帰宅
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対面を終え、
家への帰り道。
何も 変わらない太陽。
何も 変わらない景色。
何も 変わらない帰り道。
本当に 洋君は亡くなってしまったんだろうか?
さっき、対面してきたというのに
私は まだ信じられずに居ました。
---いや、信じたくなかったんです。
家へと車を走らせている
10分ほどの間
時々、パトカーが道に居て
”ああ、あれはウチの
事件であそこに居るんだろうな”
と、ぼんやり考えながら運転しました。
家に帰ると、
警察の被害者支援の方が
待っていてくれました。
その時、すでに駐車場に
何人かのマスコミの方が
いらっしゃったんですが
まだ、私の顔を知らないせいか
すんなり家に入れました。
玄関を開けたら
そこには 目を真っ赤にして
泣いている
我が子が、グローブをはめた状態で
二人とも立っていました。
”お母さん、お父さんが死んだって嘘やろ?”
と、いきなり聞かれました。
『 誰からきいたと? 』
と、問い返すと
『 大きいパパ(私の父)から・・・。』
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病院で
”子供達になんて説明しよう・・・”
と考えて、一瞬、
洋君に相談しよう!と
考えてしまいました。
何でも相談していたので
きっと、思考回路の癖なんでしょうね。
いや、そうだった、
洋君は、もういないんだった。
そう思い出して、
父に相談していました。
”ありのまま、話してあげんしゃい。。”
と こたえてくれたので
子供達が
受け止めきれない
年齢だとしても
内容だとしても
ありのままを話そうと決めていました。
後で知らされるより
その方がいいと考えたし
それに、報道でどうせ
知ってしまうことだから・・・。
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誰から聞いたと?と
私が聞いたことで、
望みが絶望になったのか
苦しげな顔で、長男が
”ゆうに、行くぞ!”と
外に出て行こうとしました。
私は、慌てて
『どこにいくと!』と
ひきとめると
ココにおってもどうにもならんけん
野球の練習をしにいく!と
言うではありませんか。
何をしていようでも無かったんでしょうね。。
二人を、ぎゅーっと抱き寄せると
いいけん、こっちにきんしゃい。
と、二階に連れて行き
私が知っている限りのことを
二人に説明しました。
お父さんは、もう亡くなってしまったこと。
拳銃で、撃たれたこと。
まだ犯人が捕まっていないこと。
人違いで殺されてしまったこと。
今は、警察の人が
犯人を捕まえるために
亡くなった原因を調べるため
病院で検査をしていること。
お父さんは、何も悪くないこと。。。
長男は、力無く、
何で怪我を治すために入院してるのに
殺されんばいかんやったと・・・。
と、小さく泣きました。
次男は、犯人を絶対許さん!
と、激しく怒り、大声で泣きました。
”これからは、残った家族
みんなで力を合わせて、
乗り越えていこうね。”
と 私が話すと 二人は静かに頷いて
おとなしく家の中で
洋君の帰りを待っていました。