人間不信が良いことだとか、世間のインテリは全員ディープステートとかいった考えが正しいとは少しも思わないが、この記事の編者はまず著者(サム・ポトリッキオ)の雇用主の一人が「ロシア大統領府」であることは特記すべきだろう。別に隠すことではない。本人の紹介に堂々と書いてある。

 

 内容は具体性に乏しいどうということのないもので、例によってロシアに買収されたアメリカの知識人の典型的な言説といえる。他のコラムではブレマーとの対談で「世界最高の教授」などと書かれていたが、こんなのが世界最高ならAIキョージュにすぐにやられてしまうだろう。

 

 とはいうものの、今でも内外を問わず知識人がロシアや共産主義にかぶれやすいことも本当である。例えば日本共産党はソビエトの建国にも参画した(インターナショナル)コミンテルン日本支部だが、面と向かって言う知識人はまずいない。が、経緯からソビエトの後継国であるロシアの影響がないとは考えにくい。

 

 これは別に共産主義が悪いとか、今の共産党の面子が悪人だとか反逆分子だということではない。日本共産党はソ連との関わりをとうの昔に否定しているし、中国共産党もそうである。が、公式には否定しても人脈とかコースとか個々の要素は残る。共産主義がとっくに形骸化していても、同じコースで留学したならば影響を全く受けないとはいえない。

 だからこの戦争の観察には人一倍の注意が必要なのである。ソビエト時代からのロシアのお家芸、隠れプーチンが真意を隠して言論する姿勢は卑劣だが、今さら非難しても仕方がない。情勢を見定め、論説がどの立ち位置にあるかを検討して、裏切る可能性はないか、信用できるかできないかを決めるのである。