経営再建大手のデロイトトーマツがビッグモーターの再建をアドバイスという報道があったが、こんな会社、名前だけですぐに消えるのではないか。世界的コンサルが名乗りを挙げたことで営業譲渡など、以前に提示した2案に近い内容も取り沙汰されているが、新設合併を本気で行う気があったのなら、銀行団は手を引かないと思う。
同社には300億の預貯金があったとされるが、先に90億を返済したこともあり、すぐに資金繰りに行き詰まることは明らかだ。店舗は開店休業状態であることから、経営権の放棄に応じない兼重にデロイトは人員整理や店舗の売却など勧めているようだ。が、実は同社には言うほどの資産はない。
中古車の在庫は3万台ほどで、買取り販売が機能していない現在では全部売っても大した金額にはならない。土地はほとんどが定期借地権で残り10~20年くらいの価値しかない。店舗には収去義務があり、これは不動産評価をさらに押し下げる。加えて人件費は平均500万でも年間で300億掛かる。税金や水道光熱費など他の費用もあり、災厄が従業員に降り掛かるのは時間の問題だ。
直近まで実は黒字だったとか、平均給与が1,100万円だったとか、売り上げが5,600億あるとか悠長なことを言っていられる事情ではないと思うが。
会社自体のポテンシャルも低い。ハイブリッドやEV、外国車を扱える従業員はおらず、その設備もないようだ。販売の主力は高年式で右から左に回せば売れる軽自動車で特別なノウハウもない。ブランドはないに等しく、社内風土は険悪で、こんな会社の社屋と従業員を引き継ぐような物好きがいるとも思えない。改革には投資が必要で、タダでももらいたくないというのがデロイトに打診された他の自動車販売業の本音だろう。
※ 高年式と低年式・・・クルマ業界では製造後0~5年の新しい車を高年式、7年以上の古い車を低年式と呼ぶ。私もよく間違える。
※ 新古車・・・製造方式がJITでない軽自動車に良く見られる販売方法。製造後0~3年の新しいクルマで登録のみし、前ユーザーの履歴のないもの。製造工場のストックヤードに野ざらしになっているクルマを年末に業者が買い叩いて商品化する。販売ノルマで見かけ上の販売台数を増やすためディーラーから横流しされる例もある。廉価であることが前提で、高価格化し普通乗用車化が進んだ昨今の軽自動車市場ではやがて消えていく販売方法と思われる。ビッグモーターでは扱っていない。
※ 整備記録簿・・・法令ではクルマに備え付けが義務付けられている整備履歴を記載した書類。概して低年式車ほど枚数が多く、きちんと記録簿の取られたクルマは良質車として評価される。車検における提出書類の一つだが書式は厳格でなく、整備士資格のない一般ユーザーが記載しても受理される。提出しない場合は後整備として検査後に備置が求められるが車検は通すことができ、備置しなくても罰則はない。ビッグモーターでは全展示車から撤去され、顧客は販売されている車の整備歴を知ることができないものになっているが、これは中古車販売店では普通のことである。が、全ての販売店がそのような扱いをしているわけではない。
※ 再建しないなら一刻も早く倒産手続に移行すべきである。刑事にしろ民事にしろ処分が遅れればオーナー親子が財産隠しに走ることは火を見るより明らかだからだ。迅速な否認権の行使と破産財団の確立が望まれる。
デロイトには顧客を告発するようなカードは切れない。会社はすでに沈没船で、従業員は腹を括った方が良いと思うが、無能なリーダーというのは得てして状況判断も見切りも悪いものである。