ビッグモーターの事件が連日報道されているので、「ビーッグ、ビッグ、ビッグ、ビッグモーター♪」とつい口に出てしまうが、あれはモーターではなくカメラだった。保険会社とグルになった三位一体の詐欺の手口は当然のことながら自動車保険に加入している多くのドライバーの怒りを呼び、保険については制度自体が公正に運用されているのかといった疑念さえ生じさせている。元々保険料率の算定は上乗せされる手数料に不透明な部分が多かった。
今後のビッグモーターについては、国交省や金融庁に免許剥奪されることから、修理も保険も行うことができないので販売店としての存続は難しく、以下のような将来が考えられる。
1.事業の売却
最もありそうな選択肢だが、足元を見られて買い叩かれるだろうし、買い手もあまりいるとは思えない。中国の会社か、以前に自動車事業に手を出そうとして収監されたホリエモンのような人物なら関心を持つかもしれない。
当座の運転資金を捻出するため店舗の一部を閉鎖することはありうる。この場合、不採算店は現下の状況では話にならず、比較的良好な成績の営業所から対象になるので、売却しても販売力は大きく低下し、買取価格も下がってジリ貧になることがある。また、経営体質が変わらなければ離職や有能な社員の確保も困難になる。
2.兼重親子が会社を現物出資して新会社
社会的信用を失っても店舗や雇用は存続している。固定資産税や水道光熱費の使用料に加え、従業員には給料を支払う必要があり、またこの状況で同社に運転資金を融通する銀行があるとも思えない。現在の兼重親子の支配権は100%だが、これでは官庁もどの金融機関も説得できないだろう。
そこで、かつての株主で不正に関与していた損保ジャパンほかが運転資金を捻出し、兼重は店舗と従業員を拠出して経営陣を社外取締役を含むものに刷新し、名前も変えて新会社としてスタートさせることがある。「ビッグモーター」だったのだから、次は「ウルトラモーター」だろうか。支配権については兼重がゴネなければ何とかなるだろう。
3.売却も新会社も困難な場合は倒産
報道しか見ていないが、ビッグモーターのビジネスは既存の自動車販売店の悪い部分と損保と組んだ詐欺ビジネスが結託した極めて特異で悪質なものに見える。事故車はビジネスの中核になっており、修理料金の水増しのほか、損保の紹介を含むあらゆる手段で集めた低品質車を板金工場を含む自社で再生して高い利ざやを付けて売るという方法は同社にオークションに依らない潤沢な在庫と高い利益率をもたらしたが、そのノウハウは特異で普遍性がなく、一部は犯罪で、これは経営者が変わっても同じ方法で経営できないことがある。倒産させるしかない。
だいたいこの3つが考えられるシナリオだが、おそらくは1又は3で、2はよほど有能な弁護士が付かなければ難しいと思われる。屁理屈でユーザーの請求を反故にする程度の腕前では話にならないが、あの兼重の面相を見るに、そんな弁護士しか雇えそうにないことがある。私だったら2を選ぶ。
私が金融庁の役人なら、まず兼重親子は保険詐欺や器物損壊罪ほかで収監し、その間に金融機関に話を通し、経営を刷新してリスタートさせることを考える。
不良在庫車の再生はビッグモーターはそれほど技術は高くなかったように見える。テレビで報道された再生車の修理レベルは見て分かるほどで、ニコイチ車のようなものを日常的に作っていたようにはとても見えない。おそらく軽微な損傷のクルマを全損扱いにして、軽修理して店頭に並べていたのだろう。在庫を見てもハイブリッドなど高度なクルマを扱える従業員はおらず、悪質といっても程度が低いことから、これを普通の販売店に戻すことは見た目ほど困難ではないかもしれない。ただ、給料は以前ほどは払えないだろうし、経営も厳しいものになるだろう。