一昨日にマフホブカで北朝鮮軍が敗戦し、コレネヴォ回廊での防戦は続いているが、スジャのウクライナ・クルスク派遣軍が5日に北進を開始したという報道があり、構成から見てこれは3日にDPRKを殲滅した部隊で、そのままプレホボまで攻め込まずに北進したが、これまでの報道ではスジャのクルスク派遣軍は四方からロシア軍に包囲され、防戦一方のはずであった。
これが攻勢に出た理由としては大統領選など情勢の変化もあるが、三月の戦闘でクルスク派遣のロシア軍については規模・実力とも報道されているほどではないこと。プレホボ村のDPRK師団が包囲殲滅を受け、ほぼ壊滅したことがあるように思う。
※ 戦闘というものは非情なもので、陸戦でも海戦でも、いちばん弱い部隊から壊滅し、いちばん弱い船から先に沈んでいく。この戦場でのDPRKは数も装備もロシア・北朝鮮連合軍中最弱であった。なので、配備された途端に撃滅されたことは驚くに値しない。これは古今東西変わりのない戦闘の鉄則で、クルスク派遣の北朝鮮第一次派遣軍(1.1万人)については、ここで壊滅したものと見て間違いないと思う。
北進部隊はクルスク担当のウクライナ軍の半数から3分の1ほど(2~3個旅団相当)で、大きい兵力ではないが、回廊の防戦部隊は以前より小さい規模で二倍以上の規模のロシア軍を支えることになる。DPRKに至っては手当さえないといった感じであり、手薄な方面への北進はロシア軍を驚愕させていると思われる。時間差から見て、これはスジャで戦略予備として用意されていた部隊であり、マフホフカで人民軍を殲滅した部隊である。戦車や装甲車で構成され、これまでも、ここぞという時に投入されてきたウクライナ軍の切り札である。
ウクライナ軍が補給を受け北進し、装甲車を中心に北のボリショエ・ソルダツコエに迫る様子は、DPRKの殲滅が一連の計画のうちにあり、人民軍が誘い出されたことを示唆している。進撃した距離はスジャからクルスクまでの旅程の三分の一であり、クルチャトフ原発はもっと近い所にある。原発は前回は見逃されたが、今回はどうか。
この兵力でクルスクに迫ることはおそらくできないが、タイムリミットは今月の20日にある。新大統領が就任し、対ウクライナ政策が大きく転換され、その時点で停戦する可能性があることを見れば、ここでロシア領土を切り取ることには政略上の意味がある。
クルスク・ソルダツコエ間の防備がどの程度かは不明だが、これまでの様子では以外と手薄なことがあり、これはコレネヴォ回廊の戦闘にも影響を及ぼすかもしれないし、すでに及ぼしているかもしれない。ロシア軍がコレネヴォかソルダツコエかの二択を迫られるようなことがあれば、やっぱりロシア兵力はさほどの規模ではないのである。どちらも守りたければ、これは南から兵力を引き抜く(ロシアでは政治案件でもある)以外にない。
(補記)
クルスクではすでに過去の軍隊になってしまった朝鮮人民軍だが、実を言うと軍歌には音楽性の高い曲が多い。ロシアも同様であり、ここではプーチン戦争に参戦している当事国の軍歌を紹介しておく。
1.当事国軍歌
<朝鮮民主主義人民共和国(DPRK)>
朝鮮人民軍軍歌
パレードなどで流される代表的な曲、威勢の良さは諸国軍歌中随一。
「我々はあなたしか知らない」
全編金正恩賛歌・キャラソンとされている曲。曲調に70年代シティポップの影響を指摘する者もいる。アメリカで演奏されたこともある。
そのアメリカでの演奏、演奏はウレク交響楽団
<ロシア連邦(RUS)>
「ロシアへの奉仕」
ソ連時代から音楽性の高い曲が多いが、その集大成。ロシア軍に入りたくなってしまう。
「ソヴィエト・マーチ」
元はアメリカ製コンピュータゲーム「レッド・アラート3」のために作曲された曲だが、ロシアでアレンジされ、事実上ロシア軍御用達軍歌になっている。
ロシア連邦国歌
CISの時代のロシア共和国は別の歌を制定していたが、プーチンの時代に歌詞を一部変え、国歌として復活した旧ソビエト連邦の国歌。
<ウクライナ(UKR)>
「新軍の行進(我々は素晴らしい時代に生まれた)」
たぶんウクライナでいちばん有名な軍歌。2017年と案外新しく、新生ウクライナの精神を体現している。様々なヴァリエーションがある。
元曲(新軍の行進)をウクライナのロックバンドVVがアレンジ(我々は素晴らしい時代に生まれた)したもの、こちらの方がポピュラー。
マリウポリ攻防戦の最中でも
地下壕の中でも
カリンカ(ウクライナ)
ウクライナの歌手アイリーンによる。伝統的な愛国歌。
チェルノバイカ
ヘルソン州の小村チェルノバイカでロシア軍が惨敗したことを祝した歌
2.教養として
<大日本帝国(IJE)>
「露営の歌」
各地に派遣された日本軍兵士の愛称歌。「死んで帰れと励まされ」とは、当時日本は戦死すると恩給が遺族に支給されるからである。
「海行かば」
日本海軍の歌。だいたい日本軍は出征すると「水漬く屍」とか、まともな葬式もしてもらえない例が多い。
<アメリカ合衆国(USA)>
「ジョニーが家に帰ってくる」
歌詞は知らなくても誰もが一度は聞いたことのあるアメリカ軍を代表する軍歌。元は南北戦争時代の曲。
「ジョン・ブラウンの屍」
これも聞いたことがあるはずの曲。アメリカは軍歌大国である。
<連合王国(UK)>
ルール・ブリタニア
イギリス国歌よりも古いイギリスを代表する愛唱歌。集会やサッカーの試合などで歌われることが多い。