トランプ政権については、私は一ヶ月目は混乱、三ヶ月目は造反、半年後に瓦解と書いたが、今まで見る様子だと順調にコースを辿っているように見える。

 どんなものでもそうなのだが、奇手とか奇策とかは最初は驚くがそのうち慣れるものである。25%の関税を提示して、翌日には撤回して、翌々日には木材に250%の関税を掛ける。言われた方は大変だが、そうやって譲歩を引き出すのが彼の手なら、鈍感を装えば良いことがある。

 25%の関税? 結構じゃないですか、報復としてこちらも25%掛けますよ。翌日になって「はいやめた」、じゃあこちらも「やめます」ではなく。

 対抗して25%の関税をセッティングしたら、そのまま続ければ良いのである。もちろん時限立法で、半年とか一年とか期限を切った方が良いと思うが。トランプがやめようが撤回しようが関係ない、「原因はあんたでしょ」、後にも先にもトランプの放言以外、必要性も理由もないことは明らかなのだから、これは彼がどんなに言を左右にしようと、全て彼の責任にできるのである。

 もちろん国民を説得する必要がある。補償もたぶん要るだろう。こういったものが食卓に影響を及ぼすには概ね3ヶ月から半年の時間差がある。アメリカ国民にデメリットを実体験してもらい、それで誰が悪いのか良く理解してもらえば良いのである。それで潰れるような産業なら、そもそも最初からその国には要らないものだったのである。ロシアを見ろ。

 もう一つ、彼の言辞の特徴として「約束を守らない」がある。ウクライナに対する彼の言い分はひどいものであった。前任者のバイデン政権もEUもロシアに侵略されたウクライナに借金してまで戦争させていたわけではなかったし、ウクライナにもその意識はなかった。それを一方的に借財としているのはトランプである。たぶんこの人物には「契約」という概念自体がないのだろう。

 そういうことで借財を背負わせることができるのなら、日本にしろドイツにしろ駐留米軍にはいろいろな経費を支出し、法制上の利便も図っている。日本の場合は毎年二千億円ほどだ。サンフランシスコ平和条約からは今年で満65年になる。トランプ式だと9千億ドルほどで、それを請求すれば良いのである

 新しく作ることもできる。EUはこれから国防費を増額しなくてはいけないので、観光にやってくる呑気なアメリカ人たちに対しては300%ほどの「ヨーロッパ防衛税」を課すこともできる。関博のラーメンなら一杯八千円だ。奇手奇策は見飽きたので、これからはイニシアティブを取り、状況を支配しなければならない。彼にできることは我々にもできる。ノーベル平和賞は被審査権剥奪、マスクは国際犯罪者で指名手配だ。政治はやろうと思えば何でもできる。

 彼の言い分だと「孤立主義で生きていく」なので、それなら別に構わないが、それならウクライナやロシアの資源を渡してやる義理もない。しまいには核兵器を振り回す以外、どうしようもなくなるのではないか。

 三ヶ月目は「造反」なので、アメリカはルビオ国務長官がリヤドを訪問するそうである。聞けばルビオは両親がキューバ移民なので、トランプらから両親の市民権剥奪の脅しを受けていると聞く、トランプは交渉失敗の責任は彼にあることを明言しているので、造反第一号はどうもこの人物になりそうである。

 リヤドでの交渉の事情を見ると、トランプは鉱産取引のほかゼレンスキーの辞任や領土割譲も要求しており、鉱産取引のみでは防衛支援の再開はしないと発言している。ルビオにとっては極めて困難な交渉であり、おそらくトランプの憎悪の視線は現在はゼレンスキーよりオーバルオフィスで一騒動起こした国務長官に向けられているようである。マスクはスターリンク切断を示唆したが、契約しているポーランドの外相は「別のプロバイダを探す」であり、これはすでに探しているものと思われる。すでに交渉というより機嫌を損ねた国務長官の処刑ショーになりかかっている。

 なお、交渉の場がサウジである理由は、ウクライナでは国防大臣のウメロフにコネがあるからだが、より大きなコネはトランプが持っており、そちらの方が理由であると言われている。サウジの皇太子ムハンマドは不興を買った記者カショギを殺害し、遺体を解体してビデオ撮影した残忍な人物である。というわけでウクライナ交渉団も身の安全は保証されないものになっている。

 一ヶ月でももううんざりだが、アメリカでは口を閉ざしている元大統領たちに不満の声が向けられている。ロシアの爆撃が続いていることに対するトランプの言葉は格別に冷酷なものであった。元大統領たちが口をつぐんでいることについては、民主党内からも不満の声がある。

“If I were them, I would get behind someone right now and say this is the guy or girl that I believe in. Stop playing the: ‘I don’t want to step on anyone’s toes or prematurely step out of line.’ We don’t have time for that crap. Get in the game or don’t ever talk again. If you don’t have anything to say now, while this is going before our very eyes, I don’t want to hear from you ever again.”
( Kurt Bardella, Democratic strategist )

「もし私が彼らだったら、今すぐに誰かを応援して、この人こそ私が信頼していると言うだろう。『誰かの足を引っ張ったり、早まって規則を破ったりしたくない』などと言うのはやめよう。そんなくだらないことをしている暇はない。ゲームに参加するか、二度と話さないかだ。今、これが私たちの目の前で起こっているのに何も言うことがないのなら、二度とあなたの話を聞きたくない。」
(カート・バーデラ、民主党戦略家)