"I can’t recall a single war where there was enough of everything. I hope our enemies are even more short on resources than we are. So we fight with what we have. And we just have to make rational use of what we do have."
(Oleksandr Syrskyi, Commander-in-Chief of the Armed Forces of Ukraine)
怒可以復喜、慍可以復悦、亡國不可以復存、死者不可以復生、故明君愼之、良將警之
(孫子・火攻篇四)
下手な訳はあえて付けないが、そもそも私はこの程度のものを読めない人間(三日坊主某のような)を読者として想定してない。それにこれは「覚え書き」である。
約束した24時間以内ではなかったが、トランプがプーチンに交渉を促し、プーチンも応ずる意思はありそうだが、反面ロシア国内では和平交渉はしないとも言っており、この「ディール」が首尾よく行くかどうかは、たぶん行かないが、注視すべきものとなっている。
同時にトランプはかつてのダチ、金正恩とカショギ記者バラバラ殺人のムハンマド(サウジ皇太子)にも声を掛けており、数少ないプーチンの仲間を利得で抱き込もうという様子である。戦争では砲弾や兵隊を供給しているのが北朝鮮で、原油密輸の裏ルートを仕切っているのがサウジであることから、あと中国とインドがいるが、独裁者仲間の間でもプーチンは孤立を深めている。
トランプ氏については、私は移民政策など彼の政治が滅茶苦茶だろうが、司教に文句を垂れる涜神の徒だろうが、釈放された1,600人の中にはストームZも顔負けの悪人が紛れ込んでいようが、閣僚に登用した人物がおしなべて三流で副大統領のバンスに至っては本人よりも奥さんを登用した方が百倍マシであろうが、この政権はウクライナ戦争だけ終わらせてくれれば、後はどうなっても良いと考えている。
おそらく独特の本能から、トランプ氏はこの戦争の終結が自身のキャリアに最大の利得をもたらすもの、歴史に名を残すものであることを敏感に感じ取っていると思われる。ウクライナ問題は立ち入ればそう簡単に解決するような平易な問題では実はないが、非常の時には非常の人間が必要であり、単純さが物事を決することもある。
国境線を現在のロシア占領地域で区切ることは領土不拡大の原則を謳った戦後の国際秩序からは許しがたい暴挙である。中国における台湾、38度線を挟んだ北朝鮮と韓国など領土拡大を狙う他の独裁者に口実を与える悪影響も否定できない。原則としては否定すべきだろう。
が、ユーロマイダンに引き続くドンバス紛争がロシア人を手引きしたウクライナのロシア系住民によって引き起こされたことはある。ウクライナ人の中にも親ロシアの勢力があり、ゼレンスキー以前は政権自体もそうであった。ここでは「折り合いを付ける」ことが大事であり、格好などにこだわっていてはいられない。
現時点ではウクライナもロシアも消耗し、欧州ではなし崩し的に講和の機運が高まりつつある。が、バルト三国を狙い、ウクライナ全面降伏を声高に主張するロシアにあっては、再侵略の阻止が喫緊の課題であり、平和維持軍への参加にアメリカが乗り気でないことから、平和の担保をいかに積むかが課題として残っている。
今のロシアの世論では、現在ウクライナ軍としてロシア軍と戦っている部隊は大半が西側諸国の傭兵であり、クルスクに侵攻した部隊も主力はアメリカ傭兵部隊ということになっている。戦争がウクライナのような小国ではなく、NATO軍全軍を相手にした欧州大戦なのだという国内向けプロパガンダだが、事実とはだいぶ異なるために、プーチンも内と外の使い分けに苦労しているものである。が、見るところ、ロシア国民はそれほど戦争に乗り気でなく、真相についても気づいているように見える。
それでも戦争を継続できるのは冷戦崩壊後のロシアの歪み、資源輸出に偏った経済とそれによって生じた許容しがたいほどの国内格差、ロシア兵の多くは義憤ではなくモスクワとは60倍の格差のある家計のために最貧地域から前線に志願しているのである。これはバブル崩壊後の我が国と同じ、失政による弊である。
トランプの豪腕で和平の格好を付けることはできるのではないかと思われる。それを生かせるかどうかは当事国の指導者の手腕次第だが、現実というものは、得てして決まり通り、きれいには行かないものである。ウクライナの住民もロシアのそれも、「韓流ドラマを見たい」と看守にせがんでいる捕虜のいる北朝鮮の人々でさえも、今の人々は1945年のような単純な人々ではない。指導者よりも各々の国民の方が内面においてはより複雑である。