第二回会見を巡る状況
ジャニーズ事件は2日に再度の会見が行われたが、ありていに眺めると内容は前回よりも後退し、保身と責任逃れが目立つ内容となっている。以前にも危惧した通り、通り一遍の組織改革で被害者を置き去りにし、事案の解明は不十分なまま、事件を幕引きにしたいという会社とステイクホルダーの意図が強く出たものになっている。
図は以前用いたものだが、以前の状況さえギャップのあった加害行為と補償のアンバランスがさらに拡大しており、それを埋める方策は提示されていない。補償に用いる財産の総額や一人あたりの具体的な補償額、ジャニー喜多川の犯罪には副社長や故・メリー喜多川やジュリー藤島、ヒガシ、前社長タッキーなど会社上層部の加功が指摘されているが、刑事事件としての立件が可能かどうかなど。
タレントを失ったスマイルアップ(旧ジャニーズ)にめぼしい財産も補償能力も稼ぐ力もないことは明白である。言葉はどうであれ、救済に具体性がなければ「切り捨て」批判はまさに正当であるし、刑事事件が問題化すればそれが架橋して(法律上は別人格の)新会社に責任が及ぶことも十分有り得る。今のところ、新会社はジャニーのような異常人格は二度と現れないだろうという希望的観測の上に立っているが、これは砂上の楼閣であろう。
※ 経営陣に旧悪に手を染めた者が一人でもいれば会社はたちまち沈没船であるし、セクハラ問題のある会社は別に珍しいものでもない。
新会社の経営体制については第三者からの資本を入れることを前提に通常の株式会社とするようだが、主な株主や役員人事については会見からは明らかでない。分離されたスマイルアップはジュリー藤島の差配で補償終了と同時に解散することにしたとあるが、これらにつき、BBCが続報でどう書くか楽しみである。
私としては前回の方がまだマシだったと感じている。
※ 被害者救済よりも事業存続に重点を置いた会見になったことは、タレントが人気商売でジャニーズ離れが社会現象となっている業界の特殊性がある。どんな人気者でもファンの支持を失えばタダの人であり、その恐怖心が社会正義の実現など問題の抜本的対策から目を背けさせ、経営陣を圧倒している現状がある。
(補記)
続報で新会社の態様がジャニーズを退所したタレントが個々に設立する合同会社と新会社が契約するエージェント方式と報じられたが、リスク管理という観点からは模範解答であるように思う。ただ、タレント養成や新会社が代理権を独占的に行使しうるかについては問題がないわけではなく、また、会社を設立できるのはある程度名の通った有力タレントに限られることから、これは対策というよりもジャニーズが以前から抱えていた問題に対する処方箋で、現在の流れを見てこの際採用されたもののように見える。イメージとしては日本相撲協会が掌理する大相撲の親方部屋が近いように見えるが、日本相撲協会は株式会社ではなく財団法人であり、その地位も歴史的経緯の絡んだ多分に特殊なものである。
※ ジャニーズの資産(施設や著作権)を承継するとなると、これは現物出資で株式が割り振られることになり、間接的にジュリー藤島が経営に影響を与えることから、これらの資産については現時点ではスマイルアップに残るものとされる。後日何らかの方法で売却することになると思うが、ほとぼりの冷めた頃に議決権のない優先株として新会社に資本参加(吸収分割)することは考えられる。
※ スマイルアップに残ることとされたジャニーズの著作料収入はJASRACの統計を見ると年間20億円くらいと思われる。