能登の地震は救出活動が続いているが、やはり崩落が原因で捗っていないようである。警視庁や各市町村、自衛隊の救助隊は到着しつつあるが、道路の破損が酷すぎるため、自動車や重機を置いて漁船やヘリで現場に向かった例もあり、身一つで到着した隊員は若干の救出や遺体捜索には成功したものの、本来ああるはずの機材が使えないことから作業能率は大きく低下しているという。

※ 地政学的な常識が少しでもあるなら、災害発生で能登半島の地図を一瞥するだけで輸送上の困難が生じるだろうことは容易に分かることである。

 報道では、のと里山海道を通じ輪島市、珠洲市への大型車の通行は可能になったとしているが、相当に疑わしいものがあり、マップでも多くの箇所が通行止めのままである。通行は可能であっても、かなりの時間を要するものと思われる。地図を見ればこういったことは十分予想できるものだが、奥能登を除けば、石川県の道路環境は金沢と加賀は近隣諸県よりも良質なものである。我々が報道を見るにしても、七尾以南の比較的容易に到達できる地域とそれ以外の地域の仕分けが必要だろう。

 到達困難な地域については現時点ではヘリコプターが最も確実な輸送手段だが、能登半島周辺で活動中の船舶を見ると、若干の海上保安庁の巡視船のほかは輸送艦「おおすみ」と護衛艦が3隻(ありあけ、すずなみ、せとじり)、あとはケーブル敷設船の「きずな」があるだけである。空母「ロナルド・レーガン」は出港したようだが、海上自衛隊の4隻のヘリ母艦は全て在泊中で、本来なら全艦出動して洋上基地として機能させるべきだ。

能登半島沖に展開している護衛艦

 航空機も羽田で事故を起こした海保機のような政府専用機も救援物資を積んで次々と金沢空港に来援のようにも見えない。ほとんどは通常任務のように見えるのだが、これはどういうことだろうか?

 テレビで様子を見ていると、どうも岸田首相と石川県知事は指示すれば後は部下がやってくれ、指示したことで自分の責任は果たしたと思っている節がある。が、部下の裁量を超えた省庁間レベルの調整は内閣が動かなければどうにもならない。しかも、その内閣の事態に対する想像力が恐ろしいほどに乏しい。少なくとも大型艦艇を救援に参加させるには総理の判断が不可欠である。

※ 政府は二次避難所としてホテルや旅館を提供するというありがたいお話だが、地震でヒビ割れたり、水道や電気が途絶した施設にまともな接客機能があると思っているのだろうか? そうでない施設は元々あまり問題なく、救援の必要も乏しい場所ではないか?

 北國新聞社の記事によると、現時点で孤立集落は21箇所、要支援集落は29箇所ある。母艦なしでもヘリが間に合っているならそれでも良いが、日本海にプカプカ浮かんでいる自衛艦のヘリコプターは多くても4機で、それは陸自の機体もあるし、のと里山空港に燃料があれば前線基地としても使えるが、少なくとも舞鶴に停泊しているヘリ母艦「ひゅうが」1隻でも10機以上の機体を運用できる。集中治療室を備えた病院船としての機能もある。どうして使わないのか、私には理解できない。

 

※ ニュースで見たところ、現在ののと里山空港はがらんどうであり、被災地のほぼ中央に位置するこの空港の活用は誰も考えていないようである。滑走路はダメでもヘリコプターは降りることができ、重機は穴水あたりをせっせと掘っている様子を見ると、邪推ながらこれを拠点に使えばとは思う。