当然といえば当然、案の定メインバンクに融資継続を拒絶されたビッグモーターだが、ついでに破産申立もしてもらい、さっさと整理するのが世のため人のためのように思える。
STV(北海道のテレビ局)では、ハズレ車を掴まされたユーザーの怒りのコメントが報道されていたが、こういった件はむしろ平易といえ、納品書もあるのだから、債務不履行で修繕なり代金減額などの交渉をすればどうにかなるだろう。
買い取りについては、民商法というのは「悪い売主」を成敗することには熱心で、この分野は判例も学説もそれなりの蓄積があるが、ビッグモーターみたいな「悪い買主」は想定しておらず、学者さんもそろそろいつまでも泣き寝入り被害者の「かよわい買主」スキームから離れた方が良いように思える。
というより、いろいろ書いてある民法なる法律が、多種多様で権利義務も各々異なる諸々の現実事象にコロラリーとして適用できるという考え自体が妄想で、法学部で勉強すると案外成り立ってしまうということが、永い時間を掛けて洗脳された実体のない思い込みであることに、そろそろ気づくべきである。
この件で問題なのは、法の条規が抜け穴だらけであることを良いことに、国家社会や保険制度、取引業者やユーザーに不利益を転嫁することに悪意のある事業者については、時間稼ぎで他の誰かの責任を問うことなく、もっともらしい抗弁など認めず、相応の責任を取らせるべきということである。
※ いわゆる「サヨク」の議論の弱いところがこれである。
早ければ早いほどよい。そのために我々は国会議員を選んでいるのだし、それがかの会社に対して特に不利な法を制定して施行したとしても、それが大したこととは思えないことがある。
※ 中古車売買に問題が多いことはずいぶん前から議論されてきたのだから、宅建業法と同じく自動車取引法といった法律を作れということは言える。
と、このように書いたのは、自動車売買の場合、頼りになるのが民法と標準約款しかなく、いわゆる識者が字目の細目に拘泥して、やれ刑事責任を問えるの問えないのと、時間ばかり浪費して問題を有耶無耶にする我が国の悪癖がこの件でも頭をもたげてきていることがある。
ひどいのになると、「会社の名前を変えて半年もすれば忘れる」とか、「銀行はその方向に誘導すべき」といった訳知り顔の評者までいる。倒産法の第一義は経営者ではなく従業員の雇用の救済だが、自ら不正に手を染めた従業員にこの特権は認められない。これは会社再編や倒産法の問題ではない。
※ いちばん懸念されるのが救済措置を取ることでビッグモーター的な手法が業界全体に拡散し、業界がますます悪化することである。
この事件は実を言うと被害者らしい被害者はいない。ビッグモーターの経営は悪辣だが、水俣病のような公害を引き起こしたわけでもない。中古の自動車売買にはずいぶん前から問題が指摘されていた。自動車自体の性能向上もあり、また、長くても10年ほどで買い替えるという売買の性質から、割に合わないものとして紛争解決が放棄されてきた分野でもある。
それゆえ、他の問題より全体の問題点が俯瞰した形で見えることがある。民法や刑法の議論をそのまま当て嵌めることは適当でない。これらはいったん捨象して、自動車産業の現況や社会科学の分野など踏まえながら、非典型の問題として捉えるよう心がけることを勧めたい。
(追記)
いちばん上に書いてある通り、このブログは「覚え書き」で、書いた本人も責任を持つつもりはないし、後で見れば行き過ぎ、間違いは当然あるものと思っている。なので「書き捨て」、思いつくまま手短に書くようにしている。そもそも見てもらうつもりならAmebaブログなど選ばない。書いているのは他人はどうでも良く、自分の考えをまとめるためである。