アドラー心理学の共同体感覚と仮説実験授業
2024年9月21日 新潟県スクールカウンセラー 五十嵐淳至
スクールカウンセラーとして長岡市内の小中学校10校を周っています。不登校もいますが,別室や保健室登校の子どもたちも少なからずいて,時に関わります。
一般的に,「学級に何か問題があるわけでない場合には,今はエネルギーがなくなっていて,エネルギーが貯えられれば教室にも行けるでしょう。」という見解もあります。また,家庭でエネルギーを蓄えるから外で頑張れる,そんなふうに言われることもあります。もっともらしいです。
人によって理由は様々です。が,僕はアドラー心理学の共同体感覚が未熟なのが理由の場合もあるのではないかと思います。共同体感覚とは何でしょうか。
アドラー心理学はアドラー(1870年―1937年)が創始した心理学で欧米では個人心理学と呼ばれています。アドラー・フロイト・ユングが心理学の3大巨匠と言われています。アドラーは第1次世界大戦に軍医として従軍し,その際に共同体感覚という概念を深めました。また,アドラーは世界で初めて児童相談所を開設。当時の非行少年や親子をめぐる問題をも扱いました。教育に深く関わっています。
『マンガでやさしくわかるアドラー心理学』岩井俊憲著 p24の記載です。
アドラー心理学の重要な価値観として,「共同体感覚」を高めることを教育やカウンセリングの目標としています。この共同体感覚とは,家族・地域・職場など共同体の中での所属感・共感・信頼感・貢献感を総称したもので,精神的な健康のバロメーターでもあります。「共同体感覚」と言うとなじみにくいので,私は仲間との間の「つながりや絆の感覚」だと言っています。
共同体とは本来,家族や地域などの自然発生的な集まりを指します。職場や学校は機能体です。ですが,話を進めやすくするための,人の集まりを共同体と言っている場合が多いようです。
共同体感覚の共同体を“仲間” といいかえて, 仲間とのつながり感覚と言い換えてもいいと思います。
つながり感覚(所属感・共感・信頼感・貢献感)はまず,家庭で育まれます。そして地域・学校・学級・・・カウンセリングなど,いろいろな場でも育まれていきます。これが未熟だと,人への共感・信頼感や所属感などが低く,集まりに入るのが難しいかもしれません。学級に入るのが困難かもしれません。入ったとしても疎外感が生じるかも知れません。
僕はこのつながり感覚の育成の一つの大きな場として仮説実験授業の場があると思います。最近実施した,「親子孫で<たのしい仮説実験>講座」<磁石>の感想で,人との関わりについて多くの感想がありました。紹介します。
磁石2日目 2024年7月 三条
Mさん
子どもが自ら予想する姿が見られたり、面白い疑問を持っていて、こちらも「おー」と楽しく感心しました。
Sさん(小5)
初めて講座に参加しました。はじめは意見が言いづらかったけれど、まわりの人の意見を聞いて「うーん、私はこう思う!!」と言えるようになりました。まちがえた方が楽しい仮説実験授業は楽しかったです!!
Yさん
今回初めて参加しました。親子3人それぞれ楽しみました。また次も参加したいね、と話しています。
Aさん(ボランティア)
講座に参加することで、子供と一緒に学べてうれしいです。都合が合えばまたボランティアをさせてください。
磁石1日目 2024年7月 三条
Tさん(小6)
参加した人の予想全てが「確かに」となるようにちゃんと考えていてすごいと思いました。次は私も意見を出したいです。
磁石2日目 2024年1月 見附
Kさん
磁石、おもしろかったです!たくさん予想して、外れて、子供達とああでもない・こうでもないと話し、子供の方が当たっていた時の表情、最高です。(笑)
こうした人との関わりがつながり感覚(所属感・共感・信頼感・貢献感)を育成していくと思うのですがいかがでしょうか。また,楽知ん研究所の活動はファンを作って,ファンとのつながりを求めていくものです。楽知ん研究所の活動は実はアドラー心理学のいう共同体感覚を育んでいると僕は感じています。
あすなろ教育研究所
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