ネットの記事で「汚職大国」ウクライナへの支援を問題視しているものがあったが、記事は以前からあった内容のモザイクで「何を今さら」と言いたくなる。こういう記事を書く売文屋はいきなりロシアに侵攻され、迎え撃ったウクライナは何を相手に撃っていたと思っているのだろうか。
こういう図も見ていてウンザリするものがある。昨年のハルキウでの反撃以降、リマンとヘルソンを取り返した後の戦線は動いていないが、別に地面に線が引いてあり、線を超えたらズビビとやられてしまうものでもない。通例、境界線は稜線や河川の中央など動かず変化もしないものの上に引かれるが、今戦場になっているステップ地帯はだだっ広い平野で、勢力圏は常に動いている。
支配地域を問題にしたければ、各々の軍の直近の拠点や物資の集積量、兵団や拠点間の移動の平易さなどを問題にすべきであり、色分け地図は誤解を生む。
※ おそらく20万、多くても40万人ほどしかいないロシア部隊が長大な戦線や広大な占領地を維持できるはずもないことも見れば分かることである。
昨年と異なり、大きく改善されたものにはウクライナ軍への兵器の供与がある。先にも述べた通り、昨年までのウクライナは兵器や糧秣の入手に少々いかがわしい手段を使わざるを得なかった。ダボス会議に集う西側財界人は空虚で時代錯誤な会議同様、有事ではおしなべて無能であり、侵略に対する反応も鈍かった。
その間にロシアミサイルはイバノフランコフスクのウクライナ軍の兵器貯蔵庫を破壊し、リヴィヴのミグ29修理工場を粉砕した。ウクライナ軍はうまく防戦したとはいえ、それなりの被害は受けていたのであり、闇市場で入手した中古ミグや北朝鮮製の砲弾がなければロシア軍は今頃ポーランドに侵攻していただろう。
もちろんいかがわしさはゼレンスキーらウクライナ指導部も承知のことだった。西側の支援体制がようやく整った時点で汚れた関係を清算することは、彼らにはおそらく当然のものとしてあった。オリガルヒと汚職を放置してはウクライナは戦争に勝てないし、さりとて、彼らの助けがなければ戦争を戦うことさえできなかった。
が、それも過去のことである。私は今年に入ってから支援国の指導者が兵器供与を約束してから、それが到着ないし投入されるまでの時間を測っているが、こと最近はほとんど同時に投入されるようになっている。クラスター爆弾などは数日で投入され、エイブラムス戦車はより短い時間でキーウに到着した。兵器の調達をオリガルヒに頼る必要はもはやなくなったといえる。件の記事が問題にしているのは、そういった一連の動きの一断面にすぎない。
ストームシャドーミサイルがセバストポリのロシア艦隊司令部を直撃し、司令官のソコロフ提督が生死不明となっているが、これについては原因はたぶんにロシア側にある。軍艦は高価な兵器で、ロシア海軍はウクライナ海軍がほとんど存在しないにも関わらず、効果的な戦術で運用されていないようだ。ウクライナの海上ドローンは遊撃的な兵器で、それ自体で制海権を獲得できるものではない。
※ むしろドローンが哨戒艦を攻撃したり、ケルチ大橋を破壊できるのはロシア海軍が積極的な掃海活動に出ていないからだという見方もできる。
優勢にあるにも関わらずロシア海軍が積極的な海上攻撃を掛けないことについては、第一にまず予算不足、次いで最高司令部の戦略と指示の誤り、艦隊士官の戦術ドクトリンの消極性が挙げられる。今のロシアはこうした海上兵器よりも日々ダース単位で破壊されている陸戦砲や統計上はほとんどなくなったはずの戦車の方をより必要としている。
色分け地図上では僅かな変化でしかない、しかも間違っていることも少なくない戦場でも、ウクライナ部隊はロボティネを抜け、ゾロタ・バルカの第二防衛線の突破に取り組んでいる。一度突破したものの繰り返しなのであるから、おそらく成功するだろうし、より重要なこととしてはこの位置からはトクマク市が長距離砲の射程に入ることがある。ここ数日のロシアは航空機を繰り出してオリヒウなど後方を攻撃しているが見たところ積極性に欠け、効果のほどは少々疑わしい。