マスクがCIA職員をドッジ団で抹殺していなければ、アナリストがすぐ報告を提出して、トランプはプーチンの虚言を否定してクルスク・カードを使い交渉を強いることができただろう。マリンカやアウディウカなんてもんじゃないウクライナの縦深要塞である。大きさも旅順要塞なんかの十倍も大きい。入り込んだ朝鮮人民軍はたぶん、要塞の全容を掴んではいない。

 これはたぶん、ウクライナの他の戦線にも影響を及ぼすものになると思われる。トランプは再度ゼレンスキーを脅しに行くと思うが、あちらも考えたもので、すでに欧州で(ウクライナに有利な)停戦前提の話し合いを進めている。鉱産取引もあるが、ヘボビジネスマンの五千億ドル借財とか、みかじめ料50%基金といった提案は悪い冗談として、立場が弱いはずのウクライナは完全に反故にするつもりのようだ。クルスクの戦闘は今後もまだまだ注視する必要のあるものになりそうだ。


(今回の謝罪ビデオ)

 


 一昨年に訓練中に事故死したウクライナ空軍のパイロット「ジュース」こと、ビリシュチコフ大尉(死後少佐)の母親によるビデオ、少佐はウクライナでもトップクラスのパイロットでF-16転換訓練候補パイロットの一人だったが、渡米前に事故死した。ビデオではラムシュタイン基地で訓練を受ける様子や、到着したF-16に母親が搭乗する場面などがある。

 


 ついにウクライナ陸軍登場、ハリコフの第40砲兵旅団だが、冒頭はアメリカ製マックスプロ装甲自動車に乗り込む中年兵士から始まり、これまでの謝罪ビデオより凝った作りになっている、砲兵部隊の様々なアメリカ製兵器が映され、兵士たちが英語で感謝を表明している。